研究課題/領域番号 |
22KJ0356
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補助金の研究課題番号 |
21J20389 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鮎貝 崇広 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 2流体モデル / エネルギー保存式 / 気液二相流 / キャビテーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、多数の気泡を含む液体(気泡流)の運動を記述する基礎方程式のうち、運動量保存式とエネルギー保存式を導出する。特に、気泡・液体それぞれの保存式を独立に用いる2流体モデルに対して、気泡内圧力と液体圧力の他に、気泡表面における液体圧力という第3の圧力を導入することで、物理的に正しく数学的に厳密な保存式の開発を目指す。さらに、導出した基礎方程式の高精度数値解法を開発して数値計算することで、気泡流中での圧力波伝播を詳細に解析する。本研究で開発する基礎方程式や数値解法は、流体機械の安全性解析等の工学的応用に留まらず、医学分野(癌治療)や自然科学(マグマ気泡流)など幅広い分野への応用が期待される。
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研究実績の概要 |
ポンプ等の流体機械において、気泡の崩壊に伴う高圧や高温の発生(キャビテーション)は機器の損傷・騒音・振動を引き起こす。そのため、流体機械の安全性を評価する上で、キャビテーションを事前に予測することが必要不可欠である。本研究課題では、気泡崩壊時の高圧を表現可能な数学モデルである「体積平均化3圧力2流体モデル」に対して、新たにエネルギー保存式を導出することで、気泡崩壊時の高温や流れの熱減衰を表現可能な数学モデルを構築することを目的としている。本年度は、エネルギー保存式の導出と数学モデルの特性について、以下3点の研究実績を得た。 [1] 気液を区別するための不連続関数である相関数の2階導関数の近似手法を新たに考案した。これにより、エネルギー保存式において流れ場の熱減衰を表す項の平均化を達成したことに加え、気液界面におけるエネルギー項を温度勾配の形で定式化することに成功した。 [2] [1]において温度勾配の形で表した界面エネルギー項を、「気泡内部の熱伝導」と「気液間での熱伝達」の2効果に分離した。前者を「単一気泡に対する界面温度勾配モデル」で近似し、後者を液体に対するエネルギー保存式のエネルギー交換項を用いて閉じた。 [3] 線形安定性解析を行い、導出したエネルギー保存式を含む2流体モデルの安定性と減衰特性を明らかにした。結果として、エネルギー保存式のみを追加した2流体モデルは不安定であるものの、粘性を同時に考慮することで、実用的な条件下において安定になることが判明した。さらに、熱減衰に対しては「気液間での熱伝達」よりも「気泡内部の熱伝導」の方が支配的であることを明らかにした。 以上の成果は、国内外の学会にて発表し、International Journal of Multiphase Flow誌(IF=4.044)に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下を理由に、「2:おおむね順調に進展している」と区分した。 [1] 当初の計画通り、2021年度内に3圧力2流体モデルに対するエネルギー保存式の導出を完了させた。一方、エネルギー保存式の導出後に「適切性解析」の実施を予定していたが、研究の進展とともに2流体モデルの妥当性検証には「線形安定性解析」が適していると判断し、方針転換を行った。その結果、当初の予定と同等の目標を達成することができた。 [2] 計画していた査読付国際雑誌論文への採択を達成した。混相流分野において定評のあるInternational Journal of Multiphase Flow誌に採択されたことは、本成果の高い完成度と妥当性を示している。 [3] 本研究成果に対して、混相流シンポジウム2022にてベストプレゼンテーションアワードを受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー保存式の導出を通して確立した体積平均化数学モデルの開発手法を応用することで、本年度ではNewton流体に限定していた対象を、粘弾性体に拡張する予定である。以上は2流体モデルの一般化につながることから、水・空気系の流体機械に留まらず、生体やガラス溶融などの広範な対象に資する。次年度は、最も条件の厳しい「マグマ」に対象を絞った2流体モデルの開発と安定性解析を行い、マグマ中における地震波の伝播モデルを構築する予定である。マグマに対する2流体モデルの雛型は既に自身で開発済みであり、当該予備成果の一部は日本火山学会および日本流体力学会より講演表彰を受賞する等、一定の評価も受けている。次年度は以上の成果を深化させ、高い新規性と学際性を兼ね備えた研究成果の創出を目指す。
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