研究課題/領域番号 |
22KF0088
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補助金の研究課題番号 |
22F22010 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸川 知雄 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (40334263)
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研究分担者 |
LI YAJIAO 東京大学, 社会科学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 中国 / 女性 / 民間金融 / 被負債 / シャドーバンキング / 被負債女性 / メゾ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
「女性の被負債問題」とは、夫が民間金融組織等から借りたお金を返済できなくなり、行方不明になると、妻が負債を肩代わりさせられることである。中国においてリーマンショック以降、個人向け金融が活発になり、2014年から、「『婚姻法』解釈(二)」24条の適用による夫婦共同債務トラブルが急増した。本研究は、高度成長から中成長に入った中国の中で、被負債女性の事例をメゾ・レベルの視点を入れながら分析し、なぜ24条の適用によって夫の債務に巻き込まれる女性が多かったかを究明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、高度成長を終えた中国の被負債女性たちの事例を通して、中国経済の金融化によるジェンダー化された収奪のプロセスと特徴を描き出した。特に、女性が民間金融の共同借り手にさせられやすい理由を明らかにした。 フォーマル金融の民営企業への差別化、性別職業隔離によって、民間金融の借り手にジェンダー非対称性をもたらした。民間金融の業者は、借り手・男性が返済不能になることを予見し、24条に基づいてあらかじめ借り手の妻――経済的独立な女性――の安定な仕事、不動産、収入を目当てにしていた。24条のもとで、夫婦それぞれの資産の保有が夫婦共同体の資産と捉えられるので、男性への包摂はさらに男性の妻に対する過剰包摂を促した。つまり、男性が包摂されると、24条のような家族主義の法律は女性に不利に働きかけた。 さらに、民間金融は、最高人民法院の民間貸借に対する宥和的な規定を利用し、高い金利を手に入れる。民間金融組織は女性側を24条で起訴する時、法人ではなく、自然人を偽装し、借金返済を請求する。こうして、民間金融組織は、人民法院の判決を通して女性側から合法的に金利と元金をとることができた。女性の資産と収入が奪われた。 2018年以降、金融危機の発生を回避するために、中国当局は債務削減や非合法融資取り締まりを行った。そして、24条公益グループによる法改正運動によって24条の廃止も果たされた。つまり、中国型の過剰包摂(中産階級の女性)の法的措置が外され、デレバレッジができた。24条の廃止はデレバレッジの法改正と言える。しかし、フォーマル金融の民営企業への差別化、性別職業隔離はまだ改善されていなかったため、民間金融の借り手のジェンダー非対称性をもたらす可能性が残されたままである。24条が削除されたにもかかわらず、民法典の規定によって、家庭共同性は、生活範囲から経営範囲まで拡大された。
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