研究課題/領域番号 |
22KJ0108
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補助金の研究課題番号 |
22J20341 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊岡 正庸 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2022年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 否定 / 推件計算 / 異なる論理の組み合わせ / 直観主義論理 / 古典論理 / subintuitionistic logic / 超直観主義論理 / 述語論理 / Subintuitionistic logic |
研究開始時の研究の概要 |
現代論理学には様々な論理体系が存在するが、いずれが正当かについては議論がある。この議論は、言語に対する意味の説明の理論の選択と関連してきた。特に言語使用による意味の説明は、直観主義論理と相性が良いとされてきた。しかし、近年意味の説明と論理の選択は独立の問題であると考える論者が増加した。 こうした背景に基づき、本研究では上述の議論の土台として、様々な論理が共存する体系を規則や公理に注目し研究する。証明体系における規則や公理は、論理言語の使用を形式化したものである。ゆえに、これらに着目することで、複数の論理を含む体系について、言語使用による意味の説明がどのような成果をもつかを考察することができる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は以下の二つの課題に取り組む予定であった。(1)経験的否定+厳密含意論理/直観主義命題論理の拡大領域クリプキ意味論を用いた述語化とその推件計算(2)オメガ否定+厳密含意論理/直観主義論理の定領域クリプキ意味論を用いた述語化とその推件計算。しかしながら、いずれも経験的否定とオメガ否定の性質により困難があることに気づいた。この状況を踏まえ、課題を変更し、厳密含意論理の近傍意味論を用いた一般化を行った。直観主義命題論理は厳密含意論理の特殊ケースと捉えることができるため、直観主義命題論理のさらなる一般化を行ったと言える。さらに令和4年度に中心的に研究した古典的否定と経験的否定をこの論理に加え、両者の比較を行った。この内容は2023年11月のThe Australasian Association for Logic Conference 2023および2023年12月の日本科学哲学会第56回大会で発表した。 加えて、Nelson論理にconsistency演算子を加えた論理に対する推件計算の提供に成功した。Nelson論理は直観主義命題論理の上に、真理概念と鏡写しとなる偽概念を導入し、その偽概念を表現する否定を加えることで得られることで知られる。この論理にconsistency演算子を加えた論理はすでに与えられていたが、これに対する推件計算はまだなかった。この内容は2023年3月のAsian Workshop on Philosophical Logicで発表した。 上述の主たる研究内容に加え、オメガ否定についてはこれまでの先行研究では指摘されていなかった性質に気づき、その内容を2023年9月のSLCAS2023で発表した。加えて、令和5年度の研究内容をもとに、3本の国際誌への論文掲載を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題開始時の計画では、令和4年度から令和6年度までの3年間で以下の(A)(B)(C)の課題に取り組む予定であった。(A)直観主義論理と古典的否定の組み合わせ方の検討(B)直観主義論理の厳密含意論理への一般化(C)古典的否定のド・モルガン否定への一般化。それぞれの課題が2項目に分割されており、各年度2項目づつ研究を遂行する計画である。令和4年度は前6項目のうち、3項目の遂行に成功していた。このような事情に基づき、令和5年度はオメガ否定と呼ばれる、当初の計画には含まれていなかったが関連する否定についての研究と、令和4年度で研究した経験的否定を含む述語論理の変種として、別の経験的否定を含む述語論理を研究する予定であった。いずれも困難があり達成ができなかったものの、代わりに厳密含意論理の一般化やNelson論理にconsistency演算子を加えた論理について、研究することができた。前者は元々の計画には含まれていなかったものの、研究内容とは強く関連するものである。後者については、令和6年度に研究する予定であるNelson論理の拡大であるため、令和6年度の研究の足掛かりとすることができるものである。 一方で、得られた成果や結果を、学会で発表したり、論文として投稿したりする機会を十分に設けることができたとはいいがたい。この点を考慮すると、当初の計画以上に進展しているとはいいがたい。以上の理由から、令和5年度の進行状況を総括すると、おおむね順調に進展しているという判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は本研究課題の最終年度であるため、予定していた計画の残りを遂行する予定である。具体的には(1)幾何学規則+Nelson論理の推件計算(2)Nelson論理の含意の厳密含意化に取り組む予定である。(1)については、現在幾何学規則の既存の成果についてのサーヴェイを行っている段階である。(2)については、直観主義論理の厳密含意論理の推件計算が手掛かりになるという見通しを有している。また、令和5年度に提供した、Nelson論理にconsistency演算子を加えた推件計算もヒントを与えると考えている。なぜなら、consistency演算子を加えることで、持続性と呼ばれる直観主義論理およびNelson論理の性質が失われることが知られており、それゆえNelson論理にconsistency演算子を加えた論理は、Nelson論理を厳密含意化した論理に、consistency演算子を加えた論理とみることができるからである。(1)の内容はAsian Workshop on Philosophical Logicで発表したのち、Journal of Logic and Computationに投稿する予定である。(2)の内容はAdvances in Modal Logicで発表したのち、Notre Dame Journal of Formal Logicに投稿する予定である。 加えて、オメガ否定について令和5年度に発表した内容に新しい内容を加え、NCL'24で発表したのち、Reports on Mathematical Logicに投稿する予定である。また、令和5年度の研究実績をJournal of Philosophical LogicおよびLogic Journal of the IGPLに投稿する予定である。
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