研究課題/領域番号 |
22KF0308
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補助金の研究課題番号 |
22F22352 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久場 隆広 九州大学, 工学研究院, 教授 (60284527)
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研究分担者 |
KHANDAKER SHAHJALAL 九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2022年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
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キーワード | セシウム / 化学賦活 / プラズマ処理 / 熱アルカリ処理 / 炭化物 / 汚泥溶融スラグ / LDH / 吸着 |
研究開始時の研究の概要 |
竹炭や木炭といった炭化物や汚泥溶融スラグ、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) とプルシアンブルーなどを複合化した高効率で、低価格、環境に優しい複合吸着剤を開発し、実験室規模およびベンチスケールレベルでその吸着能力や吸着メカニズムの解明を行うとともに、特異的セシウム吸着能の向上のための賦活化法の検証を行う。革新的な複合材料による福島第一原子力発電所廃水および水環境中からの放射性セシウム除去を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、竹炭や木炭といった炭化物や汚泥溶融スラグ、さらには、プルシアンブルーなどを複合化した高効率で、低価格、環境に優しい複合吸着剤を開発し、実験室規模でその吸着能力や吸着メカニズムの解明を行うとともに、特異的セシウム吸着能の向上のための賦活化法の検証を行う。革新的な複合材料による福島第一原子力発電所廃水および水環境中からの放射性セシウム除去を目指している。 初年度は、当研究グループの過去のデータを精査し、また、文献調査を中心に、竹炭や木炭の炭化条件を検討した。硝酸熱水処理やプラズマ処理による賦活化法を検討し、Cs除去率との関係を明らかにした。また、汚泥溶融スラグまたは合成ゼオライト、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) とプルシアンブルーなどを複合化した吸着剤についても検討した。 さらに、高圧用反応分解容器内での汚泥溶融スラグの熱アルカリ処理条件を明らかにし、Cs吸着能およびCs選択性とその処理条件との関係を実験的に明らかにした。国内5カ所の汚泥溶融スラグについて実験的に検討し、また、スラグ上に形成されたゼオライト種の同定にはX線回折法 (XRD) および蛍光X線分析装置 (XRF) を用いた。結論としては、珪藻土と比較し、汚泥溶融スラグでは純度が低く、ケイ素の含有率が低いことから、Cs吸着能を高めることは出来ても、ゼオライトの一種であるモルデナイトといったCs選択性の高い成分をスラグ上に合成することが難しいことが分かった。 本年度 (基金化1年目) は、熱アルカリ処理の時間ごとに、形成されるゼオライト種が変化することを明らかにし、Cs選択性の高い成分をスラグ上に合成できる可能性が示唆された。さらに、LDHにヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム (K4Fe(CN)6) を複合化した吸着剤を合成し、Cs選択性の検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究期間は3年間である。その当初の研究目的は、竹炭や木炭といった炭化物や汚泥溶融スラグ、さらには、プルシアンブルーなどを複合化した高効率で、低価格、環境に優しい複合吸着剤を開発し、実験室規模でその吸着能力や吸着メカニズムの解明を行うとともに、特異的セシウム吸着能の向上のための賦活化法の検証を行うことである。第1年度において、以下の成果が得られた。おおむね順調に進展している。 文献調査や当研究グループでの過去の成果から、竹炭や木炭の炭化条件、さらに、硝酸熱水処理やプラズマ処理による賦活化法があり、Cs除去率と処理の関係を整理できた。また、汚泥溶融スラグまたは合成ゼオライト、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) とプルシアンブルーなどを複合化した新規吸着剤のCs吸着能を議論した。 さらに、高圧用反応分解容器内での汚泥溶融スラグの熱アルカリ処理条件を明らかにし、Cs吸着能およびCs選択性とその処理条件との関係を実験的に明らかにした。結論としては、珪藻土と比較し、汚泥溶融スラグでは純度が低く、ケイ素の含有率が低いことから、Cs吸着能を高めることは出来ても、ゼオライトの一種であるモルデナイトといったCs選択性の高い成分をスラグ上に合成することが難しいことが分かった。一方、熱アルカリ処理の時間ごとに、形成されるゼオライト種が変化することを明らかにし、Cs選択性の高い成分をスラグ上に合成できる可能性が示唆された。 さらに、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) をベースとした複合材料の検討を開始した。LDHにヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム (K4Fe(CN)6) を複合化した吸着剤を合成し、Cs吸着能ならびにCs選択性の検討を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究『減容性・バックアップ性を備えたCs吸着材のための粒状体プラズマ処理装置の開発』の研究期間は2年間である。その当初の研究目的は、(1)プラズマ賦活化によるセシウム吸着能の改善とそのための装置開発、 (2)セシウム吸着剤の吸着能維持性とバックアップ性能の評価である。2年間の研究期間において得られた成果を基に、以下の様に、今後、研究を推進する。 (1)大気圧非平衡プラズマ処理法を市販の活性炭に適用したところ、熱硝酸処理といった化学賦活化法と比較すると、その比Cs吸着量は1/5~1/10程度劣ることを確認した。大気圧非平衡プラズマ処理の際の条件 (処理時間、電圧、酸素ガス流量など) をパラメータとし、その比Cs吸着量を予測可能な重回帰式の作成を行った。同様な解析を行うことで現有の装置を如何に改良すべきかを提示し、粒状体プラズマ処理装置の開発につなげる。 (2)大気条件下で賦活化活性炭を保持し、経時的にその吸着能の変化を評価した。1年間にわたり検証したところ、吸着能の低下はあまりなく、一方、再度のプラズマ賦活化により、むしろ、時間の経過ともに、Cs吸着能が向上するという興味深い結果が得られた。ドライ状態で、少なくとも1年以上、吸着剤の性能が維持し得 (吸着能維持性)、また、そのバックアップ性の高さが明らかになった。より長期の吸着能維持性およびバックアップ性を評価し、同時に、化学賦活化炭化物よりも劣る吸着能を補うための、プラズマ賦活化活性炭の必要量の試算やコスト計算を行う。 (3)2年間の研究で、大気圧非平衡プラズマ装置について、電極および絶縁材の種類が及ぼす影響の検討の必要性が分かった。銅板電極から、例えば、電子射出量の高いと思われるニッケル電極などに替えて検討したい。
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