研究課題/領域番号 |
22KF0168
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補助金の研究課題番号 |
22F22328 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳 哲文 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (60467404)
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研究分担者 |
ESCRIVA MANAS ALBERT 名古屋大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
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キーワード | 原始ブラックホール |
研究開始時の研究の概要 |
原始ブラックホール(PBH)は暗黒物質の候補としてや,重力波によって観測されたブラックホール連星の起源として近年非常に注目されている.それらの可能性を観測的に調べるためには,PBHの量や統計性,典型的なスピンの大きさなどの理論的見積もりが不可欠であるが,PBHは非線形な重力崩壊過程を経て形成されるため,数値シミュレーションによる解析が欠かせない.それゆえPBHの数値シミュレーションは今後重要性が増す注目度の高い課題である.本研究では様々な状況におけるPBH形成の精密な解析を行う.本研究の業績は全てのPBH研究を下支えする貴重で重要な基礎的研究業績となることが期待される.
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研究実績の概要 |
観測的に有意義な量の原始ブラックホールを予言するインフレーションモデルとして,インフラトンポテンシャルの傾きが非常に緩やかなプラトー領域を持つモデルが盛んに研究されている.このような場合,或いはインフレーション中にインフラトンがポテンシャルの極小点を通り過ぎるような場合には,量子揺らぎによるインフラトンの後退確率が顕著になり,これに伴って大きな振幅の揺らぎが生じる確率が高くなることが知られている.一方,このようなモデルが原始ブラックホール形成に与える影響について数値的な解析を含めた議論はなされて来なかった.本研究ではインフラトン場のダイナミクスを数値的に解析することによって,原始ブラックホール形成過程が,通常の形成過程と,一部が偽真空領域にとらわれることによって生じるバブル形成による過程,二つに分けられることを示した.また,揺らぎの非ガウス性が比較的大きくなるようなポテンシャルの場合にはバブル形成による原始ブラックホール形成が主な原始ブラックホール形成チャネルとなることを示した.また,このバブル形成による原始ブラックホール形成チャネルについては,II型揺らぎと呼ばれる特徴的な初期揺らぎの性質を持っており,II型原始ブラックホール形成と深く関係することを示した. 一方,上述の研究で用いられている原始ブラックホール形成の解析的指標について,その精度をより一般的な状況で検証する研究を行い,結果として,複数の特徴的スケールが混じっているような状況についても精度よく原始ブラックホール形成の成否を判定できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度初めに予定していたII型原始ブラックホール形成についての研究はすでに論文執筆を終え,審査レポートを受け取った段階であり,近々学術誌に掲載される予定である.今年度についてはそれにつながる非ガウス性を伴うインフレーションモデルを背景とした原始ブラックホール形成についての研究を開始した.つまり,II型原始ブラックホール形成が顕著となる非ガウス性を伴うインフレーションモデルについて,原始ブラックホール形成のシミュレーション結果が得られつつあり,今年度中に成果として発表できる見通しである.また,事業計画で予定していた非球対称原始ブラックホール形成シミュレーションについて,状態方程式を変えた場合の研究課題について取り組み始めており,結果が出始めていることから,これらについても今年度中に成果として発表できる見通しである.このように,複数の研究計画について順調に課題が遂行されており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
輻射優勢期に比べて柔らかい状態方程式や,物質優勢期における原始ブラックホール形成では非球対称性の影響が大きくなると考えられている.今後このような場合について,非球対称原始ブラックホール形成のシミュレーションを系統的に行い,非球対称性の影響を精査するとともに,非球対称重力崩壊に伴う潮汐トルクの影響でどのくらいの角運動量が期待できるかを系統的に探る. Qボールなどのソリトン天体や位相欠陥の重力崩壊に伴う原始ブラックホール形成についても同様に非球対称性の影響が重要になる可能性があり,適宜得られた結果を用いるか,或いは新たにそれらに特化した数値計算をすることで定性的な振る舞いの違い,類似性を明らかにする. それまでに得られた数値シミュレーションによる結果をまとめ,観測に対する示唆を系統的に与えることで,モデルの検証方法を提案する.特に原始ブラックホールに対する観測的制限と相補的な重力波観測を用いた観測的検証方法に注目し研究を進める.
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