研究課題/領域番号 |
22K21299
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1002:人間情報学、応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 歩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (70854438)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | EEG / 持続的注意 / マイクロステート / 集中力 / ウェアラブルデバイス / 生体情報 / 脳活動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,情報学と認知神経科学に基づいて集中状態を可視化・定量化する技術を開発し,あらゆるヒトの生活の質を向上させることである。本提案では脳活動のみから定義した集中状態と自律神経系の活動の相互関係(生体システムネットワーク)を明らかにし,ウェアラブルデバイス等で計測した生体情報から集中状態を視覚化する基礎技術の開発を行う。本提案は,神経科学の最新知見と情報学のデータ駆動的手法等の最先端技術を融合させることで,神経科学に基づいた集中状態の視覚化・定量化という新たな破壊的イノベーションのシーズを創出するものである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,情報学と認知神経科学に基づいて集中状態を可視化・定量化する技術を開発し,あらゆるヒトの生活の質を向上させることである。この目的を達成するために,脳活動のみから定義した集中状態と自律神経系の活動の相互関係を明らかにし,ウェアラブルデバイスで計測した生体情報から集中状態を視覚化する基礎技術を開発する。 令和4年度は,核磁気共鳴機能画像法よりも簡便に脳活動を計測できるEEG脳波計を用いて持続的注意課題を行っている際の脳活動及び複数の自律神経系の生体情報を同時に計測し,脳活動と生体情報の関連を調査した。持続的注意課題はgradual onset continuous performance task(gradCPT)を用いた。この課題は、反応時間の時間的変動によって注意状態を定義することができる認知課題である。生体情報は,視線計測,瞳孔径,心拍,皮膚電位活動,呼吸の計測を行った。gradCPT中のEEG脳波活動に対してenergy landscape analysisを適用することで安定的な脳状態を推定し、行動課題成績や生体情報との関係を検討した。その結果,安定的な脳状態は脳波の一過性のパターン化された準安定状態であるマイクロステートに類似していることがわかった。マイクロステートは、その空間的なパターンからマイクロステートA~Dと呼ばれ、それぞれ左右の後頭部、後頭葉、頭頂部の活動によって特徴づけられる。本研究では,実験協力者がマイクロステートDに近い脳状態にあるとき、反応時間の分散はより大きく、視覚感度はより低くなった。また、この状態では瞳孔の変動が大きくなっており,一般的な注意状態を表していると考えられる。本研究では,脳活動のみから行動課題成績や生体情報と関連する状態を推定できることが示され,生体情報のみを用いて注意状態を推定可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時における令和4年度の計画では,EEGで計測した脳活動に基づいて集中状態を定義(研究①)し,脳活動に基づく集中状態と生体情報の関係を解明(研究②)することを目指した。これまでに,実験協力者に持続的注意課題を行わせ,EEGによる脳活動と並行して瞳孔や心拍,皮膚電位活動など様々な自律神経系の生体情報を取得する。生体情報の取得は,アイトラッキング,心電図法,スキンコンダクタンス,呼吸トランスデューサを用いて行った。gradCPT中のEEG脳波活動に対してenergy landscape analysisを適用し,安定的な脳状態の推定を行った。安定的な脳状態は,頭頂部の活動によって特徴づけられ,この脳状態の時に持続的注意課題の成績が悪いことが明らかになった。つまり、この脳状態は、一般的な注意状態を表していると考えられ,EEG脳活動に基づいて集中状態を定義出来ることが示唆された。また,この脳状態の時に,実験協力者の瞳孔は通常時に比べて変動が大きい状態であることが明らかとなった。このことは,瞳孔の変動を指標とすることで,実験協力者の集中状態を推定できる可能性を示唆している。この成果は,2023年8月に開催される第46回日本神経科学大会にて「EEG脳状態に基づく注意の揺らぎの検出とその生体情報との関連」という題目で発表を行う。以上のように,令和4年度は当初の計画通りに成果をあげることができたことから,研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,【現在までの進捗状況】で得られた結果の解析を進める。具体的には,ノイズ処理方法や,安定的な脳活動の推定方法に関して網羅的に検証を行い,解析方法等を固定したうえで検出力解析を行い,事前登録による論文投稿を目指す。申請時における計画では,ウェアラブルデバイスによる集中状態の視覚化技術を開発(研究③)及び,視覚化技術の実応用可能性の検証(研究④)を行う予定である。研究③では,ウェアラブルデバイスで取得した生体情報を説明変数とした集中状態を予測する集中力マーカーを機械学習法で作成する。作成した集中力マーカーが個人内で様々な認知課題間で汎化するか,個人間で汎化するかを交差検証法等で調査することでその信頼性や汎化性を調査する。研究④では,研究③で構築した集中力マーカーを用いて認知課題中や学習中に休憩タイミング等を適切に提示することで,認知課題成績や学習効率が向上するかを検証する。
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