研究課題/領域番号 |
22KF0075
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補助金の研究課題番号 |
21F51365 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳田 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50420419)
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研究分担者 |
LIU JIANGYANG 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 分子センサ / 分子濃縮 / 揮発性有機化合物 / バイオマーカー / ナノワイヤ / On-chip gas sensor / ZnO nanowire / filter / concentrator / hybrid gas sensor |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、無機材料合成アプローチにより、小型基板上に分子フィルター機能・分子濃縮機能・センサ機能を併せ持つ集積化化学センサシステムを創成する。空間選択的な無機ナノ材料合成技術とこれを応用したナノ固体表面機能の設計により、従来化学センサでは原理的に実現困難であった、多成分夾雑分子群存在下における微量標的分子の検出をその長期動作安定性・耐熱堅牢性と共に実証する。提案するセンサシステムでは、固体表面-分子間の相互作用に基づく時空間分子輸送制御が可能であり、異なる時間軸で多成分分子群のセンシングを行うことで分子識別機能の劇的な改善が期待できる.
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、空間選択的な無機ナノ材料合成技術とナノ固体表面機能の設計により、多成分夾雑分子群存在下における微量標的分子の検出を実現ことを目的として、基板上に分子フィルタ・濃縮・検知機能を有する集積化化学センサシステムの創成に関する検討を行った。そこで、大きな比表面積を有する酸化亜鉛ナノワイヤアレイを基板上の特定一に空間選択的に成長させる手法を開発し、加熱機構と組み合わせることで分子フィルタおよび濃縮部として機能させる手法を開発した。バイオマーカーとして知られる揮発性有機化合物(低分子アルコール類)を用いて本機構の機能検証を行い、低温下での分子吸着後に昇温による分子脱離を行うことで、空間内に存在する微量の揮発性有機化合物を濃縮可能であることを実証した。さらに、本濃縮部からの脱離温度は、ナノワイヤと吸着分子との相互作用の強さを反映し、化学種によって異なる値を示した。本現象を利用することで、脱離時の温度変調により、本濃縮システムが分子フィルタとして作用しうることを見出した。この分子フィルタ・濃縮機構を抵抗変化型化学センサによる検知機構と組み合わせて集積化分子認識センサシステムを作製し、分子の濃縮および検知を逐次的に行うことで、環境中の揮発性有機化合物をセンシングすることに成功した。さらに、生体ガスセンシングへの適用性を実証するために、ガスクロマトグラフィを用いて生体ガスデータの収集を行い、バイオマーカー分子評価を行った。機械学習を用いた解析の結果、生体状態を追跡するために検知すべき分子群を見出すことが可能となった。これは、我々が提案するセンサシステムが、異なる時間軸で多成分分子群のセンシングを行うことで分子識別機能の劇的な改善が期待できることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究項目のうち、空間選択的な無機ナノ材料合成技術の開発については、リソグラフィ技術と水熱合成によるボトムアップ的な金属酸化物ナノワイヤ成長とを組み合わせることで、酸化亜鉛ナノワイヤアレイをセンサ基板上の特定空間位置に成長可能なことをこれまでに見出しており、当初の計画通りの結果が得られている。さらに、得られたナノ構造体の分子濃縮機構の機能検証については、室温下での揮発性有機化合物の分子吸着後に昇温による分子脱離によって濃縮可能であることを実証しており、当初の計画通りの結果が得られている。さらに、この際にナノワイヤと吸着分子との相互作用の強さを反映して脱離温度が変化することを利用して、分子フィルタとして機能しうることを追加で見出している。集積化分子認識センサシステムの作製についても、上述した分子フィルタ・濃縮機構を抵抗変化型化学センサの前方に配置したセンサシステムの作製を行い、実際にフローシステムを用いたアルコール分子濃縮の検討から、本研究の主目的である分子フィルター機能・分子濃縮機能・センサ機能を併せ持つ集積化学センサシステムの動作が実証されている。ガスクロマトグラフィを用いた生体ガスデータの収集と機械学習解析の結果は、これらの低分子化合物が生体状態追跡において有用であることを示すものであり、本システムを用いた生体状態追跡が可能となることを示唆する結果が得られている。以上のように、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまでに、無機材料合成アプローチによって、小型基板上に分子フィルター機能・分子濃縮機能・センサ機能を併せ持つ集積化学センサシステムを創成し、その濃縮機構の動作実証に成功している。本研究を今後推進するために、本システムの長期動作安定性・耐熱堅牢性についての実証を次に行う。本研究で開発したセンサシステムは、固体表面-分子間の相互作用に基づく時空間分子輸送制御を動作原理としている点で濃縮部位である金属酸化物ナノ構造体の表面状態が分子識別・濃縮機能においてきわめて重要であると考えられることから、本表面構造を長期間にわたって維持するための材料開発を行う。加熱下における加速試験や繰り返し測定に対する耐久試験を行うことで、これらの特性を評価することが可能である。さらに、生体ガスセンシングにおいては、特定のバイオマーカー分子の検出だけでなく、複数のバイオマーカー分子を同時に検出し、経時的な変化を監視することの必要性がこれまでの検討から明らかとなっている。複数のセンサを組み合わせたシステムの開発や、機械学習アルゴリズムの改善によって、本課題の加速推進を図る。このような材料・デバイス・アルゴリズムそれぞれの改善によってシステムを最適化することで、実サンプル計測が可能な集積化化学センサシステムの開発へと応用する。
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