研究課題/領域番号 |
22KJ0107
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補助金の研究課題番号 |
22J20339 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
貴堂 雄太 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 社会規範 / 規範心理 / 協力の進化 / 文化進化 / 協力の文化差 / 文化的集団淘汰 |
研究開始時の研究の概要 |
なぜ人間だけが血縁関係にない個体間で、大規模で協力的な社会を構築できたのか?なぜ人間の協力行動には、大きな文化差が見られるのか?本研究では、人間の利他性の起源をめぐる問いに対して、次の2つのプロセスによって説明を試みる文化的集団淘汰理論に基づき、解明を試みる。まず1つが、文化的集団が持つ規範を内面化し、他者に同調するといった社会的学習(文化進化)プロセス。そして、そうした社会的学習能力が、人間の生存に有利に働いたため獲得されたという遺伝進化プロセスの2つである。本研究では、1つ目のプロセスを集団実験によって実証的に、2つ目のプロセスについて進化シミュレーションを用いて理論的に検証する。
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研究実績の概要 |
研究1.本研究では、理論モデルを構築しエージェント・ベース・シミュレーションを実施し、規範心理が協力行動と共進化した可能性を探った。その結果、2種類の社会規範が異なる協力的秩序の創発につながることが明らかとなった。さらに、記述的規範に依拠する秩序から規範逸脱者への罰を奨励する命令的規範に基づく秩序への移行ダイナミクスが、理論的に初めて実証された。
研究2. 従前の協力の進化理論は、発達時間における行動変容プロセスを考慮に入れることはなかったが、ヒトの有する学習能力は、協力行動の文化伝達を可能にしたかもしれない。具体的には、非協力的な集団に属する成員が、協力的な他集団の行動を模倣し、協力行動が集団を超え伝達されるというプロセスが生じうる。研究2では、実験室実験を用いて、この可能性を実証的に検討した。その結果、公共財問題ゲームにおいても、協力的な集団の行動を模倣する文化進化的なプロセスによって、協力行動が集団間に拡散する可能性が示唆された。
追加研究1. 社会的ジレンマにおいて選択を行う前にグループで議論を行い、社会的ジレンマについて話し合うことで協力が促進されるという頑健な知見が多くの実証研究から得られてきたが、コミュニケーションが相互協力の実現に寄与するという経験的事実の根底にあるメカニズムは、未だ明らかにされていない。そこで、実験室実験とテキスト分析を組み合わせた仮説検証・演繹を行い、さらに実験状況を模したコンピュータ・シミュレーションを行い、コミュニケーションが協力に及ぼす効果と背後にあるメカニズムを精緻に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに実施された人間の規範学習能力と協力行動の共進化の可能性について検討した進化シミュレーション(研究1)をさらに拡張した。従来の実証研究から人間の協力行動の背後にあるとされてきた命令・記述的規範を数理的に表現し、協力の進化ダイナミクスとの関連を検討した。その結果、2種類の社会規範が異なる協力的秩序の創発につながることが明らかとなった。さらに、記述的規範に依拠する秩序から規範逸脱者への罰を奨励する命令的規範に基づく秩序への移行ダイナミクスが、理論的に初めて実証された。この成果を日本社会心理学会第64回大会にて報告し(口頭発表、査読あり)、一連の結果を論文としてまとめ国際誌に投稿した。
さらに、前年度実施した協力の実現をもたらすコミュニケーションの効果を検討した実証研究(追加研究1)に対して追加のテキスト分析を行い、その結果を日本心理学会第87回大会にて発表した。同時に、この実証研究を拡張した理論研究の研究計画について学会発表を行った。現在は、追加研究1の理論研究を進めている。
さらに、研究2(協力行動の文化進化プロセスによる集団間拡散の可能性の検討)について、追加の調査分析を行い、前年度まで実施した実験室実験の結果と合わせて一連の結果を論文として取りまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究2(協力行動の文化進化プロセスによる集団間拡散の可能性の検討)について、追加の調査分析を行い、前年度まで実施した実験室実験の結果と合わせて一連の結果を論文として取りまとめる予定である。また、博士論文の執筆にかけ、本研究の成果を取りまとめる。
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