研究課題
特別研究員奨励費
外側中隔(LS)における、エストロゲン受容体(estrogen receptor: ER)α及びβを介した攻撃行動及び不安様行動の制御が示唆されている。そこで本研究では、LSにおいてERαまたはERβが攻撃行動や不安の制御に果たす役割とそのメカニズムに関して包括的な理解を目指す。そのために、①RNA干渉法による両受容体の発現阻害が行動の表出に与える影響の検討②ERαまたはERβ陽性細胞の神経投射の検討③DREADDシステムを用いた細胞種特異的な神経活動操作を行う。
外側中隔(lateral septum: LS)に発現するエストロゲン受容体(estrogen receptor: ER)αとERβは、攻撃行動や不安の制御に寄与する可能性が示唆されている。特に、攻撃行動の制御にはERαとERβで異なる機能をはたすと考えられている。先行研究から、ERβは不安の制御に重要な役割を持つことが明らかにされており、LSにおいてERβは不安を介して攻撃行動の制御に関わる可能性がある。しかしながら、詳細な機能は依然不明である。そこで 本研究は、LSのERαとERβが、攻撃行動の表出に果たす機能の解明を目的とする。仮説として、ERαは直接攻撃行動を促進する一方で、ERβは不安の抑制を介して間接的に攻撃行動を抑制していると予想される。2021年度に遂行した実験1では、雄マウスのLSにおいてERαとERβの発現阻害を行い、攻撃行動及び不安の表出に及ぼす影響を検討した。その結果、LSのERβの発現阻害に伴い、社会的場面における不安が亢進することを明らかにした。この結果は、LSのERβが社会的場面における個体の不安レベルを抑制的に制御する可能性を示唆するものである。さらに、実験2において、LSのERαとERβがどのような神経回路上に発現するかについて、神経細胞種特異的な神経トレーサーの導入により検討する。それにより、LSの ERαとERβが異なる神経投射回路を通じて、行動の制御に異なる機能を果す可能性を明らかにした。これらの結果を受け、2023年度はLSのERβ陽性細胞の神経活動操作による攻撃行動並びに不安の制御への影響を検討した。その結果、LSのERβ陽性細胞の神経活動の亢進に伴い、社会的な不安が減弱することが示唆された。したがって、LSにおいてERβを介した作用並びにERβ陽性細胞の神経活動が、雄の社会的場面における不安の制御に寄与すると考えられる。
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Neuroscience
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10.1016/j.neuroscience.2023.11.019
筑波大学心理学研究
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