研究課題/領域番号 |
22KJ0284
|
補助金の研究課題番号 |
22J20138 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井手 皓太 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | ディスコハブディン / アトカミン / 全合成 / 抗腫瘍活性 / 共役付加反応 / アルカロイド / 連続反応 / ピロロイミノキノン骨格 / N'Sアセタール |
研究開始時の研究の概要 |
硫黄含有discorhabdin類は、抗腫瘍活性など、有用な生物活性を示す海洋アルカロイドであり、50種類以上にまたがる類縁体が現在までに単離 されている。しかし、本天然物群の窒素、硫黄、および酸素で高度に官能基化された複雑な多環性骨格の構築は容易ではなく、これまでに一種の全合成が達成されたのみで、ほとんどの類縁体の全合成が達成されていない。この背景のもと、本研究では、discorhabdin B をプラットフ ォームとした独自の合成戦略によりdiscorhabdin類の網羅的全合成を目指す。
|
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、チオディスコハブディン類縁体の網羅的全合成を目的に合成研究に取り組んだ。本年度はオレフィンの位置が異なる3つのオクタコサトリエン酸を合成し、前年度に全合成を達成したディスコハブディンLとのカップリングにより、1-オクタコサトリエノイルディスコハブディンLの提唱構造3種の合成に成功した。ディスコハブディンBダイマーは、ディスコハブディンBのC1位に対し、単量体のN,S-アセタールが開裂して生じた遊離のチオールが付加した構造を有する二量体型天然物である。本年度は、本化合物の合成法に関して種々検討した結果、ディスコハブディンBの単量体からダイマーを与える反応条件を確立し全合成を達成した。また、得られた知見を基盤に、ピロロイミノキノンアルカロイドの一種であるアトカミンの合成研究に取り組んだ。その結果、中央の7員環部分を形成するためのユニット合成に成功した。本年度に得られた成果は、チオディスコハブディン類の網羅的かつ効率的供給を可能にするための基盤技術であり、これまで、天然からの量的供給が少ないため創薬リードとしての利用が困難であった類縁体群を用いた創薬研究が、今後促進されるものと考えている。また、アトカミンの合成研究で得られた8-オキサ-2-アザビシクロ[3.2.1]オクテン骨格構築に関する知見は、今後、アトカミンの初の全合成の達成のみならず、硫黄原子を含む多環性複雑天然物の合成に有益であると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、本年度はチオディスコハブディン2種の全合成に成功し、本化合物群の網羅定的全合成を主眼に置く本研究課題を進展させることができた。さらに、本年度は、チオディスコハブディンの合成研究のみにとどまらず、ピロロイミノキノンアルカロイドの一種であるアトカミンの合成研究に着手し、これまでにチオディスコハブディンの合成研究で得られた知見を活用することにより、主要骨格形成に必要な2つのユニットの合成法を確立し、8-オキサ-2-アザビシクロ[3.2.1]オクテン骨格構築に向けて効大きく進展させることができた。以上より、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、引き続きチオディスコハブディンの網羅的全合成およびアトカミンの全合成研究に注力する。チオディスコハブディンに関しては、さらに網羅的全合成を推し進め、具体体には類縁体3種類以上の全合成を目指す。また、論文投稿に向けて、各段階の収率向上など合成経路全体を精査する。アトカミンについては合成を完了している左部(2-アミノジヒドロベンゾチオフェン)の量的供給法に加え、不斉全合成のための光学活性体合成についても検討を行う。右部(ピロロイミノキノン)については、これまでに確立した手法によりデカグラムスケールでの供給を目指す。アトカミンの有する中央7員環を部分の構築に関しては、ピロロイミノキノンとの連結を閉環メタセシスにより行う手法や、分子内ヘック反応を利用する条件などを種々検討し、最適な方法を見出す。その後、アトカミンのラセミ全合成を行い、ラセミ合成が完了し次第、不斉合成への適用を検討する。
|