研究課題/領域番号 |
22KJ0227
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補助金の研究課題番号 |
22J10644 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 優 東北大学, 医工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 超音波医学 / 定量診断 / 虚血性心疾患 / 厚み変化計測 / 心筋機能評価 / 心筋収縮応答 |
研究開始時の研究の概要 |
虚血性心疾患において,冠動脈の狭窄や痙攣により虚血状態に陥った心筋の機能は低下し,虚血状態の心筋はやがて壊死へと至る。本研究では,医用超音波によって心筋の厚み変化速度を局所的に計測することで,虚血による心筋機能の低下を高感度に検出し,虚血性心疾患を定量的に診断可能なシステムの開発を行う。従来不可能であった心臓壁の厚み方向における局所的な厚み変化速度の超音波計測を実現し,心筋層ごとの収縮・伸展に伴う厚み変化の速度や電気的興奮に対する応答時刻の違いを明らかにするとともに,心筋層ごとの局所的な計測によって高感度に心筋虚血を検出できることを示し,従来法より高感度な虚血性心疾患の定量診断法を開発する。
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研究実績の概要 |
心筋の厚み変化速度は,虚血性心疾患における心筋機能の低下や異常の検出に用いられる指標の1つである。そのため,心臓壁の貫壁方向において心筋厚み変化速度を局所的に計測することによる心筋虚血領域の同定が期待される。本研究課題では,従来よりも局所的かつ安定な心筋厚み変化速度計測のため,超音波信号の多周波数における位相差を用いる手法に着目した。2022年度は主に,超音波信号の多周波数における位相差を用いた心筋厚み変化速度の局所的な計測における計測精度の向上に取り組んだ。 心筋厚み変化速度計測の局所性を損なわずに計測精度を向上させる手法として,超音波信号包絡振幅値の重心を用いた補正法に着目した。厚み変化速度は心臓壁内の2点における変位速度の差を,その間の距離で除することにより算出される。超音波計測においてある関心点における変位速度を推定する際には,その点の周囲の信号も用いる必要があるが,このとき,変位速度の推定値は,超音波信号の包絡振幅値を重みとした各点の変位速度の足し合わせとなるため,推定値は関心点における変位速度と必ずしも一致せず,推定誤差が生じ得る。この誤差は,厚み変化速度算出のための2点間の距離を超音波信号の包絡振幅値の重心を用いて補正することで低減可能と考えられる。本研究では,超音波信号の包絡振幅値の重心を用いた補正を心筋厚み変化速度の局所的な計測に適用し,健常者を計測対象とした実験で計測精度の向上を検証した。心周期の拡張期において,心臓壁の厚み変化速度分布を局所的に計測し,超音波信号の包絡振幅値の重心を用いた補正前後の分布を比較した結果,補正後では厚み変化速度の推定値の空間的なばらつきが抑制された。この補正により,実際の心臓壁内において,計測の局所性を維持したまま計測精度を向上できたことは,本研究課題の解決のための重要な成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,当初の計画では,超音波探触子上の圧電素子ごとに受信超音波信号を取得できる装置を心電図や心音図などの生体情報を取得する装置と同期し,超音波計測時に非集束波を送信することで,計測領域の拡大と高密度なデータ取得を行う予定であった。しかし,生体を対象とした場合の適切な超音波計測条件に関する検討を進める中で,集束波を送信した場合に比べて,非集束波を用いた場合には空間分解能および計測精度が低下することで,超音波信号の多周波数における位相差を用いたとしても,心筋厚み変化速度の局所的かつ安定な計測が困難であったことから,研究課題を達成するために超音波計測条件の見直しと計測精度をさらに向上させる手法の開発が重要と考え,超音波信号の包絡振幅値の重心を用いた心筋厚み変化速度計測の補正に至った。その結果,心筋厚み変化速度の局所的な計測において,超音波信号の包絡振幅値の重心を用いて誤差を補正でき,計測精度を向上できると確かめられた。これにより,心筋虚血による瞬時厚み変化速度の変化を高精度に検出することができれば,これまでの計測法では困難であった極早期段階の心筋虚血の検出や,虚血領域の空間的な広がりの可視化による,虚血性心疾患の定量診断の実現が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,虚血心筋における厚み変化速度を計測し,正常心筋の厚み変化速度との差異から,心筋虚血領域同定法の開発を目指す。冠動脈の圧迫駆血により心筋虚血を誘発した開胸ブタ心臓において,駆血後わずか数秒における心筋厚み変化速度の異常の検出を試みる。これまでに,心筋厚み変化速度の超音波計測により心筋虚血を検出する指標として,収縮期および拡張期における厚み変化速度波形の絶対値や電気的興奮に呼応する心筋厚み変化の伝播速度が用いられてきた。しかし,心筋厚み変化速度計測の局所性が低い従来法では,いずれの指標を用いた場合でも,駆血後わずか数秒における異常を検出することはできていない。そのため,本研究における心筋厚み変化速度の局所的な計測により,心周期のすべてにおいて虚血心筋と正常心筋の心筋収縮特性の差異を明らかにし,極早期段階の心筋虚血を検出するための適切な指標について検討を行う。 また,虚血性心疾患の診断に臨床応用するにあたり,計測した結果とともにその信頼性を提示することは重要であるため,計測結果の信頼性を定量化する手法を開発する。
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