研究課題/領域番号 |
22K21343
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際先導研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
染谷 隆夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90292755)
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研究分担者 |
松尾 豊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30358014)
川原 圭博 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80401248)
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
岩部 美紀 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70392529)
横田 知之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30723481)
李 成薫 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80873132)
福田 憲二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40613766)
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研究期間 (年度) |
2022-12-20 – 2029-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
689,000千円 (直接経費: 530,000千円、間接経費: 159,000千円)
2028年度: 104,000千円 (直接経費: 80,000千円、間接経費: 24,000千円)
2027年度: 104,000千円 (直接経費: 80,000千円、間接経費: 24,000千円)
2026年度: 104,000千円 (直接経費: 80,000千円、間接経費: 24,000千円)
2025年度: 104,000千円 (直接経費: 80,000千円、間接経費: 24,000千円)
2024年度: 104,000千円 (直接経費: 80,000千円、間接経費: 24,000千円)
2023年度: 97,500千円 (直接経費: 75,000千円、間接経費: 22,500千円)
2022年度: 71,500千円 (直接経費: 55,000千円、間接経費: 16,500千円)
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キーワード | 電子デバイス / ウェアラブル / ヘルスケアIoT / 機械学習 / 生体信号計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人間の生体情報を全身で高精度に計測し、かつフィードバック機能を有する全身電子皮膚システムを実現し、行動変容を促すためのフィードバック機構を提供することを目的とする。全身電子皮膚システムは、服型の情報プラットフォームであり、不快感なく装着でき、日常的な活動中に、複数の生体情報を高精度で長期間計測できる。長期間のデータ計測により、様々な生体情報や行動変化の正確な解析が可能であり、解析結果に基づいて人にフィードバックすることで行動変容を促す。フィードバックが行動変容に及ぼす効果や生体情報の変化を長期間追跡して国際比較できるため、多方面の学術分野へ大きな波及効果が期待される。
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研究実績の概要 |
本年度は、全身電子皮膚の製造技術の確立に向けて、使用者の体型に合わせて全身に自由に電極を配置し、全自動で製造できる全身スマートテキスタイルの設計技術を開発した。具体的には、使用者の体型情報を取得するために3次元スキャンする際に基準点を導入したテキスタイルを着せることで、使用者の3次元情報とテキスタイルの2次元マップを同期し、全自動横編み機に適用可能な2次元・3次元変換情報を取得することが可能となった。その結果、実際使用者の体型に合わせて電極を配置したテキスタイルを製造することに初めて成功した。また、全身電子皮膚の実現に向け、人体スケールの無線給電服を作製した。これは、皮膚近傍のみに強い磁界を生じさせるメアンダコイルと、損失の小さな液体金属配線を利用して、ヒトに安全に数Wの電力を送れる衣類型無線給電システムを設計し、実装することに成功した。また、ウェアラブルな電源に関しては、超柔軟な有機太陽電池の曲げに対する安定性を向上させるプロセス技術を開発することに成功し、機械的頑健性を確保することが可能となった。 また、新規バイオマーカーの開発・検証に貢献する方法論を示すことに成功し、医療への応用可能性を検証した。これらの成果を活用し、新規バイオマーカーの検証・医療への応用に向けた準備を進めている。さらに、金ナノメッシュセンサーを皮膚に強固に貼りつけることができる生体適合性の高い接着材料の開発を目指して、黄色ブドウ球菌由来皮膚接着タンパク質を金表面に固定化できるように分子改変を行うことに成功した。生体信号の解析に関しても、指先から取得した脈波データから血圧を機械学習により推定することで、血圧を常時モニタリングできるようなアプリケーションの開発を行った。市販のシリコンフォトディテクターの予測に加えて、プロジェクトで開発したフレキシブルイメージャーを用いて精度予測を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全身スマートテキスタイルにおいて、各点での電気的な要素と皮膚との物理的な接触を得るためには、使用者の体型にテキスタイルの形状を合わせることと、着る際の変形や日常生活での行動に備えて、伸びる素材によって全身への密着を実現することが必須である。しかし、伸びる素材を使用すると、着た後の位置がずれてしまうため、着た状態で正確な位置に電気的な構成要素を配置させることは困難であった。本課題では、独自の手法でこの課題を解決し、全身への密着と正確な電極の配置を両立することに成功した。さらに、ウェアラブルなシステム用の電源に必要な機械的安定性や耐水性を向上させる取り組みは順調に進んでおり、電源とシステムの集積化に向けた準備は着実に進んでいる。また、スキンセンサに関しても、皮膚とセンサの密着性を改善させる手法の開発に取り組んでいる。金に特異的に固定化できるペプチドタグを融合した皮膚接着タンパク質を設計し、その発現精製系を確立することに成功した。さらに、設計したタンパク質を固定化した金ナノメッシュセンサーを皮膚に貼りつけられることを定性的に確認した。生体信号の解析に関しては、市販のシリコンフォトディテクターによる脈波計測を用いて血圧推定を行う基本的なアルゴリズムを作製することに成功した。一方で、イメージャーを用いた血圧推定を行ったところ、従来のシリコンフォトディテクターと比較して精度が低くなることが確認できた。この結果から、血圧を高精度に推定するためには、フレキシブルイメージャーの特性が十分でないことが確認でき、デバイス側の設計にフィードバックを掛けることができた。一方で、基本的な脈波解析手法やイメージャーの解析手法の基盤を確立することに成功しており、順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、開発した手法を用い、筋電図や心電図といった全身から取得される生体信号を計測できる全身スマートテキスタイルを開発する。また設計した通りに配置できる電極に加えて、テキスタイルを着る際の発生するズレを抑制することで、センサを着た状態での電極の配置精度を1センチ以下まで向上させることを目指す。無線給電システムに関しては、コイルを用いた無線通信システムをさらに組み込むことで、全身で無線給電・通信ができる電子服の開発を目指す。さらに、全身の色々な場所にある電子皮膚をバッテリーレスな状態で数日間駆動できることを確かめる。さらに、ウェアラブルセンサ向けの電源に関しては洗濯性などを向上させるために、水安定性という新たな安定性を構築し、それを最大限に生かした集積化応用の実現を目指す。また、本質的に伸縮性のある太陽電池実現のための材料構築を行うことで、ウェアラブルエレクトロニクス用途の電源として使用できる電源システムを構築する。スキンセンサに関しては、設計タンパク質を固定化した金ナノメッシュセンサーの接着力を定量的に評価可能な系を構築する。また、接着特性の調整が可能となるように、皮膚接着タンパク質の分子改変を行う予定である。生体信号解析に関しては、企業と共同開発を行っているリング型の脈波センサを使用し、脈波間隔(PPI)を測定することでストレス値を予測していく予定である。特に、PPIの精度を評価するために、心電図から得られた値を基準として、脈波センサで取得したデータがどのくらい精度で近似しているか検討する。次に、消費電力を低減することを目的に、ダウンサンプリングした脈波データと心電図を比較しPPIの値の変化を定量的に検討し、最小のサンプリング速度を検討する。これらの結果をもとに、ストレスのかかる環境下での計測結果を用いて、ストレスの定量化或いは分類を学習するアルゴリズムを構築する。
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