研究課題/領域番号 |
22K21357
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
社会科学
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鈴木 真介 一橋大学, 大学院ソーシャル・データサイエンス研究科, 教授 (90525578)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
46,280千円 (直接経費: 35,600千円、間接経費: 10,680千円)
|
キーワード | 価値に基づく意思決定 / 神経経済学 / 深層学習 / 神経科学 / 計算論的精神医学 / 食 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「食の好み(=食品の主観的価値)が脳内でどのように計算されているのか?」の解明を目指す.特に,「主観的価値は食品に関する様々な情報を階層的に統合して計算される」という仮説を,深層学習による行動データのモデリングと機能的脳イメージングを組み合わせて検証する.また,健常者と肥満者を比較することで,肥満の病態解明への貢献を目指す.本研究が提供し得るのは「ヒトが脳内で食品の味,栄養価,外見などの情報を統合して主観的価値を構築する過程」を説明し得る脳計算理論である.本研究の成果は,全てのヒトが日々行う根源的な意思決定である「何を食べるのか?」についての知見を深めると期待される.
|
研究実績の概要 |
本研究では「食の好み(=食品の主観的価値)が脳内でどのように計算されているのか?」の解明を目指す.特に,「主観的価値は食品に関する様々な情報を階層的に統合して計算される」という仮説を,深層学習による行動データのモデリングと機能的脳イメージング(functional Magnetic Resonance Imaging)を組み合わせて検証する.また,健常者と肥満者のデータを比較することで,肥満の病態解明への貢献を目指す.
2023年度は主に予備調査の行動データを解析した.深層畳み込みニューラルネットワークVGG-16の転移学習を行うことで,ヒトの様々な食品画像に対する主観的価値は深層ニューラルネットワークで予測できることを見出した.また,深層ニューラルネットワークの浅い層では食品の低次画像情報,中間の層では栄養価の情報,深い層では味や健康への影響がコードされていることを示唆する結果を得た.一方,健常者(Body Mass Index < 25)と肥満者(Body Mass Index > 30)のデータには顕著な差は見られなかった.
上記の得られた成果は生理学研究所で開催された研究会「価値判断を生み出す脳の仕組み:点と線から神経回路のスケーラビリティーを捉えられるか?」,筑波大学で開催されたシンポジウム「Neuroeconomics symposium:「How does our valuation system operate in the economic sence?」等で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は主に予備調査の行動データを解析した.データには110人の健常者(Body Mass Index < 25)と89人(Body Mass Index > 30)の肥満者が含まれている.
まず,ヒトの様々な食品画像に対する主観的価値は深層ニューラルネットワークで予測できるか否かを検証した.深層畳み込みニューラルネットワークVGG-16の転移学習を行うことで,深層ニューラルネットワークで食品の主観的価値が予測できることを示した.次に,訓練済みの深層ニューラルネットワークを詳細に解析することで,ニューラルネットワークの各階層にどのような情報が保持されているのかについて検証した.その結果,例えば,深層ニューラルネットワークの浅い層では食品の低次画像情報,中間の層では栄養価の情報,深い層では味や健康への影響がコードされていることを示唆する結果を得た.
一方,健常者と肥満者の結果には今のところ顕著な差は見つかっていない.
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は予備行動データの解析結果を踏まえ,本調査を行う予定である.本調査は予備実験と概ね同様のデザインを用いてオンラインで行う.また,予備調査のデータ解析で得られた結果を基に,本調査のデータ解析を行う.
また,2024年度の後半には機能的脳イメージング(fMRI)実験を行う予定である.2023年度末に一橋大学にMRI装置が導入されるなど,準備は順調に進んでいる.
|