研究課題/領域番号 |
22K21359
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
数物系科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 敦彦 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90830670)
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研究期間 (年度) |
2023-03-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
60,840千円 (直接経費: 46,800千円、間接経費: 14,040千円)
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キーワード | ファンデルワールス磁性体 / 量子磁性体 / 超強磁場 / 磁気光学 / パルスマグネット開発 / 100テスラ科学 |
研究開始時の研究の概要 |
マグネット線材開発・数値計算によるマグネットデザイン・コイルの多段化に取り組むことによって、日本国内に世界最高クラスの100テスラマグネットを実現させる。また、パルス磁場下における新たな測定手法を開拓・提供することによって国内での100テスラ科学を大きく発展させていく。
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研究実績の概要 |
ファンデルワールス磁性体が示す特異な磁気光学応答を明らかにするため、可視領域での強磁場分光に取り組んだ。FePS3は、120 K以下でジグザグ磁気秩序を有し、そのジグザグ鎖に平行及び垂直に入射した直線偏光に対して異なる光学応答(巨大な線二色性)が観測されている。さらに40 T以上の強磁場を印加することでスピンフリップ転移を引き起こすことが可能であるが、我々の研究ではその磁場以上で巨大な線二色性が消失することを見出した。これは、原子間における光学遷移の対称性が磁気対称性と強く結合していることを示した結果であり、今後、光ナノデバイス開発が進む上で新たな機能性を付加できる可能性を示している。またMnPS3は、80 K以下でネール型の反強磁性秩序を示し、100テスラ以上の強磁場印加により、250 meVに至るバンド端の巨大なエネルギーシフト(マグネトクロミズム)を観測した。 また、磁性体のバンドギャップは磁気構造に強く依存するため、バンド端のシフトを調べることによって、磁気状態を理解することが可能である。Shastry-Sutherland格子に起因して多段の磁化プラトーを示すSrCu2(BO3)2の強磁場磁気相を調べるため、50 Tまでのバンド端シフトを測定した。その結果、磁化プラトーに対応して、バンド端シフトも多段のプラトーを示す結果となった。今後は、100テスラ以上の強磁場領域での磁気光学を行うことによりSrCu2(BO3)2の強磁場磁気相を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファンデルワールス磁性体(FePS3及びMnPS3)に着目して、特異な磁気光学効果の探索を目指して強磁場実験を行い、両者でとても興味深い結果を得ることができた。また、Shastry-Sutherland格子のSrCu2(BO3)2においても50 Tまでではあるが、逐次磁気相転移に対応したバンド端シフトの観測に成功しており、研究は計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、100テスラ級のパルス強磁場を利用し、特異な磁気光学効果の探索を目指していく。そのためにパルス磁場下での新たな磁気光学手法(光電流分光、THz分光など)の開発に取り組んでいく予定である。また、巨大な線二色性に加えて方向二色性が絡んだ特異な磁気光学効果を探索していく。
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