研究課題/領域番号 |
22KF0218
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補助金の研究課題番号 |
22F22343 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 理学研究科, 教授 (70552652)
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研究分担者 |
KOSASANG SORACHA 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2024年度: 100千円 (直接経費: 100千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | イオン伝導 / 金属-有機構造体 / ガラス / 二酸化炭素還元 |
研究開始時の研究の概要 |
人体を構成する細胞の膜には様々なイオンの膜内外の濃度を調整するため、選択的かつ異方的なイオン輸送の機能が存在する。その機能に触発され、本研究ではイオンを一方向に輸送できる固体物質の合成を目標とする。固体でイオンを一方向に輸送(整流性と言う)するには、イオンが流れる勾配を固体中で作り出すことが必要である。そのため、配位高分子と呼ばれる金属と分子が配位結合で連結されたガラス性物質を利用する。配位高分子ガラスは様々なイオンを伝導し、かつ液体相やガラス相を利用することで固体中におけるイオン輸送の勾配を作ることが期待できる。固体中でイオン伝導の整流性を制御できると、エネルギー創出に貢献する材料となる。
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研究実績の概要 |
本研究で目的とするヘテロ界面構築およびイオン・電子の流れの制御を試みるにあたり、プルシアンブルー類似体(Prusian Blue Analogue, PBA)ガラスおよびZn2+とイミダゾール、リン酸からなるガラスの利用を試みた。PBAガラスについては、構造が有する不飽和金属サイトの形成による光触媒能の検討を通し、界面でのイオン、電子の移動について検討を行った。機械的ガラス化によってCoFeからなるPBAガラスを作製した。X線回折および示差走査熱量測定によって均一なガラス相に変化していることを確認した。調製したガラスはアセトニトリル、水、エタノールなど、さまざまな溶媒に対して安定であることを確認した後、ガラスの成形加工性を利用し光触媒セルへと組み込み、光触媒反応によってCO2からCOとH2への変換が促進されることを確認した。界面構築により、PBA結晶と比較してCO選択性が約10%向上していることが確認された。このPBAガラスはアセトニトリル/水混合溶液中で6時間の光CO2還元を行った後も安定であった。一方Zn2+-イミダゾールリン酸塩ガラスについては、160℃で結晶融解することを利用し、鉄ポルフィリン錯体をドープ、分散させたのち、ITO基板にドクターブレードを利用して塗布し、膜作成を行った。これを利用して電気化学セルを作成し、同様に光触媒評価を行ったところCO2からギ酸を高効率、高選択的に生成することを確認した。CO2はガラスの表面だけではなくある程度のガラス内部まで侵入し、鉄ポルフィリン触媒と良好なヘテロ界面を構築していることによる触媒活性と捉えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は配位高分子ガラスを利用したヘテロ界面の構築および電荷の整流性の確認・制御である。これまでの研究によって、様々な配位高分子ガラスと異なる基板(酸化物やカーボン材料)との緻密な界面構築が可能であることを確認している。また界面形成の手法においても、メルトクエンチや機械的プロセスといった複数のアプローチを見出しており、汎用的な技術を蓄積している。また電気化学・光化学的触媒検討を通し、界面での良好な電荷移動を確認しており、ガラスを利用する有用性も確認している。次年度に実施する整流性の発現において、十分な基盤技術を得られている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で進めた配位高分子ガラス同士の界面構築、あるいは配位高分子ガラスと他の無機基板(酸化物、炭化物)の手法を拡張するとともに、得られるヘテロ界面の構造解析を顕微鏡や共焦点分光測定を通して実施する。またこれまで2種類の物質界面に焦点を当ててきたが、次年度は三相界面の構築と利用など、より複雑な階層構造の構築を進めてゆく。また電荷(イオン)の整流性の発現においては各種電気化学的評価を併用して定量的な理解を進めてゆく。具体的な検討物質としては、初年度進めたプルシアンブルー誘導体、亜鉛リン酸イミダゾールに加え、それらの構成金属イオンを変更した誘導体や、異なるアゾール誘導体からなる配位高分子を利用してゆく。基本となる骨格を大きく変化させることなく誘導体で界面を作ってゆくことで、ヘテロ構造体におけるポテンシャルの制御を試みる。
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