研究課題/領域番号 |
22KJ0054
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補助金の研究課題番号 |
22J10521 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大平 修也 北海道大学, 先端生命科学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | α-defensin / Paneth細胞 / 腸内細菌叢 / 粘膜免疫 / 非感染性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
腸内細菌叢は宿主の免疫制御を介して生体恒常性の維持に寄与する。小腸上皮細胞の一系統であるPaneth細胞が分泌するα-defensinは腸内細菌叢を制御することが報告されているが、α-defensinがどの腸内細菌を選択し、どのように免疫系を制御することで健康維持に貢献するかは不明である。 本研究は、α-defensin低下モデルマウスを用いた腸内細菌叢解析、腸管粘膜免疫のマルチパラメーター解析や全身の臓器の免疫表現型および機能解析によって、α-defensinが腸内細菌叢と免疫系を介して生体恒常性を維持するメカニズムを解明する。そして、腸内環境の破綻が関与する非感染性疾患の克服に貢献する。
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研究実績の概要 |
腸内細菌叢は代謝物などを介して、宿主の自然免疫および獲得免疫を制御することで健康に貢献することが知られている。腸内細菌叢の制御因子として、外界から取り入れられる食のほかに、宿主に由来する免疫グロブリンや抗菌ペプチドなどが報告されている。小腸上皮細胞の一系統であるPaneth細胞は抗菌ペプチドα-defensinを分泌することで、病原菌を排除する自然免疫を担う。さらに、α-defensinのin vitroでの非共生菌に対する選択的殺菌活性に関する研究や、α-defensinの活性低下モデルおよび食などによるα-defensin分泌低下モデルを使用したin vivoの研究から、α-defensinが腸内細菌叢を制御することが示されてきた。しかし、α-defensinがどのような腸内細菌を選択することで、免疫をどのように制御し、宿主の健康維持に貢献するのかは未だ全く不明である。したがって本研究は、α-defensin低下モデルマウスを用いて、α-defensinを起点とした腸内細菌叢の制御による免疫を介した生体恒常性維持メカニズムを明らかにすることを目的とする。令和4年度はメタゲノム解析からα-defensinが腸内細菌叢を制御することを初めて明らかにした。さらに、腸管関連リンパ組織の組織学的および免疫学的解析から、α-defensinが腸内細菌叢を介して腸管粘膜免疫を制御することを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究全体の目的であるPaneth細胞α-defensinによる腸内細菌叢制御から免疫を介して健康維持に至るメカニズム解明のうち、令和4年度はα-defensinが腸内細菌叢をどのように制御するのかを明らかにした。α-Defensin低下モデルマウス由来の便を用いてショットガンメタゲノム解析を実施したところ、コントロールと比べて腸内細菌叢のβ多様性に有意な変動を認めた。さらに、属レベルで複数の菌に関して、2群間で占有率に差が見られた。これらのことから、α-defensinが腸内細菌叢を制御することを初めて明らかにした。 また、α-defensinによって規定される腸内細菌叢がどのように粘膜免疫を制御するのかを探索した。腸管粘膜免疫を担う腸管関連リンパ組織である腸間膜リンパ節 (MLN)、パイエル板 (PP)、小腸粘膜固有層および大腸粘膜固有層の組織学的解析および免疫細胞のフローサイトメトリー解析を実施した。すると、α-defensin低下モデルマウスでMLNの重量増加、MLN、PPおよび小腸粘膜固有層の細胞数増加とhelper T cell subsetにおける比率の変動を認めた。これらのことから、α-defensinが腸管粘膜免疫の恒常性を維持し、特にhelper T cell subsetの分化を制御することを明らかにした。さらに、無菌化したα-defensin低下モデルマウスにおけるMLNの重量が、無菌化したコントロールマウスと変わらなかったことから、α-defensinが腸内細菌叢を介して腸管粘膜免疫を制御することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、α-defensinが腸内細菌叢の機能をどのように制御するのかを明らかにするために、ショットガンメタゲノム解析による機能遺伝子の探索と、キャピラリー電気泳動-質量分析によるメタボローム解析を計画している。さらに、腸管粘膜免疫への影響に関して、腸管透過性の評価、小腸と大腸におけるサイトカインのマルチプレックス解析とRNAシーケンス解析を行い、全身性免疫への影響に関して、血清中サイトカインのマルチプレックス解析や脾臓のフローサイトメトリー解析を行う。これらにより、α-defensinが制御する腸内細菌叢が腸管粘膜免疫および全身性免疫を分子レベルでどのように制御するのかを明らかにする。加えて、α-defensinによる腸内細菌叢を介した免疫制御が健康維持にどのように寄与するのかを明らかにするために、高脂肪食誘導性Ⅱ型糖尿病モデルや化学物質誘発性大腸炎モデルをα-defensin低下マウスに適用することで非感染性疾患の感受性を評価する予定である。
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