研究課題/領域番号 |
22KJ0044
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補助金の研究課題番号 |
22J01742 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
濱 祐太郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特別研究員(PD) (50970571)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オートファジー / 小胞体 |
研究開始時の研究の概要 |
オートファゴソームは、扁平な形状の隔離膜が伸長し、その縁が閉じることで形成される。隔離膜の伸長の過程では、隔離膜を構成するリン脂質が小胞体から供給される。この脂質供給は、筒状の構造をしたATG2の内部をリン脂質が通る形で行われる。このとき脂質の動きは一方向性であり、逆方向へ流れれば隔離膜が伸長しないはずである。したがって、脂質輸送の方向性を規定する駆動力が必要と考えられる。しかし、その駆動力がどのように生み出されるかは不明である。本研究では、小胞体に存在するオートファジー実行タンパク質VMP1およびTMEM41Bの分子機能に注目し、脂質輸送の駆動力を生み出す機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、オートファジーに必須の小胞体関連タンパク質群の分子機能に着目し、特にこれらの脂質輸送における役割の解明を目指している。哺乳類細胞を用い、当該タンパク質群をコードする遺伝子を、選択的オートファジー非依存的なオートファジータンパク質の動態を解析可能な遺伝学的バックグラウンドに重ねて欠損させることを試みていたが、ノックアウトおよびノックダウン系はいずれも樹立できず、作製を断念した。 これを受け、単独欠損細胞を使用した解析を行う方針に転換した。当該遺伝子の欠損細胞では、特有のオートファジー関連膜構造体が蓄積することが知られているため、この構造体の膜成分の起源を解析している。その一環として、出芽酵母で小胞体を経てオートファゴソームへと転送される色素を用いた解析を発想した。しかしながら、当該色素は哺乳類細胞では小胞体を染色したものの、オートファゴソームは染色せず今回の解析に用いることができなかった。 哺乳類細胞の他に、当該遺伝子群を一揃い持つ単細胞モデル生物を導入している。まず当該遺伝子群の単独欠損細胞を作製すると、当該遺伝子群のうち、ある遺伝子の欠損細胞はオートファジー不全を示さず、哺乳類とは表現型が異なっていた。哺乳類の当該遺伝子欠損細胞にモデル生物の遺伝子を発現させても、オートファジー不全を回復しなかった。この結果から、当該遺伝子は、単細胞生物から哺乳類への生物進化の途上でオートファジー機能を獲得したことが示唆された。 このように既存の遺伝子がオートファジー機能を獲得する事例は他になく、生物進化に伴うオートファゴソーム形成メカニズムの変容を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル生物を用いた実験が本格的に始動し、哺乳類の知見を組み合わせることで進化の側面からも解析を行っている。哺乳類とモデル生物の間で表現型の異なる遺伝子について、系統解析や異種発現を組み合わせることで研究開始当初には予想していなかった発見に結び付いている。 また、哺乳類については単独欠損細胞を用いると判断したことで研究の方向性を絞り込むことができ、今後の解析で分子機能に迫る発見へ繋げられることが期待される。 以上のような哺乳類とモデル生物それぞれの強みを生かした解析に加え、進化的手法・視点を盛り込むことでユニークな成果が得られ始めているため、現在のところおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
まずモデル生物を用いた解析については、ATGタンパク質のオートファゴソーム形成部位への局在についての遺伝学的階層性の解析を行う。そのためにはまず、当該遺伝子を含む多重欠損細胞を作製する必要があるが、これは技術的な問題で実現していない。加えて、遺伝学的階層性の解析にはオートファジータンパク質の局在を可視化しければならないが、これも技術的な問題でATGタンパク質のごく一部しか可視化に成功していない。これらの技術的な問題を解消することを当面の目的とする。 哺乳類細胞を用いた解析については、当該遺伝子の単独欠損細胞に特有のオートファジー関連膜構造体について、精製を行う。これはオートファジーに関与する脂質転送タンパク質の欠損細胞で蓄積するものと局在するタンパク質が近いため、これらを並べて、免疫沈降を中心とする精製に挑戦する予定である。精製後はプロテオーム解析およびリピドーム解析を行い、当該タンパク質と脂質転送タンパク質の欠損細胞の結果を比較する解析を予定している。
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