研究課題/領域番号 |
22KF0324
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補助金の研究課題番号 |
22F22308 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
前田 弘毅 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90374701)
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研究分担者 |
MACFARLANE ALEXANDRA 東京都立大学, 人文科学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2024年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
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キーワード | コーカサス / ユーラシア / 写本 / アレクサンドロス物語 / アラビアン・ナイト / ユーラシア文学 / アルメニア / ジョージア / アラビアンナイト / アレキサンダーロマンス / 銅の街 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アジアの少数派キリスト教徒がアジアとヨーロッパの文化交流に果たした役割に焦点をあてながら、千一夜物語の一部として知られる『真鍮の街』のアルメニア語およびジョージア(グルジア)語写本の比較考察を試みる。特にユーラシア空間における民族を超えた日常的な文学接触と変容を取り上げ、文学研究と歴史研究を架橋する。近年も民族紛争が絶えない地域において、ナショナリズムとソ連期の民族政策による分断以前の民族間交流の実相を明らかにする作業として、本研究はきわめて重要な今日的意義を有している。
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研究実績の概要 |
研究2年目は、中央ユーラシア地域に関する大部な文化事典への編集および11項目のジョージア/グルジア関連原稿執筆やコーカサス研究で権威ある英文雑誌への論文の寄稿など大きな成果を挙げることができた。 前者についてはコーカサスの歴史と文学について最新の研究を参照した成果である。後者についても、アラビアン・ナイトの一部としても知られる真鍮の都に挿入されたアレクサンドロス・ロマンスのテキストを読み解くことで中世アルメニア文学の汎ユーラシア性を実証しており、コーカサス文学研究と歴史研究の視点を複合的に組み合わせる本科研の重要な研究成果である。 このほか、境界をこえる写本たちと題する研究集会では、ジョージアにおいてジョージア文字で記されたアルメニア語写本についてそれぞれ報告とコメントを行った。これもユーラシアという大きなマクロコスモスにおける様々なミクロコスモスの交差するコーカサスの複雑性を象徴する共同研究の成果である。この研究集会では、さらに、アルメニア人やジョージア人の研究者からも様々な示唆を得ることができた。また、中世から近世、近代に至るジョージア/グルジアやアルメニアの文学伝統について、新たな知見を共有した。 今後もジョージア語とアルメニア語、さらには周辺の大きな文明圏の言語によって記された様々な歴史的文学について共同ないし個別に研究を進めていく。 また、日本学術振興会の招きにより、山梨県の高校で講演を行うなど、研究成果の一般社会への還元にも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究2年目にはそれぞれの研究を進める一方で、アルメニア人研究者を迎えた国際的な研究集会に参加して、報告とコメントを行うなど、共同の研究成果を得ることができた。文学と歴史研究というディシプリンの違いを乗り越えて、コーカサス地域およびジョージア/グルジア、アルメニア語世界の汎ユーラシア性について、論じ会う機会を多く得た。このように本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究の残された期間は半年であるが、それぞれの研究成果の確保に努めると同時に、相互の研究を参照して今後の共同研究につながるよう議論を重ねていく。すでにカザフスタンやベルギーにおける国際学会へのエントリーや、ジョージア・アルメニアにおける史料調査の予定も立っており、共同研究によって発展した文学・歴史研究の乗り入れによるコーカサス地域の汎ユーラシア性について、さらに国内外の研究者との将来の共同研究の進展を促すような研究成果の公刊に努める。日本国内の研究コミュニティとの接続についても一層留意して、日本内外における複合的なコーカサス研究のさきがけとなるべく、日本語だけではなく、英文での国際的且つ学際的な研究成果の還元に共同で努めていく。また、共同研究終了後も継続して議論を続けていくような枠組みの整備もまた構想していく必要がある。
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