研究課題/領域番号 |
22K21367
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
農学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中野 亮平 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70740455)
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研究期間 (年度) |
2023-03-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
61,360千円 (直接経費: 47,200千円、間接経費: 14,160千円)
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キーワード | 植物微生物相互作用 / 植物マイクロバイオータ / 植物免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
植物組織内外に構築される微生物コミュニティを植物マイクロバイオータと呼ぶ.病原菌の定着を防いでいる植物免疫機構がなぜこれらの常在性微生物の定着を許容するのか,植物マイクロバイオータ相互作用における植物免疫の役割の理解は未だ不十分である.申請者は既に植物の根に常在する細菌の一部が宿主免疫を抑制することを見出しており,本研究では,これらの細菌がれらの細菌が宿主免疫を抑制するメカニズムを分子遺伝学的に明らかにすることで,【根における植物免疫が根圏微生物との相互作用において担う役割】を理解することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,植物免疫に干渉する常在微生物を用いて,その干渉機能の分子メカニズムを明らかにすることであり,またそのような微生物に対する植物免疫の機能を解析することである。また,同定した因子の分子系統学的解析を通して,「根圏における植物免疫を介した常在微生物との相互作用」の分子生物学的な理解を目指す。
本年度は,新規研究室の立ち上げにおいて実験系の確立と微生物資源の輸入調達と整備を主に推進した。その達成のために,当初の想定を上回る積極的な設備投資を行い,次年度以降に必要な設備および条件検討を完了した。また,既に本研究課題の推進に必要な細菌株を概ねすべて整備し,その生育や接種時の効果を安定して再現できることを確認した。迅速で安価なトランスクリプトーム解析を行うための実験系の確立も完了し,次年度以降の解析に必要な研究基盤は概ね整えることができた。当初初年次に予定していた正遺伝学的な変異体スクリーニングはその準備段階にとどまっているが,過去の解析からその重要性が示唆された遺伝子の変異体の確立に成功している。これら変異体の逆遺伝学的解析を次年度以降行い,常在細菌による詳細な分子メカニズムを解析する。同様に初年次に予定していた細菌オミクス解析についても,その条件検討が順調に進んでおり,次年度以降の解析の基盤を確立した。
次年度は,本年度達成した実験基盤の確立をベースとして,当初初年次および二年次に予定していた解析を積極的に推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は二年次三年次に予定している実験が滞りなく進むようその研究基盤の確立に注力した。そのため,当初予定していた解析の一部は二年次に実施することとした。一方で,二年次後半に予定していた細菌変異株の作出や植物の転写応答解析について,既にその予備実験を完了している。そのため,全体としては当初の予定通り順調に進展しており,当初の予定はある程度達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは現在までに既に確立した変異体の解析を主要課題とし,これら変異株の原因遺伝子およびその発現産物が宿主免疫の干渉に担う役割を解析する。同時に,これら変異株を接種した際の宿主植物の転写応答を網羅的に解析することで,上記細菌因子が標的とする植物因子の絞り込みを行う。また,様々な微生物に対する植物の転写応答を記述した過去の論文データをメタ解析してハブ遺伝子候補を同定することで,植物因子の絞り込みを加速する。
並行して,宿主植物と相互作用している細菌のオミクス解析を推進する。既に確立している実験系に加えて,様々な実験条件でのタンパク質・核酸抽出を検討・解析し,宿主植物との相互作用に特に重要と思われる因子の絞り込みを行う。大規模な比較ゲノム解析を並行して行うことで因子の絞り込みをさらに加速する。
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