研究課題/領域番号 |
22K21322
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高野 力 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60964575)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 耐酸性細菌 / 金属回収 / 金属リサイクル / Bioaccumulation / バイオソープション / 生物吸着 / Biosorption / Acid tolerant bacteria / Metal recycling / E-waste |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は中和処理を必要としない金属リサイクルを実現するため、酸性条件下で金属を吸着する吸着材を開発する。 吸着材の素材として、強酸性条件下で生存し、金属を吸着可能な耐酸性細菌に着目した。 金属吸着に関与する、細胞表層のタンパク質を特定し、プラスミドを調製して大量生産を実現する。次に、マグネタイト、セルロース等の高分子を担体として、金属結合タンパク質と結合した、複合金属吸着材を開発する。 異なる金属を選択的に吸着可能な複合吸着材を組み合わせ、電子機器廃棄物から金属を選択的に分離可能なプロセスを構築するため、作成した吸着材の金属吸着能力や金属選択性を評価する。
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研究実績の概要 |
細菌を用いた金属のバイオソープションは、水素イオンによる阻害の影響を受けにくい中性条件下での検討が主流である。本研究では、中和処理を不要とした金属リサイクルシステムの開発を目的に、強酸性条件下での金属回収について検討した。リチウムイオン電池やプリント回路基板に用いられるCo, Cu, Li, Mn, Niの5種類の金属を対象に、強酸性条件下での回収メカニズムの解明と、回収に関与するタンパク質の特定を試みた。 前年度の研究で、高い金属回収能力を示したPriestia属の細菌を対象として、5種類の金属イオンを含む模擬金属浸出液 (pH 1.5) を用いた強酸性条件下での金属回収を行った。RNAシーケンス解析により、金属を含まないpH 1.5の溶液を用いた条件との間で、発現遺伝子を比較した。この結果、金属存在下において、細胞内外の物質輸送に関与するABCトランスポーターに関連する遺伝子の発現が有意に増加した。研究開始時点では、細胞膜表面への金属吸着タンパク質の発現量増加を想定していたが、予想に反して、細胞内への金属イオンの取り込みが、本菌株の主な金属回収メカニズムであることが示された。また、死菌体を用いて同様の金属回収を行った結果、生菌体と比べて一部の金属の回収量が有意に低下したことから、これらの金属回収が生物学的プロセスによるものであることが示された。 以上より、本研究では、Priestia属の細菌について、pH 1.5の条件下で、ABCトランスポーターを用いた細胞内への取り込みに基づく金属回収が可能であることを示した。 本研究で用いた菌株は、中性条件下で培養可能であり、pH 1.5の条件下で生存し、細胞内に金属を蓄積可能であることが示された。本菌株は、中和処理を用いない金属リサイクルの他、酸性環境における汚染金属の除去など、新規な酸性条件下でのバイオプロセスへの活用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初目的では、細胞表面に発現する金属吸着タンパク質を用いて金属回収材を開発する予定であったが、対象とした細菌の金属回収メカニズムが細胞内への取り込みによるものであることが判明し、回収材の開発ではなく菌体そのものの金属回収能力の評価や回収メカニズムの解明を優先したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において入手した、他の金属回収細菌について、金属回収メカニズムの解明と、金属吸着タンパク質の特定を試みる。これにより、菌体そのものよりも高い金属回収率および選択性を有する、強酸性条件下で使用可能な金属回収材を開発する。
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