研究課題/領域番号 |
22KJ0317
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補助金の研究課題番号 |
22J22810 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土本 菜々恵 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 連星中性子星合体 / キロノバ / rプロセス |
研究開始時の研究の概要 |
連星中性子星の合体現象は速い中性子捕獲元素合成 (rプロセス) の起源天体の有力な候補である。本研究では、中性性合体からの電磁波放射の観測データから個々の元素についての情報を引き出すことを目的に、詳細な輻射輸送シミュレーションによって中性子星合体からの電磁波放射のスペクトルに現れる特徴を調べる。結果を観測データと直接比較し、実際に合成された元素の種類や量を求めることで、宇宙における重元素の起源を明らかにする。
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研究実績の概要 |
連星中性子星の合体現象は速い中性子捕獲元素合成 (rプロセス) の起源天体の有力な候補である。本研究計画ではこれまでに、中性子星合体からの電磁波放射からrプロセスで合成された元素の情報を引き出すことを目的に、スペクトルの吸収特徴に着目した研究を行ってきた。これに必要な重元素の束縛遷移の新しい原子データを構築し、中性子星合体からの電磁波放射の詳細な輻射輸送シミュレーションを行ってスペクトルを計算してきた。これを2017年に観測されたスペクトルのデータと比べることで、赤外線に見られる吸収特徴をランタン(原子番号57)とセリウム(原子番号58)で説明できることを初めて示した。一方、このセリウムの束縛遷移は遷移波長が実験的に知られているものの、遷移確率は理論的な計算しか存在しておらず、その値を実験的に精査する必要があった。そこで当該年度は近赤外線における恒星の高分解能分光観測データを用い、セリウムの束縛遷移の遷移確率の推定を行った。セリウムの吸収線が見られる恒星の分光データをアーカイブデータから集め、文献で求められている恒星の大気パラメータなどを用いてモデリングを行うことで、これを可能にした。結果、理論計算とは独立に得られた推定値は、文献から得られる複数の理論計算の結果と誤差の範囲で大まかに一致した。新たな推定値を用いて再度中性子星合体からの電磁波放射の計算を行うことで、セリウムの吸収特徴が依然として顕著に現れることを確認し、セリウムの同定という自らの結果を確たるものにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書では、近赤外線域における恒星の高分解能分光観測データを用いた束縛遷移の遷移確率の推定を最終年度に行うことを計画していた。当該年度はこれを前倒しし行った点で概ね順調に進展していると言える。一方、当初は中性子星合体からの電磁波放射の詳細な輻射輸送シミュレーションを2次元に拡張し、現実的な中性子星合体からの放出物質の構造を考慮することを計画していたが、現在は1次元球対称を仮定した単純なモデルにとどまっている。また重力波観測は昨年再開されたものの、中性子星合体からの重力波の検出自体の数が少なく、それに伴う電磁波放射の発見には至っていないため、新たな観測データとの比較も行えていない。以上の観点から、研究計画全体としてはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに調べてきた吸収特徴について、定量的にそれらが現れる条件までは調べられていない。よって多様な放出物質のモデルを構築し、輻射輸送シミュレーションによって異なる質量や速度、元素組成によるスペクトルへの影響を調べる。現実的な中性子星合体の放出物質を考慮した多次元 (2次元) 計算を行うことが理想的だが、計算コストが高く、また結果の解釈も複雑になるため、まずは1次元でこれを模倣し、スペクトルの振る舞いを理解する。
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