研究実績の概要 |
本年度は、前年度で検討したN末にMycタグを付加したClaudinファミリーの発現プラスミドの構築ならびに発現株の取得を進めた。Myc-Claudin-3, -11, -15, -2,-5についてプラスミドの構築・配列確認が完了したため、MDCK II 細胞株の5種類のClaudinを全てノックアウトしたqKO細胞株への安定発現株の取得を試みた。このうち、Myc-Claudin-3を安定発現する株のクローンの取得・単離に成功した。取得したMyc-Claudin-3安定発現細胞株を単層培養したところ、親株であるqKOよりも高い経上皮電気抵抗値(TER)を示し、またqKOよりも低い物質透過性を示したことからClaudin-3によるTJバリア形成能が十分であることが確認できた。このMyc-Claudin-3発現細胞単層に対してMA026処理を行ったところ、Claudin-1発現細胞と比較して約半分程度のMA026による物質透過性の上昇が見られた。この結果はMA026がClaudin-3よりもClaudin-1に対して高い標的選択性をもってTJを開口させることを示唆する。 また、CRISPRを用いてClaudin-1のみをノックアウトした細胞を作製し、層状に培養したものに対してMA026処理による物質透過性の検討を行ったところ、野生型細胞ではMA026処理によって物質透過性の上昇がみられたのに対し、Claudin-1ノックアウト細胞では野生型と比較して顕著な物質透過性の上昇がみられなかった。この結果はMA026のTJ開口活性の標的がClaudin-1であることを示唆する。 本研究は、細胞レベルでTJを形成するClaudinの発現の違いによってMA026のTJ開口活性の効果が異なることを明らかとし、MA026の主な標的がTJを構成するClaudin-1である可能性を提唱するものである。
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