研究課題/領域番号 |
22KJ0145
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補助金の研究課題番号 |
22J01704 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
主森 亘 帯広畜産大学, 獣医学研究部門 基礎獣医分野, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 二次的水棲適応 / 前ヒレ / 鰭脚類 / 形態進化 / 海棲哺乳類 / 二次的水生適応 / 海生哺乳類 |
研究開始時の研究の概要 |
二次的水生適応における前ヒレの獲得は有羊膜類の進化史で度々生じており,収斂進化の代表例として知られている.一方で,多くの分類群では化石種が該当することから,その移行期である半水生段階に関して,形態進化の過程が不明瞭であった.本研究では,前ヒレを歩行と遊泳の両方に用いる半水生食肉類である鰭脚類をモデルケースとして,手部骨格の形態解析と前肢における可動域の機能形態解析を複合させ,その形態進化過程の解明を試みる.本研究成果は水生哺乳類における前ヒレの獲得過程の解明につながり,その進化史の大局的な理解につながることが期待される.
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研究実績の概要 |
本年度より、えりも岬でのゼニガタアザラシの混獲調査に参加している。これにより、前年度以上に安定した前肢標本の確保を可能とした。そのうち、3個体については前肢部分のCT撮影を実行し、筋骨格系の3次元データの取得を行った。アシカ類に関しては、9個体のトドの前肢骨格標本の作製を行った。キタオットセイも1個体データ取得を行った。また、アザラシ類とアシカ類どちらにおいても、これまで確保した全ての標本に対しての写真撮影による画像データから、前ヒレの外部形状について雌雄差と左右差について調査を行った。その結果、先端部の微細な形状については個体差が確認できたが、おおまかな外貌に違いは生じないことが判明した。また、手部骨格については、水棲適応において指骨の形状が陸棲種のそれよりも扁平になることが知られており、先行研究で確認されているようにアシカ類でもその特徴が見受けられた。一方で、アザラシ類では扁平化はあまり生じていなかった。これは、アザラシ類の前肢では前ヒレの形成ではなく陸棲種のような“前肢”的な役割としての機能的要求が高いことを示唆している。また、手首関節の機能的要求も水棲適応によって変化していることが肉眼解剖調査により判明しつつある。加えて、比較対象種のイタチ上科の陸棲種の一種であるツシマテンを13個体、環境省対馬厳原事務所より提供していただくこととなった。これにより、鰭脚類における原始形質の評価について十分なデータの確保が可能となった。 鰭脚類とイタチ類の標本について、同解剖学教室の近藤大輔准教授と冨安洵平助教と共同活用を行っている。これにより、鰭脚類やイタチ類の嗅覚系と外分泌腺に関する研究を遂行している。本年度には、私の系統進化学に関する知見を活用していただき、ウミガメ類の嗅覚系とそれに対する脊椎動物の系統進化における位置づけについての論文を近藤准教授と共著で出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標本の確保が確立したことで、十分数の骨格標本が獲得できている。これに加え、肉眼解剖調査によるデータの蓄積も行えており、鰭脚類の前肢における筋骨格系の理解が円滑に進んでいる。更に、ツシマテンの確保により原始形質の評価も担保できるようになったため、本研究の主題である形態進化の解明に必要な準備がすべてそろったといえる。 標本の共同活用も順調で、鰭脚類やイタチ類にまつわる研究が多岐に亘って進行中である。これは、当初より期待していた異分野の研究機関に所属することによる研究の広がりといえる。日本学術振興会特別研究員の制度の本意であるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の取り組みとして、手部骨格に関しては客観的指標を示すために中手骨および指骨の扁平率を算出し、姉妹群の陸棲種であるイタチ上科と併せて比較を行う。また、手根関節に関しては、近位手根骨の関節面と手首関節の可動域との相関関係を導き出し、関節機能の評価を行う。更に、原始的な鰭脚類など、スミソニアン自然史博物館にて標本調査を行うことで、不足している分類群の充実を図る。これらの成果を化石種に応用し、系統樹上での形態形質の変遷を探ることで、水棲適応に伴う手部骨格の機能的要求の変化を捉え、適応過程の解明につなげる。 標本の共同活用に関しては、アザラシ類の嗅覚系についての論文を投稿し、minor revisionで査読が返ってきている。外分泌腺についても、繁殖期のゼニガタアザラシの調査を行うことで、フェロモンコミュニケーションの解明に繋げていきたい。また、アシカ類・イタチ類に関しても全ての標本に関して同解剖学教室で共同調査を行い、多角的な研究に努める。
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