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種子形成に必須の新組織「師管末端最終形態」を利用した作物の種子肥大育種

研究課題

研究課題/領域番号 22K21366
研究種目

国際共同研究加速基金(帰国発展研究)

配分区分基金
審査区分 農学
研究機関名古屋大学

研究代表者

笠原 竜四郎  名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 特任准教授 (40467270)

研究期間 (年度) 2023-03-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
61,230千円 (直接経費: 47,100千円、間接経費: 14,130千円)
キーワード種子肥大育種 / カロースによる栄養制御 / 受精後のカロースの除去 / 受精前のカロースの沈着 / イネの師管末端最終形態 / イネの栄養制御システム / 師管末端最終形態 / POEM
研究開始時の研究の概要

シロイヌナズナで見出された師管末端最終形態は植物種子のサイズに関して重要な役割を果たしていることが判明し、種子肥大育種の可能性を著しく拡大する結果となった。我々はまずこの新組織がどのようにして植物の種子サイズを変更しているのかを明らかにし、植物のその他の器官でも類似した組織の存在が想定されるため、それらの器官についても種子同様に解析する。さらに、農作物の解析を進め種子肥大植物の作成を目指す。

研究実績の概要

担当者はシロイヌナズナの胚珠にこれまで誰も見出すことのできなかった、新植物組織を発見することができた。この組織は受精前にはカロースを蓄積して胚珠部分に栄養を与えるのを妨げているが、一旦受精を完了するとカロースを取り除いて栄養を種子へと運ぶ役割を果たしているということが明らかになった。2023年度はこの計画で最も大事な種子肥大育種としてイネの種子肥大育種を試みた。まずイネでシロイヌナズナと同様に師管末端最終形態の存在を確認した。その結果、イネの構造はシロイヌナズナの構造と非常によく似ていた。また受精前と受精後でその構造を調べてみたところ、受精前にはより多くのカロースを蓄積させていたが受精するとそのカロースが除去されていることが観察された。イネの場合は卵細胞や中央細胞だけに片側受精する変異体が見出されていないので、カロースを分解するシグナルが受精した中央細胞から出ているという確証はないものの、イネの構造を観察しているとシロイヌナズナと同様の反応がイネの胚珠でも起こっているであろうことが想定できた。次にシロイヌナズナのPPAPの過剰発現体をイネで発現させると、イネの種子は普通の日本晴の種子よりも9%大きくなっており、双子葉植物、単子葉植物の垣根を超えてこのカロース分解酵素PPAPは種子肥大に貢献できることが明らかになった。こうしてイネの種子肥大育種に成功したので、2024年度は双子葉植物の穀物代表であるダイズの種子を肥大させる育種を開始する。また、他組織でのカロース分解がどのようにシグナル伝達されているのかを観察する実験にも取り組んでいく予定であり、植物体全体でどのようなカロース蓄積、除去ネットワークが働いているのかを総合的に理解していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度から今年度までの間に師管末端最終形態の調査が進み、これまでシロイヌナズナでのみ同定されていた組織の構造が新しくイネで同定された。イネの構造はシロイヌナズナの構造と非常によく似ていた。また、イネの師管末端最終形態は受精に成功した後はカロースの沈着が少なくなっていたことが明らかになった。ところが、受精に失敗した胚珠はカロースがより沈着してシグナルが強くなっていた。また、シロイヌナズナの種子をより大きくしたPPAPの過剰発現コンストラクトをイネに用いたところ、驚くべきことにイネの種子は通常の日本晴の種子に比べて9%大きくなっていることが明らかになった。ここまでで、シロイヌナズナで明らかにしたカロースによる師管末端最終形態への制御がイネでも存在していることが明らかとなった。また、イネの構造が明らかになったことや、実際にイネの育種に成功したというわけで昨年度までで、当計画の大きな目標を一つクリアすることができた。シロイヌナズナのデータ、イネのデータを全て含めた内容を現在トップジャーナルに投稿準備中である。

