研究課題/領域番号 |
22KJ0214
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補助金の研究課題番号 |
22J01195 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山野 雄平 東北大学, 多元物質科学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DNA / RNA / 光触媒 / ラベル化 / 光損傷 / 光反応 / APサイト / 光修飾反応 / ロタキサン / 核酸 / 人工核酸 |
研究開始時の研究の概要 |
機能性分子を“非天然塩基”として核酸に導入し、新機能をもつ人工核酸を創製する研究は、創薬からマテリアルサイエンスに至る幅広い領域への応用が期待されている。しかし、これらの機能発現は核酸の標準的な二重鎖形成に基づくものが主流であり、機能性分子には塩基対形成を阻害しないものを用いることが一般的である。対して申請者らは、相補塩基のフリップアウトを誘起する全く新しい人工塩基を開発している。本研究では、これまでに開発した人工塩基モチーフなどを駆使することで、1.特定のグアニン塩基を選択的に光酸化・修飾できる人工核酸と、2.光で可逆的にロタキサン様構造を形成する人工核酸を開発することを目指す。
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研究実績の概要 |
本申請研究では、申請者らが開発した人工核酸塩基モチーフをもとに、1. 特定のグアニン塩基を選択的に光修飾できる人工核酸や、2. 光で可逆的にロタキサン様構造を形成する人工核酸、といった機能性人工核酸を創製することを目指した。当初、フリップアウト誘導型人工核酸を用いて、これらの機能を付与すること目指したが、本設計では選択的かつ効率的な光修飾や構造体形成を達成することは困難だとわかった。そこで、人工核酸モチーフの設計を大幅に改変し、さらに検証を進めた。この中で、光触媒としてEosinやRu錯体などを導入したオリゴヌクレオチドプローブを設計した。これらのプローブと標的配列を二重鎖形成させ、ウラゾール系修飾剤存在下で光を照射した結果、修飾剤の光酸化的な活性化に基づき標的配列を光修飾できることを確認した。一方、興味深いことに、修飾剤非存在下でプローブと標的配列の二重鎖に光を照射すると、標的配列中に意図しない損傷も生じることが示唆された。そこで、今年度はより単純な系を用いて光触媒反応下で生じる損傷についても解析した。具体的には数種の自己相補DNA配列に対して、遊離の光触媒存在下で光を照射し、生成物を解析した。結果、損傷は主にグアニン塩基で起きていることがわかった。また、既知の酸化体に加え、これまでに報告されていないタイプの脱塩基反応が起き、APサイトが生成していることが見出された。さらに、一連の損傷反応のメカニズムについて検討したところ、主に光触媒由来の一重項酸素によって引き起こされていることも確認され、一重項酸素のスカベンジャーを系中に加えればこれらの損傷はほぼ完全に抑制されることも見出した。加えて、これら損傷の解析を行う過程で、酸化・活性化により既存のウラゾール系修飾剤よりも高効率で特定の構造中のグアニンを修飾できる数種の新規反応剤を偶然見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、申請者らが開発したフリップアウト誘起型人工塩基モチーフをもとに、機能性人工核酸を創製することを目指していた。しかしながら、様々な検討の結果、当初の設計では十分な機能発現を実現できないことが明らかとなった。そこで、設計を大幅に改変し、数種の光触媒修飾オリゴヌクレオチドを設計した。その結果、設計改変後の修飾オリゴヌクレオチドをプローブとして用いれば標的核酸を十分に光修飾できることが確認され、当初の目標の一部を達成できた。また、一部の光触媒を用いた場合には、酸化損傷反応が副反応として観測されたため、それらについても詳細に解析した。結果、光触媒反応(光触媒由来の一重項酸素との反応)に基づいて脱塩基部位(APサイト)が非酵素的に生じるという新しい現象を発見した。さらに、これらの損傷の発生メカニズムを詳細に解析する過程で、酸化・活性化により特定の配列や構造中のグアニンに対して選択的に反応する反応剤を見出すことにも成功した。こららの反応剤はこれまで用いてきたウラゾール系化合物よりも高い反応性を示すことも確認している。このように当初の設計や方針とは大きく異なるが、極めて興味深い現象が見出されており、修飾反応に関しても有用な知見を多数得ていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得た知見をもとに、1.特定のグアニン塩基を選択的に光修飾できる人工核酸の開発に関しては、副反応の一因となる一重項酸素のスカベンジャーを系中に加え、新たに見出した反応剤を(ウラゾールの代わりに)修飾剤として用いることで、反応の選択性と効率の両方の向上を目指す。前年度までに発見した光触媒反応に基づくAPサイト生成反応に関しては、様々なグアニン類縁体を組み込んだDNAオリゴマーでも反応を行い、生成物を詳細に解析することで、機構の完全な解明を目指す。
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