研究課題/領域番号 |
22KJ0282
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補助金の研究課題番号 |
22J20080 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26060:金属生産および資源生産関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東 料太 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | カーボンニュートラル / ゼロカーボンスチール / CCUS / 浸炭 / 溶銑製造 / 炭材内装鉱 |
研究開始時の研究の概要 |
CO2を排出しないゼロカーボンな鉄鋼材料の製造は今後のカーボンフリー社会には必要不可欠である。鉄鉱石と炭材の粉末を混合造粒した炭材内装鉱を用いることで、従来の高炉法と比較して高速に溶銑を得られることが報告されている。また、水性ガスシフト逆反応(CO2+H2→CO+H2O)と炭素析出反応(2CO→C+CO2)を組み合わせることによって、CO2から微粉炭素を分離回収することが原理的には可能である。 本研究では、この手法で回収した炭素を用いた炭材内装鉱を原料として溶銑を製造し、そこで発生したCO2含有ガスを再び炭素の分離回収工程へ循環させる炭素循環製鉄プロセスを提案し、実現化に向けた検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的はゼロカーボンスチールを実現する炭素循環製銑プロセスの技術原理を提案し、その実現性を基礎的に検討することである。令和5年度は主に繊維状多孔質鉄の炭化速度評価と析出炭素を用いた炭材内装ヘマタイトコンポジットの還元後の溶融挙動の解明を試みた。 試薬ヘマタイトと木炭の混合粉末の熱炭素還元により作製した繊維状多孔質鉄に600℃から800℃の温度範囲にて常圧COガスを流通させることで、炭化反応を進行させた。繊維状多孔質鉄は、金属鉄粒子と比較しておよそ3倍の炭化速度を示した。これは繊維状多孔質鉄の有する気孔の径は数百μm以上と非常に大きく、ガス分子が拡散しやすいためと考えられる。分子拡散によりガスが拡散する気孔の表面積を有効表面積とし、繊維状多孔質と金属鉄粒子それぞれの有効表面積あたりの炭化速度を評価すると、両者はほぼ一致した。また、CO-CO2-H2混合ガス条件における繊維状多孔質鉄の炭化実験を行い、先端にナノサイズの粒子を有する繊維状炭素の析出を確認した。 回収した析出炭素には金属鉄に結合した炭素および繊維状炭素の2種類の炭素が含まれる。全炭素量は一定のまま、結合炭素と繊維状炭素の割合をパラメータとして変化させた析出炭素とヘマタイト試薬を混合・圧粉成型して、炭材内装ヘマタイトコンポジットを作製した。赤外線加熱炉内にコンポジットを装入し、不活性雰囲気下で室温から1300℃まで昇温させた。いずれのコンポジットも850℃付近で急速な還元反応を示し、およそ1000℃でほぼ全量の酸化鉄が金属鉄まで還元された。一方で最大還元速度は繊維状炭素割合と正の相関が認められた。また、繊維状炭素の含有割合の大きいほど1300℃昇温後のコンポジットは顕著に溶融した。繊維状炭素を炭材内装鉱の原料に用いることにより、被還元性および浸炭に伴う溶融速度が飛躍的に向上することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多孔質鉄を基材とする炭素析出実験を行い、析出物の形態や炭素析出速度を定量評価した。そして、金属鉄の炭化速度の向上因子を明らかにした。また、析出炭素を用いて調製した炭材内装ヘマタイトコンポジットの還元および溶融挙動を調査し、繊維状炭素が還元鉄の浸炭溶融を促進するだけでなく、酸化鉄の還元速度を向上させる可能性を示した。さらに、当初は想定されなかったコンポジットの完全溶融挙動も確認された。これらの結果から、提案する炭素循環製銑プロセスの実現に向けて良好な研究成果が得られており、その一部は、すでに国際学会で発表している。さらに国際誌に2報筆頭著者論文を投稿した。当初は炭材内装コンポジットの溶融速度を評価する予定であったが、想定よりプロセスの実現に対して好ましい溶融挙動が確認されたため、実験計画を微修正した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、5年度に引き続き得られた研究成果をもとに国際誌に投稿する。また、繊維状炭素の生成機構を明らかにする予定である。具体的には、粉末XRDのその場解析により、繊維状多孔質鉄の炭化過程における結晶相の時間変化を観察する計画である。そして、SPring-8のビームラインを用いたX線CT法による3次元構造解析によって、析出炭素を用いた炭材内装鉱の還元および溶融機構を解明する。これらにより、炭素循環製銑プロセスの実現に向けた原料設計の最適化を図る。
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