研究課題/領域番号 |
22KJ0119
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補助金の研究課題番号 |
22J20991 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大家 広平 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 複雑流体 / 流動食品 / レオロジー / 超音波 / 流体計測 / 流れ予測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,流動食品や高分子溶液に代表される複雑流体の流れ予測を可能にする新たな理論体系の構築を目的とする.複雑流体へ高い適用性を持つ超音波スピニングレオメトリ(USR)を拡張開発し,様々な流れの条件下における流動物性評価を実現する.そこで得られる膨大な流動物性データを直に数値流体力学に活用し,対象流体と流路形状ともに汎用性の高い流れ予測スキームを確立する.USRに必要な微量サンプルをもとに,パイプラインに代表される大規模流動システムの流れ予測を可能にする.
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研究実績の概要 |
本研究では,流動食品や高分子溶液に代表される複雑流体の流れ予測を可能にする新たな理論体系の構築を目的とする.複雑流体の流動物性評価に高い適用性を持つ超音波スピニングレオメトリ(USR)を拡張開発し,様々な流れの条件下における流動物性評価を実現する.そこで得られる膨大な流動物性データを直に数値流体力学に活用し,対象流体と流路形状ともに汎用性の高い流れ予測スキームを確立する. これまでに開発したUSRは,試験流体を満たした円筒容器を正弦波状に振動回転させ,超音波流速分布計(UVP)によって内部の時空間流速分布を計測する.この流速情報から流体支配方程式と構成方程式を媒介して,実効粘度や粘弾性に代表されるレオロジー物性を評価する.従来のトルク式レオメータに比して,ゲルゾル共存物質や混相流体などの複雑流体に高い適用性を持つ一方で,単一周波数成分の振動剪断下での物性評価に限定されている. 定常剪断や他周波数成分を含む非定常剪断下での物性評価を行うために,USRの拡張を行った.従来の外円筒駆動の装置を改修して,軸トルク計測が可能な内円筒を取り付けた.UVP計測とトルク計測を同期することで,二重円筒間の各半径位置における歪み速度と剪断応力の対応関係を評価できる. ニュートン流体であるシリコンオイルを用いて計測結果の妥当性を検証し,擬塑性流体であるカルボキシメチルセルロース水溶液,粘弾性流体であるポリアクリルアミド水溶液,複雑流体の一例としておかゆの計測を行った.流れ予測の基礎段階として,定常剪断下で得られた応力と歪み速度の関係を用いて,一定圧力勾配で駆動される円管内の流れ予測を高精度で予測できることを示した.研究成果は国際誌Industrial & Engineering Chemistry Researchにて論文を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軸トルク計に接続した内円筒を既存のUSR装置に設けることで,壁面応力の計測が可能になる.これを壁面境界条件として,UVP計測で得られた速度分布を運動方程式ベースで解析し,二重円筒間の剪断応力と歪み速度の分布が決定する.従来の微小間隙での速度分布を線形と仮定して,回転速度と軸トルクのみから粘度を評価するトルク式レオメータと大きく異なる.二重円筒間の局所で物性評価を行うため,円筒壁面での滑りや剪断局所化が問題とならない.定常剪断下および単一周波数成分を含む振動剪断下における物性評価を行った.初年度は流れ予測の基礎段階として,直円管を対象に一定圧力勾配で駆動される定常流れと脈動流の予測を行った.USRで評価された物性データを基に予測した流速分布と,実際のパイプラインにおいてUVPで計測した流速分布が一致することを確認した. これに並行して,USRを物性計測ツールとして学際的研究テーマで運用した.北海道大学病院と共同で,嚥下食品の食べやすさの数値化に関する研究を行った.USRを用いて複数のとろみ剤水溶液の擬塑性,および消化酵素に対する安定性を評価した.USRでは半径方向に剪断歪み速度が分布するため,瞬時に擬塑性を評価できる強みがある.また,円筒内で加水分解のような化学反応を起こし,数秒スケールの物性変化を捉えることができる.これまで定性的な評価がなされていた各世代のとろみ剤の特徴を定量的に説明することが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
物性評価の流れ場の複雑化と予測する流路形状の複雑化を並行する.来年度は,平均流と単一周波数成分を含む振動流を組み合わせた流れ場,および二周波数成分を含む振動流れでの粘弾性評価法を確立する.複数の周波数成分を含む非定常剪断流れ場において,剪断応力と歪み速度を人工ニューラルネットワークで関連付ける前段階として設定する.並行して,直円管流れ予測のスキームをレジューサ管およびエルボー管に拡張する.これまで対象とした直円管は軸方向流れが支配的であるのに対し,これらの管内では三次元的な流れが発生する.数値計算の妥当性検証のために,透明樹脂製のレジューサ管とエルボー管をパイプラインに組み込み,粒子画像流速測定法によって獲得する流速分布と比較する.試験流体として,擬塑性流体であるカルボキシメチルセルロース水溶液と粘弾性流体であるポリアクリルアミド水溶液を対象とする. これに並行して,USRを物性計測ツールとして気泡レオロジーに運用する.USRを非ニュートン性発現の要因解明のための流体物理計測ツールとして習熟させるべく,気泡の粘弾性評価を設定する.USR計測に同期して,ハイスピードカメラとレッドレーザを用いて,分散気泡の並進・変形運動を追跡し,マクロ流動物性と分散体のダイナミクスの因果関係を解明する. 以上,USR技術を深化させる方向と,他複数テーマにわたり科学を追求する方向,これら二つを同時に進めて相乗効果を得る.
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