研究課題/領域番号 |
22KJ0130
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補助金の研究課題番号 |
22J21461 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
植村 洋亮 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 温暖化 / 気候変動 / 絶滅危惧種 / 種間競争 / サケ科魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
気候変動にともなう広範囲の個体群絶滅リスクは主に分布予測によって評価されてきた。しかし、それらの予測とその後に実際生じた絶滅を種の分布域全体で比較した研究はほとんどない。本研究の目的は、温暖化による過去の個体群絶滅予測とその後に生じた絶滅とのギャップを明らかにし、そのメカニズムを環境変化のみならず種間競争という生態学的プロセスも考慮して推定することである。具体的には、魚類(オショロコマ)を対象に過去の分布予測と現在の分布を比較し、1)現在までの温度上昇に対して分布域全体でどの程度の個体群が消失したか、2)その要因として環境変化と種間競争のどちらがどの程度インパクトを与えていたか、を検討する。
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研究実績の概要 |
気候変動にともなう個体群の局所絶滅(Extirpation)は主に対象種の環境応答に基づく分布予測によって評価されてきた。しかし、それらの予測とその後に実際生じた局所絶滅を広域で比較した研究は非常に少ない。1996年、北海道を分布域とする在来種オショロコマは気温が1°C上昇した場合、北海道全体で28%の個体群が消失すると予測された。そして、当時から北海道の気温は約1°C上昇しているが、どれだけのオショロコマ個体群が存続しているのかは不明である。そこで、今年度の研究では、前年度の調査地点に加え、新たに9水系60地点で電気ショッカーによる定量採捕調査をおこなった(7月から9月)。また、各地点では局所スケールの詳細な物理環境の測定をおこなった。
前年度に調査した52地点でのデータとあわせて解析した結果、18.5%の地点(個体群)で局所絶滅が確認された。また、過去のモデルを適用した予測と実際の絶滅は異なっており、その正確性は50.8%であった(以上、研究開始時の目的1達成)。また、オショロコマと競争種イワナについて、それぞれの単独生息域と両種の混棲域について着目したところ、オショロコマの単独域が減少し逆にイワナとの混棲域が2倍以上に増加していた。さらに、オショロコマの局所絶滅が起こった地点の物理環境および他種に関する要因を解析した結果、外来種ニジマスの存在、平均水温の高さ、平均川幅の狭さが相対重要度の高い予測因子と考えられた。
これらの結果は温暖化に伴う河川水温の上昇により、かつて高温域に分布していた種(例えば、イワナ)が低温域へ侵入し種間競争を介して置き換わろうとしていることを示唆する。また、平均川幅の狭さは気温上昇に伴う水温への影響をさらに強めていたのかもしれない。今後、より正確な予測因子の相対重要性評価に向け種間関係を考慮した発展的な統計解析手法によるパタン推定が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度と同様、計画していた調査地点数を超える調査地点でサンプリングを実施できた。また、得られた成果を含む研究内容を5つの国内学会、2つの国際学会、大学で開催したセミナー(招待あり)、自治体および大学が主催する市民向け企画で発表できた。さらに、上記の発展的な統計解析手法に関して、開発者を中心とする海外のコミュニティと自らやりとりし、統計モデルの構築に至った(基礎段階)。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
道内の30地点でさらなる物理環境条件の計測を実施する。また、それらを加えた統計解析(主にモデルの改善)を実施し、『局所的な絶滅要因として環境変化と種間競争のどちらがどの程度インパクトを与えていたか(研究開始時の目的2)』を明らかにする。そして、得られた成果は学会や市民向けセミナーで適宜発表し、最終的に国際誌への投稿を目指す。なお、2024年度に博士後期課程を修了予定であるため、以上の成果をまとめた博士論文を執筆する。
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