研究課題/領域番号 |
22KJ0329
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補助金の研究課題番号 |
22J10389 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田端 恵介 山形大学, 理工学研究科(理・工), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 電解質膜 / 粒子共存重合法 / イオン液体 / シリカナノ粒子 / 固体NMR |
研究開始時の研究の概要 |
未だ研究段階である高温作動型-固体高分子形燃料電池(HT-PEFC)の電解質膜作製プロセスを開発し、HT-PEFCの実用化やイオン伝導材料の発展に向けた材料設計指針を確立する。本研究では、高分子化イオン液体(PIL)を被覆したナノ粒子と架橋剤の光重合で得られるPIL被覆粒子充填膜を対象とし、高プロトン伝導性のPIL被覆粒子の作製と光重合を介した粒子間架橋により、簡便且つ大スケールでも実現可能な電解質膜作製プロセスを確立する。このPIL被覆粒子充填膜は、プロトンキャリアであるPILの流出を抑制でき、電解質膜全体で精緻にプロトン伝導経路を構築可能と云った利点を有する。
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研究実績の概要 |
100℃以上の高温・低湿度環境化で作動する、高温作動型固体高分子形燃料電池(HT-PEFC)用電解質膜の作製を目的とした。令和4年度の実施内容として、フィラー充填膜の構成部材となる高分子化イオン液体(PIL)被覆粒子の作製プロセスの開発及び、プロトン伝導性評価を実施した。 ナノ粒子表面への高分子被覆手法である粒子共存重合法を援用し、HT-PEFC用電解質膜の作製に着手した。PIL被覆粒子の作製に向けて、重合性カチオン:ポリ(1-ビニルイミダゾール)(P1VIm)とアニオン:TFSIの等量の混合物であるイオン液体モノマーを作製し、このイオン液体モノマーと真球状シリカナノ粒子を共存状態で重合させ、シリカナノ粒子表面にPILであるP1VIm/TFSIを被覆したPIL被覆粒子を作製した。 実施内容として、様々なイオン液液体モノマー濃度、粒径の異なるシリカナノ粒子を用いたPIL被覆粒子の作製プロセスの開発に成功した。PIL被覆粒子は乾燥粉体で得られ、これを圧着ペレット状態へと加工し、交流インピーダンス法を用いて圧着ペレットのプロトン伝導性を評価した。PIL被覆粒子は、160℃, 無加湿環境下で8.5×10^-5 [S cm^-1] のプロトン伝導度を達成し、圧着ペレットの垂直方向及び水平方向で同程度のプロトン伝導性を示すことも見出した。つまり、PIL被覆粒子を集積するのみで、等方的なプロトン伝導経路の構築に成功した。さらに、温度可変固体NMR測定を用い、P1VImのN-Hプロトンのシグナル位置より、プロトン伝導に有利な可動性プロトンの有無を確認した。その結果、可動性プロトンに割り当てられる位置にシグナルが観測され、ナノ粒子表面へのPILの被覆とPIL被覆粒子の集積によってプロトン伝導経路が構築され、PIL中のイオン液体部同士のプロトン伝導が促進されたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、「イオン液体モノマーの合成とPIL重合条件の確立」及び「粒子共存重合法によるPIL被覆粒子のワンステップ合成」に成功した。 重合性のビニル基を有し、適切なΔpKaを満たすイオン液体モノマーとして、1VIm/TFSIを選定し、粒子共存重合法への展開に向けて、このラジカル重合条件を見出した。また、粒子共存重合法により、シリカナノ粒子表面へのP1VIm/TFSIの被覆に成功した。これまでの進捗状況を鑑み、令和5年度には、HT-PEFCの作動環境でプロトン伝導可能なフィラー充填膜の作製が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、これまでに作製してきたPIL被覆粒子を用いたフィラー充填膜の作製と、PIL被覆粒子の高機能化及び解析を予定している。 作製したPIL被覆粒子と架橋剤、マトリックスを構成するモノマーやイオン伝導性架橋剤を混合したスラリーを調製し、光重合によってフィラー充填膜を作製する。また、プロトン伝導性を向上するべく、新たなイオン液体モノマーを用いたPIL被覆粒子を作製し、これを用いたフィラー充填膜の作製も試みる。さらに、令和4年度にも実施した温度可変固体NMR測定を用いた解析も継続する。
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