研究課題/領域番号 |
22KJ0086
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補助金の研究課題番号 |
22J12519 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 稜太 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 寄生虫 / 寄生性カイアシ類 / サケ科 / 群集集合 / 履歴効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、河川性サケ科魚類イワナに寄生する外部寄生虫2種 (ミヤマナガクビムシとコガタカワシンジュガイ幼生)に着目し、先に宿主に寄生した外部寄生虫種によって組成(種数や各種の個体数)が異なる内部寄生虫群集が形成されるという「履歴効果」があるか調べる。さらに、形成された内部寄生虫群集組成によって、宿主の生存、成長や繁殖といったパフォーマンスが異なるかも明らかにする。
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研究実績の概要 |
地球上の生物には複数種の寄生虫による寄生虫群集が形成されている。寄生虫群集組成が異なれば、宿主の成長や生存も異なるので、組成の違いがどのように決定されているか明らかにすることは生態学の重要な問いである。本研究では河川性サケ科魚類の寄生群集に着目し、先に宿主に寄生した外部寄生虫によって組成が異なる寄生虫群集が形成されるという「履歴効果」があるか調べた。具体的には、宿主の体重・成長を低下させるカイアシ類ヤマメナガクビムシ類が先に寄生した宿主では他種の寄生が促進され、種数や各種の個体数が豊かな寄生虫群集が形成されるのに対し、宿主の免疫を誘導するコガタカワシンジュガイ(コガタ)が先に寄生した宿主では、他種の寄生が阻害され、種数や各種の個体数が少ない寄生虫群集が形成されると予測した。 北海道東部70地点以上でサケ科魚類イワナとオショロコマをつかまえ、寄生虫検査をおこなった。多くの地点でイワナの口にはミヤマナガクビムシが、オショロコマのエラにはオショロコマナガクビムシが寄生していた。またコガタの幼生は両種のエラに寄生していた。両イワナ類の体内からは線虫や鉤頭虫がみられた。 ミヤマナガクビムシの寄生率とコガタ幼生の寄生率の間には正の相関がみられ、2種の同時寄生が頻繁に起きていた。これはミヤマナガクビムシの寄生がコガタ幼生の寄生を促進する可能性を示唆する。オショロコマナガクビムシの寄生率とミヤマナガクビムシの寄生率には負の相関がみられた。2種の寄生虫は異なる宿主を利用するが、浮遊幼生期に何らかの相互作用がある可能性を示唆する。以上の結果は国内外の学会やセミナーなどで発表した。また寄生虫の進化生態学研究で世界をリードするRobert Poulin博士(ニュージーランド・オタゴ大学)のもとに3ヶ月滞在し、本研究で得られた結果について議論した。現在以上の議論の内容をもとに論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模な野外調査により外部寄生虫の寄生・分布パターンが明らかになり、予測の一部を支持する結果が得られた。また以上の結果をセミナー・学会で発表し、また海外研究者とも議論したことで、統計解析や論文執筆の方向性が決まり、大きく前進した。 一方、イワナ類の解剖・内部寄生虫群集組成の把握も進んではいるものの、予想以上に時間がかかっている。すでにサンプルは得られているため、今後はそれらサンプルの解剖・分析を進める。また一部のサンプルを追加で収集する予定である。 以上を総合的に鑑みると、研究はおおむね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った野外調査の結果をもとに調査地点・計画を見直し、一部地点で追加調査・サンプリングを行う。また同時並行で本年度の一部のデータをもとに論文を執筆する。さらに本年度の一連の結果は、引き続き統計解析などを進めた上で、6月に行われる国際イワナ学会および9月に行われる魚類学会で発表予定である。すでに得られているイワナ類のサンプルを引き続き解剖することで内部寄生虫群集もあわせた分析も行う。 次年度に博士課程を卒業する予定であるため、以上の実証研究などをまとめた博士論文を、秋・冬季に執筆する。 次年度に予定していたニュージーランド・オタゴ大学への渡航は、本年度に達成できた。その際に作り上げたコネクションを利用し、研究内容・結果について海外の研究者と議論することを通じて、投稿論文の質を一層高めると同時に,本研究完了後の展望についても考えを深めたい。
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