研究課題
特別研究員奨励費
DNAを鋳型としてRNAが転写され、RNAをもとに蛋白質が作られて細胞内で様々な働きをする。その際に未熟なRNAからイントロンと呼ばれる配列を除いて成熟したRNAとする過程をRNAスプライシングと呼ぶ。近年、がんにおいては、様々なスプライシングの異常が非常に重要な役割を果たしていることがわかってきた。そこで本研究では、がんで頻繁にみられるスプライシング異常に注目し、新型コロナウィルスのワクチンでも有名になった核酸医薬を用いてスプライシング異常を修正して、新しいがん治療に結び付けるための創薬開発を行う。
我々は23万例を超えるRN Aシークエンスデータを解析することにより、様々な遺伝子において、その遺伝子変異が遺伝子自体にintron retention(IR)異常を来た す変異(IRAV)が検出されることを見出した(Shiraishi Y, et al. Nat Communs. 2022)。そこで、本研究においては、IRAVを標的とする核酸医薬(ASO)を開発し て、IRAVにより誘導されたスプライシング異常を修正し、抗腫瘍効果を得ることが可能かどうかを検証することを目標としている。2022年度には、がんにおいて 高頻度にみられるIRAVに注目し、検出されたIRAVが実際にIRを誘導することを確認するために、癌細胞株にCRISPR Cas9システムを用いてIRAVをノックインした。 その結果、実際に想定するIRが誘導さ れることをRT-PCR、RNA-seqで確認することができた。さらに、IRによってフレームシフトが発生して当該蛋白質発現が低 下することや、遺伝子発現解析により標的遺伝子発現や関連するパスウェイが有意に変動することを確認した。一方、IRAVによるIRを核酸医薬により修正するた めに、Minigeneに対するsite-derected mutagenesisを用いて標的配列候補の検討を行ったところ、特に有望な配列が標的イントロン内に存在することが強く示唆 され、標的配列候補を絞りこむことに成功した。2023年度には、前年度に同定した配列に対するASOの投与により、IRAV陽性がん細胞の増殖が抑制されること、それに従い標的遺伝子に関連するパスウェイが正常状態に近づくことを確認した。そこで、各種のdrug delivery systemを搭載したASOを用いてCDXモデルにおける評価を行い、in vitroと同様の結果を得ることができた。
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Nature Communications
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Cancers
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https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/22/05/09/09452/
https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/cancer_rna/index.html