研究課題
特別研究員奨励費
巨大地震発生時に想定される人命危機や交通網寸断などの被害対策として,構造物に生ずる部材のき裂進展,強度低下,崩壊といった現象を連 続的に評価することが求められる.本研究では,部材のき裂進展(ミクロ)と構造物全体の強度予測(マクロ)という異なる破壊スケールや, 構造物が健全な状態から崩壊に至るまでの異なる破壊ステージといった,スケール・ステージ間の相互影響を包括的に評価可能なマルチスケー ル・マルチステージ破壊理論を連続体力学の枠組みで創成する.また,提案手法を用いた数値シミュレーションを実施し,類似被害との比較・ 検討を行い,土木分野における補修・点検および防災・減災への応用を目指す.
本研究では,大変形や部材分離に伴う大回転問題を考慮した,破壊力学及び損傷力学の利点を併せ持つ遷移理論を構築した.まず,連続体力学における有限変形の枠組みにおいて,任意き裂の発生・進展・分岐をエネルギー最小化問題の解として予測する「phase-fieldき裂モデル(PFモデル)」の定式化を行った.PFモデルは不連続き裂面を正則化して 連続的な損傷領域として表現するため,構造物の崩壊で想定される部材の分離を表現することが不可能であった.そのため,定式化したPFモデルに,状態変数や物理量の不連続性を実現する「有限被覆法」の概念を統合し,き裂遷移理論を構築した.これにより,任意き裂進展問題はエネルギー最小化問題の解として予測する一方で,き裂経路は不連続なき裂面として記述される遷移理論が完成した. 得られた遷移理論をインハウスの有限要素プログラムへの実装を行い,モード1やモード2破壊試験などの数値シミュレーションを実施し,提案手法の性能や妥当性の確認を行った.その後,提案手法を動的問題・弾塑性問題への拡張を行った.具体的には,塑性ひずみ・運動・散逸エネルギーを考慮したエネルギー保存則に対して,変分原理を用いた勾配損傷モデルの定式化を再度行った.これをインハウスの有限要素プログラムへと実装した上で,陰的き裂から陽的き裂へと遷移させるアルゴリズムの改良を適宜行った.提案手法は,塑性・損傷の双方に対して非局所手法を採用しているため,メッシュ依存性が小さいという利点がある一方で,陰的き裂(剛性低下要素)は陽的き裂へと遷移するため,従来法で課題となっている要素の破綻による数値シミュレーションの発散を抑制する.これらの改良を経て,提案手法は不連続き裂面を有する三次元動的・弾塑性破壊の数値シミュレーションが可能となった. これらの研究成果は,国内外の学会および学術論文として発表している.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件)
日本計算工学会論文集
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