研究課題
特別研究員奨励費
反強磁性体は外部磁場からの擾乱に強く、THz帯域の共鳴周波数を有することから、磁気メモリデバイスの高密度化及び高速化をもたらす材料として期待されている。本研究では反強磁性結合強度を層厚変調により制御できるPt/Co/Ir/Co/Pt金属人工格子に着目し、系統的な実験及び理論計算を駆使することで反強磁性磁気構造と反強磁性磁気構造の制御に有用だとされる電子スピン流の相互作用に対する理解を深める。特に、近年発見された反対称層間交換結合を活用し、電流誘起磁化反転における素子形状及びパルス電流幅の最適化や磁化反転速度の定量評価を通じて反強磁性デバイスの低消費電力化及び高速化に向けた指針を提示する。
これまで、熱酸化Si基板上に成膜をした多結晶Pt/Co/Ir/Co/Pt構造において、層厚傾斜を導入することにより反対称層間交換結合(Antisymmetric interlayer exchange coupling: AIEC)を調べてきたが、層厚の不均一性などによりAIECの方向が定まらないという課題があった。そこで、Al2O3 (0001)基板を用いて下部Pt層を300 °Cで成膜することにより、エピタキシャル成長した反強磁性結合Pt/Co/Ir/Co/Pt構造を作製し、さらに異方的な形状を有するナノデバイスに加工するアプローチをとることで、従来と比較して層厚不均一性に由来する課題点を抑制することを目指した。また、これまでに得られたPt/Co/Ir/Co/Pt構造におけるAIEC及び電流誘起磁化反転に関する成果をまとめ、国際学会Intermag 2023などで成果発表を行った。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Applied Physics Letters
巻: 122 号: 16 ページ: 162402-162402
10.1063/5.0140328