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高山性ツツジ科植物における交配システムの進化:近交弱勢と資源制限の均衡

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ0100
補助金の研究課題番号 22J20087 (2022)
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金 (2023)
補助金 (2022)
応募区分国内
審査区分 小区分45040:生態学および環境学関連
研究機関北海道大学

研究代表者

高橋 佳吾  北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワード高山植物 / 繁殖生態 / 食害 / 選択的中絶 / ツツジ / 結実 / マルハナバチ
研究開始時の研究の概要

本研究は、高山性ツツジ属植物のキバナシャクナゲを用いて、自家花粉と他家花粉の混合受粉に適応的意義があるかを検証する。北海道大雪山に生育するキバナシャクナゲは、6月に開花する風衝地集団と7月に開花する雪田集団があり、それぞれ主要送粉者や他殖率に大きな違いが見られる。今回、両集団で4種類の人工受粉実験を実施し、自然状態のものと併せて、果実および種子を採取する。そして、風衝地集団では他家受粉、雪田集団では混合受粉が繁殖効率的に最も高くなるという仮説について確かめる。

研究実績の概要

種子がどのように資源分配されているのかを知ることは、植物繁殖生態学の要点である。本研究では、1つの果実内に数百個の胚珠を持つツツジ属植物を用いて、種特異的な繁殖戦略の解明を試みた。
高山性のキバナシャクナゲは風衝地と雪田という環境の異なるハビタットに生育する。開花時期の早い風衝地集団はマルハナバチの越冬女王による質の高い受粉サービスを受けるが、訪花頻度の低さから稔る果実数は少ない。一方、開花時期の遅い雪田集団は働きバチによる頻繁な訪花を受けるものの、同じ株内での自家受粉が起こりやすい(Kudo et al. 2011)。Ovule packaging strategy仮説(Burd 1995)によると、風衝地集団では少ない受粉チャンスを活かすため、胚珠数が雪田集団より多くなると予想される。
2023年度は大雪山系赤岳およびヒサゴ沼で調査を実行した。また、胚珠数の違いがジェネット(同じ遺伝子型の株)サイズに依存するかを検証するため、赤岳の風衝地集団と雪田集団のクローン構造を明らかにした。その結果、胚珠数は全ての山域・年度で風衝地集団の方が有意に多かった。果実あたりの胚珠数とジェネットサイズに相関は見られず、胚珠数は遺伝的に決まっている可能性が示された。
ヤマツツジの葉はルリチュウレンジハバチの幼虫によって食害を受ける。種子成熟期の葉の減少で光合成が阻害された時、種子数や種子重は何らかの悪影響を被ると考えられる。
2023年度は繁殖シーズン全体の被食度調査と切葉実験を実施した。更に、切除処理とコントロールの果実を用いて、種子の遺伝解析を行った。その結果、切除処理を行った周辺の果実では、種子数が有意に減少した。切除処理群の平均他殖率(81.7%)は、コントロール(72.0%)よりも有意に高かった。これは資源制限による種子の選択的中絶の存在を示唆するものであり、重要な成果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

キバナシャクナゲの野外調査は予定通り完了した。他殖率を推定するためのマイクロサテライトマーカー解析は既に1250サンプル分を確保しており、残る1000サンプルの作業は2024年7月までに終える予定である。発芽実験も順調であるが、実生の生育実験はデータが取れなかった。しかし、当初の計画になかったクローン構造の解析を行うことで、データ量の不足を補った。
ヤマツツジの研究は既に論文化の段階に入っており、日本語原稿は完成している。2024年5月に学術誌へ投稿する予定である。
ハクサンシャクナゲでは、花の食害が同花序内の果実への資源分配を変化させるかという観点で計画を立てた。ハクサンシャクナゲは常緑性の低木であり、葉の食害を受けにくいが、花は強度の被食を受けることがある。花序あたりの花数は8~20個と幅広く、必ずしも花序内の花全てが食害されるわけではない。花序あたりの花数が少ない場合と多い場合では、種子数や種子重が異なるのか? 花序内の花が食害で半減した時、投資されるはずだった資源は他の果実に分配されるのか? この2つの疑問の解明を研究目的に設定した。2022年度は自然状態の果実を採取し、果実長、胚珠数、種子数、種子重といったデータを収集した。2023年度は発芽実験を行い、平均種子重が小さい果実で作られた種子ほど発芽率が低下することを実証した。2024年度は7月から9月にかけて、北海道様似町で摘花実験および人工受粉実験を進めるつもりである。

今後の研究の推進方策

4月から6月の間はキバナシャクナゲの分子実験に注力する。並行してヤマツツジの論文を学術誌に投稿する。夏は週1回のペースでハクサンシャクナゲの野外実験を遂行する。その間、キバナシャクナゲの研究成果を論文の形にまとめる。10月、ハクサンシャクナゲの果実を採取し、種子のデータを記録する。11月から1月にかけて、博士論文の原稿を完成させる。
特別研究員採用期間中の2025年3月に博士号を取得することを目指している。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ヤマツツジにおける葉の局所集中的な食害が繁殖に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      高橋佳吾、工藤岳
    • 学会等名
      日本生態学会北海道地区大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 高山環境に生育するキバナシャクナゲの結実特性:風衝地集団と雪田集団の比較2023

    • 著者名/発表者名
      高橋佳吾、工藤岳
    • 学会等名
      日本生態学会仙台大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2024-12-25  

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