研究課題
特別研究員奨励費
気候変動に伴う風倒や斜面崩壊撹乱の頻度・強度の増大による森林生態系サービスの劣化が懸念されている。多様な生態系サービスを持続的に享受するためには「供給の安定性」まで考慮して適切な森林管理策を検討する必要がある。さらに、撹乱地だけではなく残存林の管理策も合わせて検討することで、撹乱によって減少した生態系サービスの補填や、種子供給源として撹乱地の森林回復を促進できる可能性がある。本研究では、北海道厚真町を対象に、撹乱後の森林回復と残存林での森林管理を複合的にシミュレーションすることにより、風倒や斜面崩壊が増加する気候変動下で生態系サービスの安定供給を実現するための包括的な森林管理を検討する。
令和5年度は、(1)表層崩壊後の森林回復の規定要因の解明、(2)大規模表層崩壊が発生した北海道厚真町の森林景観における生態系サービス供給量と供給安定性の将来シミュレーションに取り組んだ。(1)表層崩壊後の森林回復の規定要因の解明北海道厚真町の表層崩壊地における森林の自然回復をシミュレーション評価した結果、平均斜度が小さく、撹乱レガシー(残存植生、堆積土砂)が多い斜面ほど地上部バイオマスの回復が速く、耐陰性の高い樹種が優占する種組成が形成されやすいことがわかった。(2)生態系サービス供給量と供給安定性の将来シミュレーション表層崩壊地に適用する森林再生シナリオと崩壊しなかった残存林に適用する森林管理シナリオを作成した。森林再生シナリオでは、現行の再生計画に加え、カラマツ植栽面積を変化させた5シナリオを準備した。森林管理シナリオでは、震災以前の森林管理計画に加え、人工林の自然林化面積を変化させた5シナリオを準備した。なお、森林再生シナリオと森林管理シナリオは人為介入の程度に応じて1対1対応した5つのシナリオとしてまとめた。これらのシナリオ下で2019~2118年の100年間の森林景観動態をシミュレーションした。結果から、樹種多様度指数、木材生産量、炭素収支(純生態系生産量)を算出し、それらの100年間の時間的変動を変動係数により評価した。その結果、現行の計画または植栽面積・人工林面積を減少させるシナリオにおいて、各生態系サービスの供給量と供給安定性がバランスよく発揮できることがわかった。研究期間全体を通じ、表層崩壊後の長期的な森林生態系の回復を、実測とシミュレーションの双方から評価した。また、大規模表層崩壊後の森林景観における生態系サービス供給のシナリオ分析により、崩壊地における植栽面積増加や残存林における人工林の保持は多様な生態系サービスの安定供給を妨げる可能性が示唆された。
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