研究課題/領域番号 |
22KF0306
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補助金の研究課題番号 |
22F22026 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 (2023) 九州大学 (2022) |
研究代表者 |
黄 善彬 (2023) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (30907019)
安田 琢麿 (2022) 九州大学, 高等研究院, 教授 (00401175)
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研究分担者 |
HWANG SUNBIN 九州大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 熱電変換素子 / ドーピング / イオンゲル / 温度分布センサー / 有機半導体 / 熱電変換 / 状態密度増幅 |
研究開始時の研究の概要 |
熱電変換素子は身の回りの廃熱から直接電力を生み出せる最も汎用性の高い分散型発電素子である。特に有機熱電素子は軽量・柔軟性及び塗布プロセスによる製造コスト削減が可能であるため無電源・無線センサーネットワークやモバイル機器の補助電源に至るまで様々なエネルギーアプリケーションの開発が期待されている。本研究では、有機熱電材料の状態密度を局所的に高めることで有機半導体のバンド構造を制御し、高い電気伝導率を維持しながらSeebeck係数を増幅させ熱電変換効率を高められる汎用性の高い新しい戦略の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、ドーパントの種類に関わらず半導体の本質的な熱電特性を調べられる「誘電率の高いイオン液体による酸化・還元ドーピングを利用した革新的な熱電変換素子プラットフォーム」を構築した。本研究で開発したイオンゲル誘電層を用いた両極性有機熱電変換素子評価プラットフォームは、真性有機半導体のフェルミ準位を電気化学的に大きく変調し熱電変換特性を調べることができる。また、イオン液体の濃度を調整したイオンゲル誘電層を利用しているためドーピング状態を意図的に長時間保持することができ、コスト削減に利点がある革新的な有機両極性熱電変換素子を実現できる。これらの研究結果は論文としてまとめられ投稿準備中である。そして、今までの基礎研究で得られた知識を元に社会実装に向けた研究を進めた。その一環として、熱電変換素子を活用した二次元温度分布センサーの実現に向けて研究・開発を取り込み、半導体素子の放熱設計に役立つ技術の確立を目指した。具体的には、交差点スウィッチング温度センサー配列を導入することでリーク電流による測定誤差を抑えられる新たな温度分布測定用センサーモジュール設計し、提案した。さらにセンサー自体が熱抵抗源にならないようなセンサーの熱設計やプロセス性向上を目指すため、有限要素法基盤シミュレーションを戦略的に取り込んでセンサーモジュールの構造的・熱的・電気的特性を検討した。これらのまとめられた研究結果は、学術会議(応用物理学会、2023年09月)で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機熱電材料の最適な熱電特性を引き出すためには有機半導体に適切なドーパントを用いて化学的なドーピングを行う必要がある。本研究ではドーパント材料の種類に関わらず有機半導体の本質的な熱電特性を調べるために誘電率の高いイオンゲル誘電層を利用した革新的な素子評価プラットフォームを構築した。実際の測定では、セルの対角方位に位置する四つ電極からは温度差、熱起電力、四端子電気伝導率の測定を順次的に行うことができ、電界効果トランジスタのようにゲートバイアス電圧を印可した時の特性を網羅的に調べられる仕組みとなっている。さらに、透明なガラス基板と透明電極を用いたため半導体がイオン液体によって酸化・還元ドーピングされる際のバンド幅の変化など光学特性変化を組み合わせて調べることもできる。また、イオン液体の濃度を調整したイオンゲル誘電層を利用しているためドーピング状態を意図的に長時間保持することができ、コア半導体の状態密度を制御・維持することもできる。このように有機熱電素子評価に特化した高性能測定・自動分析システムの開発から、ドーパント材料の種類に関わらず有機半導体の本質的な熱電特性を網羅的に調べられる革新的な素子プラットフォームも構築することに成功し、成果を論文投稿準備を進め、関連成果も学術発表を行ったため、概ね研究計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、今までの基礎研究で得られた知識を元に社会実装に向けた研究を進める。従来の温度センサーを用いて多数のチャネルを持つ温度分布センサーモジュールを作る場合は、複雑な構造と多数の配線数が必要である。さらに測定点と他の接点の間の電気的短絡による漏れ電流がアナログセンサーの出力線形性を損ねるため、従来では1次元温度センサー配列までしか実現できなかった。本研究で提案した交差点スウィッチング温度センサー配列は、漏れ電流による測定誤差を抑えられる新たなXY温度分布測定用センサー配列である。この2次元温度分布センサーを実現するために今後は、今年度まで会得した基礎知識と自動測定システムを流用することで、①センサー駆動に使われる論理素子評価システム、②センサー部の熱電対として使われる熱電変換材料の評価システム、そして③センサーモジュールの駆動システムと④センサーモジュールデータの取得システムの基盤技術確保に移る。そして、本格的にセンサーモジュールを作成する前に試行錯誤を減らすため、モジュールの等価回路設計や構造設計を行い最適化を行う。その際には有限要素法基盤のシミュレーションを行い、センサーの構造的・熱的・電気的な挙動を網羅的に調べる予定である。
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