研究課題/領域番号 |
22KF0407
|
補助金の研究課題番号 |
22F22350 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60451788)
|
研究分担者 |
CHANG YIH-REN 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
|
キーワード | 二次元材料 / ナノカーボン材料 / 光物性 / ナノ物性 / ナノカーボン物理 |
研究開始時の研究の概要 |
単層カーボンナノチューブは、その一次元性によりクーロン相互作用が強く、特異な励起子物性を示す。一方で、二次元物質のヘテロ接合では層間励起子など新奇光物性が発現することが知られている。これら低次元物質は、それぞれ単独での研究は多く実施されてきたが、異なる次元性の物質を組み合わせたヘテロ構造の研究例は少ない。そこで、本研究ではカーボンナノチューブと二次元物質をファンデルワールス力により融合した異次元ヘテロ構造を形成し、励起子物性を明らかにすることを目指すほか、その応用可能性を探る。
|
研究実績の概要 |
本研究の初年度である2022年度は、11月末の研究開始からの約4ヶ月間でカーボンナノチューブと二次元物質をファンデルワールス力により融合した異次元ヘテロ構造を形成する手法の開発に着手した。実績もある架橋カーボンナノチューブ上への二次元物質転写によるヘテロ構造作製から取り組みを開始した。 まず、架橋カーボンナノチューブを準備した。酸化膜付きシリコン基板を用いて、電子線描画やドライエッチングなどのクリーンルームプロセスにより架橋させるための溝を加工し、二回目の電子線描画で触媒領域をパターニングした後、ダイシングにより測定に適したサイズに切り分けてあるチップを用いた。チップへ触媒を塗布してリフトオフを行い、化学気相成長によりカーボンナノチューブを合成し、架橋カーボンナノチューブを得た。 次に、得られた架橋カーボンナノチューブに対して、あらかじめフォトルミネッセンス顕微分光によりカーボンナノチューブのカイラリティや位置を特定するなど事前評価を実施した。自動三次元ステージ上に試料を設置し、基板に加工した溝部分をレーザーで走査し、単層カーボンナノチューブによる発光を検出することで位置を確認した。励起光源としてはチタンサファイアレーザーを用い、分光器とInGaAs光ダイオードアレイを利用してスペクトルを取得した。スペクトルの励起波長依存性を測定することで励起分光を行い、吸収共鳴波長と発光波長の組み合わせからカイラリティを同定した。 この試料上にスタンプ法により二次元物質を転写し、ヘテロ構造作製を試みた。フォトルミネッセンス顕微分光や励起分光を実施して転写前と比較し、作製したヘテロ構造の光物性を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではカーボンナノチューブと二次元物質をファンデルワールス力により融合した異次元ヘテロ構造を形成し、励起子物性を明らかにすることを目指すほか、その応用可能性を探ることを目的としている。 今年度は、11月の研究開始からの4か月ほどで、カーボンナノチューブの化学気相成長法を習得しているほか、研究室自作の装置とソフトウェアを用いてフォトルミネッセンス顕微分光や励起分光を実施し、二次元物質の転写による試料作製に着手している。現在転写条件の検討を進めている状況であり、おおむね順調に研究が進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きカーボンナノチューブと二次元物質をファンデルワールス力により融合した異次元ヘテロ構造を形成する手法の開発に取り組み、また、一次元/二次元ヘテロ構造における層間励起子の観測あるいは零次元/一次元ヘテロ構造における高純度な単一光子発生に着手する。 まず、転写による二次元物質とカーボンナノチューブのヘテロ構造作製条件や、二次元物質の架橋カーボンナノチューブ試料上への直接成長を検討する。直接成長する二次元物質については、走査電子顕微鏡により形状を評価し、零次元の粒子や二次元のフレークが形成する条件を見出すため、成長速度などの諸条件の調整に取り組む。 次に、得られた異次元ヘテロ構造に合わせた評価を実施する。二次元物質よりバンドギャップの大きいナノチューブとのヘテロ接合では層間励起子の形成が期待されるため、有望なカイラリティに着目してフォトルミネッセンス顕微分光により層間励起子の発光観測を試みる。層間励起子と思わしき発光の観測に成功した場合、時間分解フォトルミネッセンス測定により励起子寿命を評価する。一方、零次元粒子状物質とのヘテロ接合が得られた場合は、ナノチューブへの励起子移動を利用して、回折限界を超えた小さな領域への局所的な励起子注入の実現が期待できる。これにより、励起子-励起子消滅による単一光子発生の高純度化が期待できるため、フォトルミネッセンス顕微分光と時間分解フォトルミネッセンス測定に加えて光子相関測定を実施する。
|