研究課題/領域番号 |
22KJ0318
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補助金の研究課題番号 |
22J22839 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 裕晃 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 地殻強度 / 方解石 / 変形双晶 / 差応力 / 面転位理論 / 脆性-塑性遷移領域 / 変形実験 / 石英 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、脆性―塑性遷移領域付近での地殻強度を解明することを主目的とする。その方法として、2つの鉱物(石英と方解石)を用いた研究を行う。石英を用いた研究では、脆性―塑性遷移領域下部を想定した環境での石英(低温型石英)の変形実験を行い、構成則の構築と変形時の応力・歪速度を推定する手法の確立を目指す。方解石を用いた方法では、脆性―塑性遷移領域上部で塑性変形した天然の石灰岩試料(方解石が主要鉱物)の組織解析により、変形時の応力・歪速度を推定する。これらを合わせることで、脆性―塑性遷移領域周辺での地殻強度を統一的に理解する。
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研究実績の概要 |
2023年度は研究課題の計画を進めるために、方解石の変形双晶が岩石の強度に与える影響について理論的研究をおこなった。方解石の変形実験により、変形時の差応力が増加すると方解石の変形双晶の密度(粒径に対する変形双晶の本数)が増加することは分かっていたが、その理論は十分に研究されてこなかった。そこで、マルテンサイト境界で用いられている面転位理論を変形双晶境界に適用すると、双晶面に存在する面転位は通常の転位とみなすことができる。これにより面転位密度は通常の転位密度と捉えることができ、双晶密度は転位密度と等価であるといえる。したがって、差応力は双晶密度の平方根に比例することが理論的に示すことができた。これは、実験から得られている結果と調和的であり、双晶密度と差応力の関係の物理的背景を説明できることを示唆している。この成果は、2024年7月開催の国際学会DRT(Deformation mechanisms, Rheology and Tectonics)に投稿した。 上記の結果を用いると、変形双晶がみられる天然の岩石(すなわち、過去に変形を被ったもの)の変形双晶密度の測定によって、変形時の差応力推定をより制約することができる。そこで野外地質調査を行い、南部北上帯に属する石灰岩試料(方解石により構成)を採取した。採取した試料中の方解石粒子中には変形双晶が観察され、過去に変形を受けていることが明らかになった。したがって、採取した石灰岩試料の微細組織の観察及び結晶方位の分析により、採取した石灰岩が過去にどの程度の差応力下で変形したか(地殻強度がどれくらいか)を推定する手掛かりとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は方解石の変形双晶密度と差応力の関係について理論的に示すことができた。これにより、変形した石灰岩から変形当時の差応力を推定することがより制約することができる。さらに変形石灰岩の天然試料も採取できたため、今後は変形石灰岩の変形組織の解析により、変形時の差応力推定にすぐ着手できる状態である。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に採取した変形石灰岩試料の微細組織観察および結晶方位解析を行う予定である。2023年度に示した方解石双晶密度と差応力の関係を用いて変形当時の差応力を推定し、地殻強度を明らかにする。 さらに、2024年度は石英を用いた方法では高温・高圧での変形実験の実施を予定している。低温型石英(α-石英)が安定な領域(封圧~ 2 GPa/温度600 -1000 °C、地殻の脆性―塑性遷移領域下部を想定)での石英の変形実験を行い、実験後の物理データの解析および微細組織解析により、変形 時の応力・歪速度を推定する手法の確立を目指す。 得られた成果は、日本地質学会(2024年9月開催予定)や、国際学会EGU(ヨーロッパ地 球科学連合, 2025年4月開催予定)に投稿を予定している。
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