研究課題/領域番号 |
22KJ0076
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補助金の研究課題番号 |
22J11726 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水野 歩 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 鳥類 / 目玉模様 / 眼状紋 / 忌避反応 / メタ解析 / 警告信号仮説 / カエデチョウ科 / 視覚選好 / 警告信号 |
研究開始時の研究の概要 |
蝶や蛾といった鱗翅目の翅にみられる大きな目玉模様(眼状紋)は,鳥類の忌避反応を誘起するため捕食回避機能を果たすとされる.しかし,なぜ鳥類が眼状紋を怖がるのか未だはっきりとした答えはわかっていない.古くから眼状紋が捕食者の眼に見えるため鳥類が怖がると言われる一方で(目の擬態仮説),眼状紋は単に目立つ模様であり,警告信号として鳥類が眼状紋を認識しているため忌避するという説もある(警告信号仮説).ある研究では前者が,他の研究では後者が支持されてきた.本研究ではこの2つの仮説のうち,どちらの仮説がより当てはまるのか,行動実験と網羅的な文献の収集による統合的な結果分析(メタ解析)により検証する.
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研究実績の概要 |
チョウやガの成虫の翅あるいは幼虫の体表面に存在する,目立つ目玉模様の機能は,主に2つの仮説によって説明がなされてきた.1つ目は,彼らの主な捕食者である鳥類には,目玉模様が自身の捕食者の眼のように見えるため,捕食を諦めるという,眼の擬態仮説である.2つ目は,目玉模様は鳥類にとって単なる目新しい目立つ模様であり,彼らの新奇恐怖が促されるため捕食が回避されるという,警告信号仮説である.本研究では,カエデチョウ科鳥類を使った行動実験と既存の実証研究論文を対象とした系統関係を考慮したメタ解析から,目の擬態仮説と警告信号仮説の検討および鳥類全般に目玉模様の忌避効果は当てはめられるかの検証を進めた. 最終年度ではメタ解析を使い,目の擬態仮説と警告信号仮説のどちらの方がより当てはまりが良いか検討した.ニューサウスウェールズ大学での4ヶ月間の研究滞在を通して,メタ解析の第一人者である中川震一教授ならびに中川研究室メンバーと共に研究を実施した.目の擬態仮説の方が正しいのならば,目玉模様とその他の目立つ模様の間には忌避反応に明確な差が存在し,より目に似た特徴を持つ模様の方が反応は促されるはずである.一方,警告信号仮説の方が支持されるのならば,目玉模様を含む目立つ模様は忌避反応を促すが,反応に差異はみられないと予測される.結果は警告信号仮説を支持した.目立つ模様とそうでない模様には有意な忌避反応差があったが,目玉模様とそれ以外の目立つ模様には,反応差が検出できなかった.さらに,目玉模様に対する忌避反応は鳥類で一般的だと考えられてきたものの,実際にその反応が検証された鳥種は7種しかいないことが明らかとなった. 以上の結果は申請者による行動実験の結果と異なるものの,これまでごく限られた種しか検討されてこなかったことを鑑みると,実験結果は目玉模様を怖がる種ばかりでないことの証左となると考えられる.
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