研究課題/領域番号 |
22KF0223
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補助金の研究課題番号 |
22F22392 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 公人 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293921)
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研究分担者 |
KADER MOHAMMAD 京都大学, 農学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2024年度: 100千円 (直接経費: 100千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2022年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 畑地灌漑 / マルチ / 水の安定同位体比 / 蒸発 / 凝結 / 土壌水分動態 / 土壌温度 / 酸素・水素安定同位体比 |
研究開始時の研究の概要 |
畑地農業におけるマルチングは,土壌蒸発量の制御が可能であるため,点滴灌漑などのマイクロ灌漑技術と組み合わせることによって,節水型灌漑を行うことができる.また,土壌温度環境を適切に制御できる可能性もある.したがって,マルチングは農業における気候変動に対する適応策として重要で有効なツールとなりうる.マルチ有りの圃場では,土壌表面とビニールマルチ表面間での水蒸気と液状水の相変化が生じることが特徴的である. 本研究では,この現象の解明のために,土壌水分・地温観測に加えて,蒸発・凝結過程で同位体分別により値が変化する水の酸素・水素安定同位体比を計測し,相変化を組み込んだ土壌水分・熱移動モデルを構築する.
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研究実績の概要 |
畑地農業におけるマルチングは蒸発抑制効果を有し,点滴灌漑などのマイクロ灌漑技術と組み合わせることによって節水灌漑を可能にする.また,地温環境を変化させることも可能である.近年の気温上昇や渇水の頻発化などの気候変動による農業への悪影響に対する適応策として有効なツールとなり得る.マルチングによって土壌中の水環境や熱環境を適切に管理するためには,マルチ敷設下での土壌中の水・熱移動現象をモデル化することが必要である. 現地圃場では,土壌表面とマルチの間には隙間があり,マルチの内側に結露水が見られることから,水蒸気と液状水の相変化が生じている.こうした蒸発・凝結過程の詳細を明らかにし,これを反映した適切なモデル化における設定ができれば,より精度の高い土壌水分・地温予測ができると期待される. 本研究では,マルチを敷設した土壌カラム実験を行い,土壌中の水分・温度環境の観測,蒸発・凝結過程で値が変化する水の酸素,水素安定同位体比の測定を土壌水,結露水,灌漑水,大気について行った.その結果から,蒸発・凝結過程の実態を考察するとともに,安定同位体比が蒸発・凝結過程の定量化に利用できるかどうかを検討した. その結果,土壌水,結露水,灌漑水のδダイアグラム(酸素安定同位体比と水素安定同位体比の関係)から,土壌表面とマルチ間での蒸発・凝結および結露水の発生が深さ5cmの土壌水のδダイアグラムの傾きを低下させていることが示唆された.つまり,マルチ敷設下の土壌内部と表層での水の相変化が生じ,蒸発・凝結の程度が水の安定同位体比の特徴によって定量化できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたマルチを配置した土壌カラムを用いた実験を実施して,土壌水分量,温度,酸素・水素安定同位体比のデータの収集と解析を行うことができた.結露水のサンプリングが困難であったり,土壌が乾燥している場合の土壌水のサンプリングができなかったことがあったため,2024年度に追加的な補助実験を実施してこれを補う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
マルチが敷設された土壌中の水・熱移動現象をモデル化するために,マルチと土壌表層の間の蒸発・凝結過程の組み込みを行う.このために,酸素・水素安定同位体比のδダイアグラムの傾きから蒸発・凝縮過程を定量化するモデルを構築する.従来の設定で行われる地表面境界条件での水のフラックスをゼロにする方法の妥当性を検証する. また,昨年度の実験においては,結露水や土壌水のサンプリング回数が少なかったことが反省点としてあるため,土壌表層に焦点を当てたカラム実験を追加的に実施する.これによって,土壌表面とマルチの間の蒸発・凝結過程の実態をより明確にして,モデルへの組み込みの参考とする.
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