研究課題/領域番号 |
22K21323
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木野 佳音 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20963234)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 気候変動 / 気候モデリング / 南極 / 水同位体 / 気象 / 最終氷期最盛期 / 氷床コア / 気候モデル / 気候感度 / 偏西風 |
研究開始時の研究の概要 |
気候モデルによる将来の温暖化予測の不確実性は、モデルが過去の気候をどの程度再現できるかで評価される。そこでは機器観測技術発達以前の現在とは大きく異なった気候再現が有用だが、当時の気候推定には同位体比などの間接指標を用いざるを得ず、指標そのものの信頼性についても広く研究が行われている。申請者によるこれまでの研究で、南極降雪同位体比の決定には背景にある大気循環場が重要な役割を担うと明らかになった (Kino et al., 2021, JGR)。そこで本研究では、水同位体も含めた気候モデル計算によって、南極氷床コア水同位体比から直接的に気候モデルを評価し、将来の気候予測の制約に貢献する。
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研究実績の概要 |
南極氷床コアの水同位体比は、古典的には、現地気温の1次関数とみなされてきた。本研究課題では、日本の同位体-大気気候モデル(MIROC5-iso; Okazaki et al ., 2019)を用いた最終氷期最盛期(LGM)実験結果の解析により、気温と降水同位体比は必ずしも比例しないことを明らかにし、その要因として総観規模の大気循環とイベント性降水を指摘した。また、古気候モデリング研究における気象解析の有用性を実際的に示した。以上の成果は、Geophysical Research Lettersで査読・出版された。 また、気候モデルに依存する不確実性を考慮するため、日本とドイツの同位体-気候モデルのLGM実験結果の比較を行った。古気候モデル比較プロジェクト(PMIP)で用いられる複数の海洋表層境界条件を設定した実験を、各モデルで共通して実施した。結果として、南極降水同位体比と気温の関係性のモデルによる違いが生じる要因が季節によって異なることがわかった。 南極氷床コア同位体比から過去の気温変動を復元する際に、イベント性降水の寄与を無視すると、実際の気温より暖かく過去の氷期の気温が推定されてしまうことが、2つの同位体-気候モデルのLGM実験で共通してみられた。また、モデルで得られたLGM南極気温は、従来的な同位体温度計や1次元同位体モデルといった手法による推定気温よりも高い傾向にあった。このことから、イベント性降水の寄与を考慮していないからといって従来的な推定気温をそのまま下方修正するのは不適切である可能性の示唆がえられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本とドイツの同位体-気候モデル比較にあたっては、様々な要因が絡み合った結果モデル間の差異が生じているとわかったことから、当初はモデル比較に関する単一の学術論文を出版する予定だったのを、複数の学術論文に分けて丁寧な要因分析をすることに方針を転換した。この方針転換を決定するのに時間を要したため、モデル比較に関する論文の執筆・出版に当初の計画より遅れが生じている。 一方、古気候モデリング研究においては通常保存されない6時間平均値や日平均値の解析を追加的に行ったことで、古気候スケールにおいても相殺されない気象スケールの現象の古気候プロキシ記録へ果たす役割を実際的に示す学術論文を出版することができた。さらには、気象スケールの現象が過去の南極気温推定に与える影響を、複数の同位体-気候モデルで共通してみられる結果として見出すことができた。これにより、本研究課題の最終目標は概ね達成されたといえる。 以上を踏まえ、全体としては概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、日本とドイツの同位体-気候モデル間の差異の検討を進める。その際、当初はモデル比較に関する単一の学術論文を出版する予定だったのを、複数の学術論文に分けて丁寧な要因分析をすることに方針を転換した。このことを踏まえ、季節ごとの要因の違いに着目した解析を行う。前年度に進展した気象スケールの解析を応用するとともに、古気候に執着せず現在気候におけるモデルの精度にまで立ち返った議論を行うことで、南極降水同位体比決定過程の理解深化を進める。
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