今後の研究の推進方策

2023年にイネの種子肥大育種が成功したので、2024年以降は双子葉植物の代表であるダイズで種子肥大を試みる。同時にダイズでの師管末端最終形態を観察する。また、花や葉のような胚珠とは異なる場所でこの師管末端を調べ、その機能や遺伝子を調査していく。更に興味深いことにシロイヌナズナの観察を続けていくうちに、師管末端最終形態とは異なる近接した組織が新たに発見できたので、この組織についての理解を深めていく。現在この組織の機能はよくわかっていないが、第一ゲートとはカロースの蓄積するタイミングが全く異なるので何か他の機能、栄養をフィルターする機能などが想定できるので、調査を進めていく。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Transcription Factors behind MYB98 Regulation: What Does the Discovery of SaeM Suggest?2024

    • 著者名/発表者名
      Adhikari Prakash B.、Liu Xiaoyan、Huang Chen、Mitsuda Nobutaka、Notaguchi Michitaka、Kasahara Ryushiro Dora
    • 雑誌名

      Plants

      巻: 13 号: 7 ページ: 1007-1007

    • DOI

      10.3390/plants13071007

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 高純度の砂糖を生産する「砂糖イネ」の開発 ー第3の製糖作物を目指してー2024

    • 著者名/発表者名
      笠原竜四郎
    • 雑誌名

      農業

      巻: 3月号 ページ: 31-39

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Seed size control via phloem end by callose deposition/degradation of β-1,3-glucanase.2023

    • 著者名/発表者名
      Xiaoyan Liu, Kohdai P. Nakajima, Xiaoyan Wu, Shaowei Zhu, Prakash Babu Adhikari, Ken-ichi Kurotani, Takashi Ishida, Masayoshi Nakamura, Yoshikatsu Sato, Liyang Xie, Chen Huang, Jiale He, Shinichiro Sawa, Tetsuya Higashiyama, Michi taka Notaguchi, Ryushiro D. Kasahara
    • 雑誌名

      BioRxiv

      巻: 7 ページ: 550179-550179

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Discovery of a cis regulatory element SaeM involved in dynamic regulation of synergid-specific MYB98.2023

    • 著者名/発表者名
      Prakash Babu Adhikari, Shaowei Zhu, Xiaoyan Liu, Chen Huang, Liyang Xie, Xiaoyan Wu, Jiale He, Nobutaka Mitsuda, Benjamin Peters, Lynette Brownfield, Shingo Nagawa, Ryushiro D. Kasahara
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Science

      巻: 14 ページ: 1177058-1177058

    • DOI

      10.3389/fpls.2023.1177058

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] “サトウイネ”が種子にショ糖を蓄積する原因の解明に向けての研究2023

    • 著者名/発表者名
      笠原竜四郎
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 6月号 ページ: 142-144

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Seed size control by callose control enzyme, PPAP at the final form of the phloem end in plants.2024

    • 著者名/発表者名
      Ryushiro Kasahara
    • 学会等名
      Annual conference of Western Regional Seed Physiology Research Group.
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 胚珠にある独立した 2 つの植物新組織,Gate-I,Gate-II の発見2024

    • 著者名/発表者名
      笠原 竜四郎
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Seed size control via phloem end by callose deposition/degradation of the callose related enzymes.2023

    • 著者名/発表者名
      Ryushiro Kasahara
    • 学会等名
      14th International Society for Seed Science Meeting.
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 胚珠にある植物新組織の発見とその新組織を利用した新しい植物種子形成学の黎明2023

    • 著者名/発表者名
      笠原 竜四郎
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [産業財産権] 改変植物体2023

    • 発明者名
      笠原竜四郎 野田口理孝 黒谷賢一
    • 権利者名
      国立大学法人名古屋大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 出願年月日
      2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-07-06   更新日: 2024-12-25  

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