研究実績の概要 |
担持金属触媒の活性と安定性は、金属と担体の間の相互作用、いわゆる金属-担体相互作用 (Metal-Support Interactions; MSIs) に大きく影響される。したがって、使用する金属や担体に依存するMSIsの挙動を理解することは、酸化物担持金属触媒の活性、選択性、および安定性を制御するために不可欠である。近年の研究により、担持金属の分散度は、金属原子の酸化物担体表面に対する結合エネルギーに支配されていることが報告されているが、これを以てMSIsを包括的に記述する因子とするには課題がある。特に、DFT計算から求められる電子構造と、実際の担持金属触媒表面の実験観察との間に見られる傾向について分析した研究例は少ないのが現状である。 本研究では、レニウム(Re)とTiO2, SiO2, Al2O3, MgO, V2O5, ZrO2, Nb2O5, CeO2などの各種酸化物担体の間に働くMSIsを記述することを目的として、系統的な研究を行った。SiO2、Al2O3、MgO などのワイドギャップ酸化物上のReは凝集する傾向があるのに対し、TiO2、V2O5、ZrO2、Nb2O5、CeO2 など半導体酸化物上のReは凝集種を含まず高い分散性を示すことを明らかにした。中でも、担体の電子親和力が重要であることがわかった。この結果は、酸化物担体の電子状態がMSIsを包括的に記述する重要因子あることを示唆しており、担持金属触媒のより良い設計指針の構築に資するものと考える。
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