研究課題/領域番号 |
22KJ0294
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補助金の研究課題番号 |
22J20735 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
千田 晃生 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 多孔性炭素 / 電極触媒 / シングルサイト触媒 / 金属ポルフィリン / 規則構造性炭素化物構造体 / 多孔性炭素材料 |
研究開始時の研究の概要 |
規則性炭素化物構造体(OCF)は、有機金属錯体由来の3次元的規則構造・ミクロ多孔性を有する上、熱・化学的安定性や導電性といった炭素材料としての特性を持ち併せている。また、OCF中には活性種となるシングルサイト金属が原子状分散して固定化されており、電極触媒材料としての応用が有望視されている。本研究では前駆体分子の設計に着目し、細孔構造や活性点近傍の電子状態などが、所望の反応系に適したテーラーメードな設計を行う。有機金属錯体を用いて緻密に構造設計された本材料は、多岐にわたる反応を高効率で活性化させる触媒となるだけでなく、炭素材料への明確な分子論的理解を促進させることが期待される。
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研究実績の概要 |
近年、金属有機構造体(MOF)のような有機系結晶が、多孔性炭素材料の前駆体分子として利用さているが、有機系結晶由来の3次元的規則構造性は炭素化過程中に崩壊し、従来の多孔性炭素と同様にアモルファスな構造となることが知られている。この点において、熱重合部位を有する金属ポルフィリンを前駆体分子として採用すると、熱処理後も有機系結晶由来の規則構造性を維持した特異な炭素材料である規則性炭素化物構造体(OCF)が得られる。しかしながら、OCF中に固定化されている金属種はNiやFeのみに限られており、報告されている前駆体分子種も少ないことが課題である。当該研究では、前駆体分子の設計に着目し、OCFの細孔構造や活性点近傍の電子状態などが、所望の反応系に適したテーラーメードな設計を行い、OCFを幅広い触媒応用展開が可能な新たなプラットフォームとすることを目的としている。 本年度は、これまでに得られたOCFの種々の電極触媒反応への利用を検討した。また、オランダ・アイントホーフェン工科大学に3カ月間滞在し、本材料の熱触媒としての利用も試みた。以上のように、これまでに合成したOCFを熱および電極触媒として幅広い利用を検討した。 さらに、OCFの調製においてカギとなる前駆体分子への熱重合可能官能基の導入は、OCFだけでなく、高収率な多孔質炭素材料調製においても有効な手法であることを見出した。この分子設計指針を基に、硫黄種含有分子に熱重合可能部位を導入し、熱処理を施すと、従来では調製困難であった高濃度で硫黄種が導入された多孔質炭素材料の調製が可能となった。さらに、本材料はシングルサイト白金の触媒担体として機能することが明らかとなった。得られたシングルサイト白金担持硫黄含有多孔質炭素は、燃料電池のアノード側で起こる水素酸化反応に対して優れた触媒性能を発揮した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、単核金属種を有するOCFの合成および電極触媒応用を行っている。これまでに、OCFの課題であった低多孔性・導入される金属種の乏しさを解決し、多孔性の発達したOCFおよび新たな金属種としてCoあるいはCuが固定化されたOCF、さらには、異種の単核金属種が固定化されたOCFの調製に成功している。これに加えて、OCFとなりうる前駆体分子種を新たに2件報告している。当該年度は、これまでに得られているOCFを、その金属種に応じて任意の電極触媒反応に対する触媒としての利用を試みた。また、オランダ・アイントホーフェン工科大学に3カ月間滞在し、熱触媒評価およびin-situ測定に関する知識や技術を習得しながら、OCFの熱触媒としての利用を検討した。 さらに、当該年度はOCFの調製においてカギとなる前駆体分子への熱重合可能官能基の導入は、OCFだけでなく、高収率な多孔質炭素材料調製においても有効な手法であることを見出した。この分子設計指針を基に、硫黄種含有分子に熱重合可能部位を導入し、熱処理を施すと、従来では調製困難であった高濃度で硫黄種が導入された多孔質炭素材料の調製が可能となった。さらに、導入された硫黄種の化学構造は前駆体分子中の硫黄種を引き継いでおり、均一な化学構造を有する硫黄種が高濃度に存在することで、本材料はシングルサイト白金の触媒担体として機能することが明らかとなった。得られたシングルサイト白金担持硫黄含有多孔質炭素は、燃料電池のアノード側で起こる水素酸化反応に対して優れた触媒性能を示した。 当該年度において主著として1報、共著として6報、計7報の論文(内4報は投稿中)を投稿したほか、国内外にて6件の学会発表を行った。以上の研究結果から、当該研究は現在まで当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、シングルサイト金属種が規則的に配列した規則性多孔質炭素材料の、触媒応用に応じたテーラーメード合成を目的としている。これまでの研究で得られた知見・材料をもとに、次年度は以下のアプローチで、本材料の触媒材料としての高機能化を試みる。 これまでの研究で、OCFとなる前駆体分子の種類を変えることで、OCF中のシングルサイト金属間距離が調製できることが明らかとなっている。そこで、これらの材料を任意の同一の触媒反応に適応し、シングルサイト金属間距離が触媒反応に及ぼす影響を調査する。また、in-situ手法を適応することでメカニズムの解明や触媒性能の違いの原因等の調査にも注力する。 また、これまでの検討により、OCFとなり得る前駆体分子設計指針が確立されてきている。これまでは単一の分子の熱処理よりOCFの調製を行ってきたが、単一の分子だけでの分子設計だけではその幅が制限される。そこで、複数の分子を掛け合わせた設計を行うことで、OCFの化学・細孔構造のより緻密な調製が可能となることが期待される。上述の触媒性能の結果および本指針をもとに、より高機能化ができるようなOCFの設計指針を提案する。 さらに、これまで同一のフレームワークを有する異種金属含有ポルフィリンを混合・熱処理することで、シングルサイト金属種が高分散しながら固定化されたOCFの調製に成功している。本材料中には異なるシングルサイト金属種がÅレベルで近接しているため、新規触媒システムの開発の他にも任意の反応に対して協奏的な触媒作用を示すことが期待される。そこで、次年度では上記のような材料を任意の触媒材料として適用することを試みる。
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