研究課題/領域番号 |
22KJ0288
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補助金の研究課題番号 |
22J20257 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鍵 智裕 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | NLRP3インフラマソーム / 抗炎症薬 / 炎症性疾患 / ドラッグリポジショニング |
研究開始時の研究の概要 |
NLRP3インフラマソームは広範な化学物質を認識することで炎症反応を惹起する生体防御において重要な自然免疫システムである。一方で、NLRP3インフラマソームの過剰活性化は痛風や肺炎など多種多様な炎症性疾患の発症に関与することが知られている。しかしながら、NLRP3インフラマソームが関与する炎症性疾患は未だに有効な治療法が確立されていない。申請者はβ-ラクタム系抗菌薬のある一群がNLRP3インフラマソームの活性化を強力に抑制することを発見した。そこで本研究では、安価で副作用の少ない画期的な抗炎症薬としての抗菌薬のドラッグリポジショニングを最終目標とし、安全性や有効性を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
NLRP3インフラマソームは、内因性の生理活性物質や代謝物、病原体など広範な化学物質を認識することで炎症反応を惹起することから、幾つか種類があるインフラマソームの中でも感染・生体防御にとって最も重要である。一方で、NLRP3インフラマソームの過剰な活性化は痛風や肺炎など多種多様な炎症性疾患の発症の原因となることが知られている。しかしながら、NLRP3が関与する炎症性疾患は未だに有効な治療法が確立されていない。申請者らは、β-ラクタム系抗菌薬CAN3I(特許出願中のため仮称を用いる)が、抗菌作用とは別に、NLRP3インフラマソームの活性化を強力に抑制することを発見した。そこで本研究では、新たな抗炎症薬としてCAN3Iの臨床応用を目指すために安全性や有効性を確立することを目的とする。 本年度の研究では、主にCAN3IによるNLRP3インフラマソーム阻害機構として、活性酸素に着目した解析を行った。これまでの解析から、CAN3IがNLRP3インフラマソームの活性化の起点となるミトコンドリア由来の活性酸素種の産生を抑制することが分かっていたが、その機序は不明であった。今年度の解析では、CAN3Iがミトコンドリアにおいて活性酸素の一種であるヒドロキシラジカルを産生することが明らかにし、CAN3IによるNLRP3インフラマソームの阻害にはヒドロキシラジカルの産生が必須であることを見出した。さらに、CAN3Iによるヒドロキシラジカルの産生に関わる分子を特定するため、ミトコンドリア関連因子の欠損細胞を樹立した。また、CAN3Iのマウス体内動態の解析を行い、NLRP3インフラマソーム抑制剤として十分な血中濃度に保つための投与方法を見出した。さらに、NLRP3インフラマソームの過剰活性化が主因となるマウス病態モデルとして薬剤性腎炎モデルや薬剤性間質性肺炎モデルの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、CAN3IによるNLRP3インフラマソーム阻害機構として、活性酸素に着目した解析を行った。これまでの解析から、CAN3IがNLRP3インフラマソームの活性化の起点となるミトコンドリア由来の活性酸素種の産生を抑制することが分かっていたが、その機序は不明であった。今年度の解析から、CAN3Iはミトコンドリアにおいて活性酸素の一種であるヒドロキシラジカルを産生することが明らかとなり、CAN3IによるNLRP3インフラマソームの阻害にはヒドロキシラジカルの産生が必須であることが判明した。したがって、予めCAN3Iによりヒドロキシラジカルが産生されることで、NLRP3活性化刺激によるミトコンドリアにおける活性酸素種の産生が抑制されている可能性が考えられた。これは、既存のNLRP3インフラマソーム阻害剤の作用機序とは全く異なる可能性が極めて高い。さらに、CAN3Iによるヒドロキシラジカルの産生に関わる分子を特定するため、ミトコンドリア関連因子の欠損細胞を樹立した。 また、炎症病態モデルに対する最適な投与方法を検討するため、CAN3Iが抗菌活性を有することを利用し、血清の抗菌活性評価を基にCAN3Iの体内動態を測定した。その結果、複数回に分けて腹腔内投与を行う、またはCAN3I含有餌を給餌することにより、NLRP3インフラマソームム抑制剤として十分な血中濃度が保たれることが判明した。また、NLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスの構築も行った。具体的には、薬剤性腎炎モデルや薬剤性間質性肺炎モデルにおいてIL-1βの過剰放出が観察できる条件を見出した。 以上の結果は、CAN3Iの臨床応用を目指すための安全性や有効性の確立を達成するという点において、極めて大きな成果であると考えている。よって、当該年度に遂行した解析は順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、CAN3IによるNLRP3インフラマソーム阻害機構として、CAN3Iによるヒドロキシラジカル産生の重要性が示唆されたことに加え、CAN3Iの炎症病態モデルマウスに対する投与方法の検討と、NLRP3インフラマソームの過剰活性化が主因となる炎症病態モデルの構築に成功した。次年度は、今年度構築したNLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスにおいて、CAN3IがIL-1βの過剰放出を抑制するか検討する予定である。一方で、CAN3Iによるヒドロキシラジカル産生機構は未だ不明である。次年度は、樹立したミトコンドリア関連因子の欠損細胞を用いてヒドロキシラジカルの産生に関わる分子を特定する。さらに、ヒドロキシラジカルの産生によってNLRP3活性化刺激による活性酸素種の産生が抑制される機構について、特に活性酸素種の種類に着目して解析を進め、既存とは全く異なる、画期的な新規NLRP3インフラマソーム阻害薬の開発に繋げる。
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