研究課題/領域番号 |
22KJ0319
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補助金の研究課題番号 |
22J22908 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊谷 政仁 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | イジングマシン / 量子コンピュータ / HPC / 量子アニーリング / クラスタリング / 組合せ最適化問題 / 制約付き最適化問題 / 機械学習 / QUBO / 組合せ最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
機械学習は,製造,物流,交通,社会インフラ,金融,医療など広範な産業範囲で活用されている.より高性能な機械学習を実現するために,GPUやベクトル計算機などをアクセラレータとして用いる高性能計算技術の研究開発が行われているが,機械学習において頻出する組合せ最適化問題は,高性能計算技術でも膨大な処理時間がかかる.近年,組合せ最適化問題を高速に解くことに特化したイジングマシンが注目を集めている.本研究は,機械学習を高性能化するために高性能計算技術とイジングマシンの連携計算方式を創出することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,イジングマシンと高性能デジタル計算機の連携による機械学習の高性能化を目指している.イジングマシンを用いて機械学習を解く場合,離散変数をバイナリ変数で符号化しバイナリ変数間の相互作用を定義する前処理を行った後,符号化されたバイナリ変数で構成されるエネルギー関数が最小になるように最適化を行う.本年度は,イジングマシンの実用化に向けて,前処理計算の効率化及びイジングマシンを用いた機械学習の実証検証に取り組んだ. 前処理においては,最適化と同程度かそれ以上の時間が必要とされており,最適化処理と同様に高速化を検討する必要がある.これまでナイーブな方法で行われていた前処理を行列計算で置き換える方法を提案した.提案手法において,行列計算は高性能計算機上で実行され,従来手法に比べて大幅な高速化が実現された.また,イジングマシンを用いるための前処理には,相互作用を定義するために専門知識が必要であり,実用化に向けた利用のハードルが高いことが課題となっていた.クラスタリングに特化した前処理を行うフレームワークを提案した.本フレームワークは,イジングマシンに関する専門知識がなくても様々なクラスタリングアルゴリズムをイジングマシンで実行することができるものである. 次に,イジングマシンを用いた機械学習の実アプリケーションを検討した.イジングマシンは組合せ最適化問題を高速に解くことで注目されているものの,実際の応用事例は未だ多く報告されていない.開発したフレームワークを用いて,実際に企業が抱えるビジネス課題の解決に取り組み,既存のビジネス運用に比べて,30%程度の効率改善を実現した. 本年度の取り組みで,前処理のための高性能計算利用と最適化のためのイジングマシン利用による連携実現が実現された.今後はさらなる実応用に向けて,制約付き最適化問題を解くためのイジングマシンの運用を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,イジングマシンと高性能デジタル計算機の連携による機械学習の高性能化を目指している.本年度は,イジングマシンの実用化に向けて,前処理計算の効率化及びイジングマシンを用いた機械学習の実証検証に取り組み,学術雑誌への掲載1回,国内学会発表3回,国外学会発表2回の成果を挙げた.そのうち主著での発表は3回である.また,研究成果の実用化に向けたアイデアコンテストや大学内の発表会にて2件の受賞とメディアへの掲載が1回あった. 学術雑誌においては,これまでナイーブな方法で行われていた前処理を行列計算で置き換える方法を提案した.提案手法において,行列計算は高性能計算機上で実行され,従来手法に比べて大幅な高速化が実現された.また,この成果を活用して,国内の学会発表では,クラスタリングに特化した前処理を行うフレームワークを提案した.本フレームワークは,イジングマシンに関する専門知識がなくても様々なクラスタリングアルゴリズムをイジングマシンで実行することができるものである. 次に,イジングマシンを用いた機械学習の実アプリケーションを検討した.イジングマシンは組合せ最適化問題を高速に解くことで注目されているものの,実際の応用事例は未だ多く報告されていない.開発したフレームワークを用いて,実際に企業が抱えるビジネス課題の解決に取り組み,既存のビジネス運用に比べて,30%程度の効率改善を実現した. 本年度の取り組みで,前処理のための高性能計算利用と最適化のためのイジングマシン利用による連携実現が実現された.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の取り組みで,前処理計算の高速化および機械学習アルゴリズムの実応用が行われた.前処理計算はデジタルコンピュータ上で実行される必要があるものであり,高性能計算技術を活用して高速化する取り組みが行われた.一方で,前処理計算の後に行われる最適化計算は,量子コンピュータを用いることで高速に解が求まることが期待されている.今後は,量子効果を活用して最適化問題の解を効率的に求めることを検討する.現在,最適化アルゴリムは,デジタルコンピュータ向け及び量子コンピュータ向けの両方で検討が行われている.しかし,デジタルコンピュータ向けのアルゴリズムでは十分な高速化が見込めず,量子コンピュータ上の計算は数値精度が乏しく正確な計算が行われないという課題がある.今後は,両者の弱点を補うべく,量子コンピュータとデジタルコンピュータのハイブリッド計算による最適化を検討する. これにより,前処理と最適化の両方で高性能計算と量子コンピュータの利点を活用し,機械学習の進展に寄与する.
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