研究課題/領域番号 |
22KF0426
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補助金の研究課題番号 |
22F22777 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小川 奈々子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), グループリーダー (80359174)
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研究分担者 |
FOX CALUM 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 三畳紀 / ポルフィリン / 化合物レベル同位体 / 大量絶滅イベント / 海洋窒素循環 / 古環境復元 / 窒素同位体比 / 炭素同位体比 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、堆積岩中に極微量に含まれるクロロフィルの分子化石(ポルフィリン)の窒素安定同位体比を測定し、大量絶滅イベントとして知られる2億100万年前の三畳紀末の環境変動、特に海洋表層における窒素循環変化を明らかにする。表層海水における窒素を中心とした栄養塩動態の復元は、海洋における大量絶滅イベントの詳細を理解の鍵となることは長らく理解されていたものの、多様なポルフィリンの単離精製やその正確な位体比測定の難しさから、これまで達成されてこなかった。本研究からは急激な二酸化炭素濃度増加に生態系や環境がどう対応し回復したかについての多くの新しい情報が得られる。こうした情報は学際的にも重要性が高い。
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研究実績の概要 |
初年度の4ヶ月間は、赴任前に特別研究員が採取した試料の輸送(搬入)を行い、試料の記載および粉砕作業を行い、粉砕処理が完了した試料から順次ポルフィリンの抽出を実施した。抽出物中に含まれる各種ポルフィリンはオープンカラムを用いた予備精製を経て、受入研究者小川の研究チームが有する、分取機能付き高速液体クロマトグラフィー(FC-HPLC)を用いて単一の化合物種ごとに単離し精製したうえで、小川の開発した超微量元素分析計/同位体質量分析システムにてその安定同位体比の分析を行う。 初年度には上述の粉砕・抽出作業を行う傍ら、FC-HPLCを用いた高度な試料精製技術の習得に時間を費やした。試料として特別研究員が赴任前までの期間に英国サウザンプトン大学のJessica Whiteside教授と共同で採取済みの、英国南西部Bristol Channel Basinの露頭で得られた堆積岩(St. Audrie’s Bay site)および陸上掘削で得られた堆積物コア(Lilstock site)計80kgの輸送も順調に完了した。初年度は特徴的な相順の試料をいくつ選びだし、上述の技術習得を行いつつ、各試料に含有されるポルフィリンの種類や量に対するスクリーニング分析を実施し、試料中に含まれるポルフィリン化合物の種類や特性の概要を確認した。得られた結果から、本研究ではC32-DPEPという種類のポルフィリン化合物に着目して、今後の分析をすすめる方針をとることを決定した。 大量絶滅イベントとして知られる2億100万年前の三畳紀のポルフィリン化合物に対する詳細な研究は世界で初となる。初年度のスクリーニング分析から得られた結果等については2023年5月に日本地球惑星科学連合2023年大会に要旨投稿済みで、口頭発表として報告する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別研究員と受入研究者との間では3年にわたり何度も研究計画の打ち合わせを行い、事前準備を進めてきたことが大きい。 この結果、初年度には、赴任までの期間に特別研究員が採取した試料の粉砕と抽出の作業、分取機能付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による各種ポルフィリンの単離精製する技術の習得を行ったが、そのための試料は予め英国サウザンプトン大学のJessica Whiteside教授と共同で採取しておくことが出来た。 特に英国南西部Bristol Channel Basinの露頭で得られた堆積岩(St. Audrie’s Bay site)試料については、十分な量のポルフィリンを抽出できるよう各地点1Kg以上の大容量で採取し、日本への搬送準備も入念に行ったため、重要度の高い試料からも同位体比分析に必要なポルフィリン量(1.5-2ナノモル)を得られることは、初期スクリーニングで明らかとなった。 また、抽出に必要な実験器具や分離精製に必要な高速液体クロマトマトグラフィーは受入研究者の所属部署に現有の装置を使用したため、赴任後に遅滞なく研究を開始することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き堆積物試料中からポルフィリンの抽出を行い、オープンカラムでの初期単離、分取HPLCを用いた単一の化合物種の分離と精製をすすめる。精製のすすんだ試料から逐次、窒素安定同位体比の測定を実施する。表層海水における窒素を中心とした栄養塩の動態は、海洋における大量絶滅イベントの詳細を理解するうえで鍵となる情報であることは長らく理解されていたが、多様なポルフィリンの単離・精製および微量窒素の正確な同位体比測定の難しさのため、これまで報告例が全い。貴重な知見であることから、予察的な結果についても順次国際有機地球化学会でその成果を報告する。 現時点で抽出と精製および同位体分析はいずれも比較的順当に進んでいるため、2023年度夏にJessica Whiteside教授と共同で年代解像度を高めるための追加の試料採取を敢行し、本研究に供することを計画している。
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