研究課題/領域番号 |
22K21330
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
佐伯 健太郎 琉球大学, 理学部, 助教 (70962801)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 植物由来VOC / 亜熱帯域大気粒子形成 / ポリアミン / 誘導体化分析 / タンデム型質量分析計 |
研究開始時の研究の概要 |
大気中の植物由来揮発性有機化合物の存在は,非都市域におけるエアロゾル形成への寄与の大きさから重要視されており,その中でもアミン類の役割が注目されている。中でもポリアミンが起源となる粒子形成は,近年日本でも頻度が増加している集中豪雨の発生の一端を担っている可能性がある。しかし,豪雨を発生させる雲の核となる粒子がどのように生成し,粒子内でポリアミン類がどう変性しているのかは未知の部分が多い。本研究は亜熱帯地域に属する沖縄県北部の山原(やんばる)の原生林に分布する植物由来のポリアミン類を計測する手法を確立し,ポリアミン類が関わるエアロゾル粒子の形成メカニズムや粒子内での化学反応を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
亜熱帯域由来大気中ポリアミン起源の二次生成有機エアロゾルの化学反応経路解明のため,まず捕集時間を任意に切り替えられる捕集装置の開発を行った。捕集装置には最大24本の捕集管を取り付けることができ,内蔵のマスフローコントローラーで捕集流量を制御できる。また,本装置は耐候ケースと組み合わせることにより,気象条件の変わりやすい亜熱帯地域でも母屋なしに設置することができるように改良されている。内蔵のマスフローコントローラーは小型であり,設計時と比較して軽量化に成功している。本装置を用いて野外でサンプリング試験を行ったところ,悪天候の日があったにもかかわらず10日以上稼働できることを確認できた。加えて,試験的に捕集したサンプルからはこれまで検出例のあるジメチルアミンをはじめとするモノアミン類や1,3-ジアミノプロパン,プトレシンといったジアミン類に加えて,テトラミンであるスペルミンが検出された。スペルミンはこれまで大気中からは報告例のないポリアミン類であるため,亜熱帯でのエアロゾル形成には特有な反応経路がある可能性が示唆された。また,ポリアミン類の分析法の最適化にも取り組んだ。高速液体クロマトグラフィーとタンデム型質量分析計やorbitrap質量分析計を組み合わせた分析を比較し,状況に応じて使い分けられるように分析条件をいくつか検討した。その中には再現性に難がある(±20%)ものもあるため,来年の大気観測に向けてより信頼性の高い方法を決定することが今後の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は捕集装置の開発と,自動アミン誘導体化システムの確立を目的としていた。捕集装置は設計や物品の選定から組み立てまですべて自研究室で行い,予定通り完成した。従来機にはなかった内蔵のマスフローコントローラーや耐候ケースによって全天候型捕集装置として確立された。また,予定を先取りしてやんばるの森林で合計3週間の大気サンプリングを行った結果,大気中では未報告のポリアミン類が検出され,亜熱帯大気中での特有な化学反応の可能性を把握できた。これは当初の計画以上の成果である。自動アミン誘導体化システムの確立については試験している誘導体化試薬の再現性に難があったため見直しを行っている。加熱や脱塩処理が不要なものを選定し,試験中である。誘導体化システムについては遅れが出ているが,前者の成果を総合的に判断すると,おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
先述のように,引き続き誘導体化システムの構築を進めていく。これまで使用してきた誘導体化試薬は加熱が必要であり,質量分析計で測定するためには脱塩処理をしなければなかった。これらの操作は再現性に大きく影響することが考えられる。本年度はそれらの操作が不要な誘導体化試薬の選定まで行ったため,来年度はまず,実際に試験して使用する試薬を最終決定する。続いて,人為的な差異がでないように自動で送液・混合するシステムの構築を行う。本番にむけてシステムを試験した後,来年2~3月に大気サンプリングを行い,分析・解析へと繋げる。来年度から学部生,大学院生が初めて研究室に配属されるため,研究進捗の加速が期待できる。
|