研究実績の概要 |
ウイルスゲノムの変異が生じることにより, 宿主範囲の拡大・適応が生じ, こうしたウイルスが土壌微生物を介して植物に与える影響を明らかにすることを目的とした. 当初キュウリモザイクウイルス (CMV) を用いた系による実験を進めていた. 実験の過程で, 青枯病を引き起こす Ralstonia 属の植物病原性細菌に感染する複数株のバクテリオファージが, 細菌性植物病害に対する抑制効果を持つ落葉堆肥から検出された. ウイルスゲノムの変異がウイルス-土壌微生物-植物の相互の関係にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため, 今回検出されたファージ群の次世代シーケンスによるゲノム配列決定ののち, 既報のファージとのゲノム配列比較を in silico 解析により実施した. その結果, 新たに単離されたファージにはゲノム全長が 200kbp 以上のジャンボファージが含まれていた. 本研究では単離された 5 株のジャンボファージ (FLC4-4C,FLC4-5C,FLC4-11C,FLC1-1B,FLC4-3B) の全長ゲノム配列を用いた proteomic tree 解析および, Terminase large subunit 遺伝子などを用いた分子系統解析を行った. その結果, FLC4-4C,FLC4-5C,FLC4-11C は Chiangmaivirus 属ファージと考えられ, 既報のイネに苗病害を引き起こす Burkholderia 属細菌に対する病害抑制効果の報告がある FLC6, FLC8 と非常に近縁であった. FLC1-1B, FLC4-3B は, 最も近縁な既報のファージ RP12 (Ripduovirus 属) との相同性がいずれもidentity 77%, query coverage 35% であったことから, FLC1-1B と FLC4-3B は新属に分類される可能性が考えられた.
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