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自己免疫性心筋炎におけるEIF4E結合蛋白による翻訳制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ0425
補助金の研究課題番号 22J20356 (2022)
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金 (2023)
補助金 (2022)
応募区分国内
審査区分 小区分53020:循環器内科学関連
研究機関筑波大学

研究代表者

LI SIQI  筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワード心筋炎
研究開始時の研究の概要

心筋炎は心筋を主座とした炎症性疾患であり、若年者の心臓死の原因の40%を占めると報告されている。EIF4EBP3分子は翻訳開始因 子EIF4E(Eukaryotic Translation Initiation Factor 4E)の結合蛋白の一つである。EIF4E 結合蛋白は、EIF4EとEIF4Gの結合に際してEIF4Gと競合阻害することによって翻訳開始を阻害するものであり、EIF4EBP3はその中の1つである。EIF4Eやその結合蛋白が心筋炎をはじめとする炎症性疾患に及ぼす影響は不明である。本研究は翻訳調節因子4E-BP3が炎症を正に制御しており、この因子の欠損により炎症が軽減することが明らかとなった。

研究実績の概要

心筋炎は心筋を主座とした炎症性疾患であり、若年者の心臓死の原因の40%を占めると報告されている。ウイルス感染や薬剤等を契機に自己免疫が誘発され、免疫学的機序により心筋炎が増悪すると考えられているが、詳細は未だ明らかになっていない。私たちの研究室では心筋炎の病態解明のために心筋炎患者サンプルを用いて様々な検討を行っている。その中で免疫チェックポイント阻害剤を投与後に心筋炎を発症した患者血清を用いてプロテオーム解析を行なったところ、EIF4EBP3(Eukaryotic Translation Initiation Factor 4E Binding Protein 3)に対するIgG抗体が自己免疫性心筋炎発症時に顕著に増加していたことが明らかとなった。EIF4EBP3分子は翻訳開始因子の一つであるEIF4E(Eukaryotic Translation Initiation Factor 4E)の結合蛋白の一つである。EIF4Eやその結合蛋白が心筋炎をはじめとする炎症性疾患に及ぼす影響は不明である。本研究は翻訳開始因子EIF4Eやその結合蛋白による翻訳制御が自己免疫性心筋炎の発症と進展に果たす役割を明らかにすること。これまでに行なった検討では、4E-BP3遺伝子が炎症を正に制御しており、実験的自己免疫性心筋炎モデルにおいて、この因子の欠損により炎症が軽減することが明らかとなった。また、4E-BP3が欠損した骨髄細胞が移植されたマウスでは心筋炎が抑制されたことから、骨髄由来細胞の4E-BP3が心筋炎の発症と進展に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、免疫細胞移植実験により、樹状細胞やCD4+T細胞における4E-BP3が、自己免疫性心筋炎の悪化に決定的に関与していることが明らかになった。本研究は学会発表で第3回日本腫瘍循環器学会 一般演題優秀賞、第6回日本心筋症研究会 一般演題優秀演題を受賞することができた。2023年第42回国際心臓研究学会ISHR-NASで発表し、優秀ポスター発表ファイナリストに選ばれた。2024年グローバル腫瘍循環学会で発表予定だ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況は当初の計画により、おおむね順調に進展している。令和5年度は翻訳調節因子EIF4EBP3が自己免疫性心筋炎の発症と進展に及ぼす影響についてさらに意欲的に研究を重ねた。これまでに行なった検討では、自己免疫性心筋炎マウスモデルでのEIF4Eやその結合蛋白の発現の経時的変化を明らかになった。実験的自己免疫性心筋炎モデルにおいて、 Eif4ebp3-/-マウスでは自己免疫性心筋炎の心臓の炎症を軽減し、心機能が保たれており、心臓線維化も抑制されていた。Flow cytometryやサイトカインアレイによる心筋炎局所の解析により、4E-BP3欠損マウスではIL-6をはじめとする炎症性サイトカイン発現量が少なく、心臓への樹状細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、好中球の浸潤が軽減していることが明らかになった。RNAシーケンスでは1型や17型のヘルパーT細胞への分化関連遺伝子発現がEIF4EBP3欠損により抑制していることが明らかになった。また、EIF4EBP3が欠損した骨髄細胞が移植されたマウスでは心筋炎が抑制されたことから、骨髄由来細胞のEIF4EBP3が心筋炎の発症と進展に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、免疫細胞移植実験により、樹状細胞やCD4+T細胞におけるEIF4EBP3が、自己免疫性心筋炎の悪化に決定的に関与していることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

本研究は翻訳調節因子EIF4EBP3翻訳開始因子EIF4Eやその結合蛋白による翻訳制御が自己免疫性心筋炎の発症と進展に果たす役割を明らかにすることある。EIF4EBP3分子は翻訳開始因子EIF4EとEIF4Gの結合に際してEIF4Gと競合阻害することによって翻訳開始を阻害するものである。EIF4Eやその結合蛋白の異常は癌の発症と進展に深く関わっていることが近年注目を集めている。癌細胞ではEIF4E結合蛋白の欠損やリン酸化による不活性化によりEIF4Eが活性化し、蛋白合成が異常に亢進して癌の増悪に寄与していることが報告されている。しかし、EIF4Eやその結合蛋白が心筋炎をはじめとする炎症性疾患に及ぼす影響は不明である。今後はEIF4E阻害剤投与が自己免疫性心筋炎に及ぼす影響を検討する。さらに、免疫細胞(主に樹状細胞やCD4陽性T細胞)に刺激を加えて、炎症応答を比較する。樹状細胞やCD4陽性T細胞でEIF4E結合蛋白が翻訳制御しているmRNA群を同定する。令和6年度には研究計画に従い、推進する。研究論文を作成し、学術雑誌に投稿予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] Medical College of Wisconsin(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] Medical College of Wisconsin(米国)

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [国際共同研究] Shenyang Pharmaceutical University(中国)

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] Efficient Generation of Human Pluripotent Stem Cells from Frozen Cord Tissue via Chemical Reprogramming2024

    • 著者名/発表者名
      Coneria Nansubuga, Donna K. Mahnke, Siqi Li, Abigail Multerer, Jake Minx, Bradley Miller, Mengcheng Shen, Andreas Beyer, Lu Han, Joy Lincoln, Chun Liu.
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: -

    • DOI

      10.1101/2024.04.10.588154

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Electrical, structural, and autonomic atrial remodeling underlies atrial fibrillation in inflammatory atrial cardiomyopathy.2023

    • 著者名/発表者名
      Murakata Y, Yamagami F, Murakoshi N, Xu D, Song Z, Li S, Okabe Y, Aonuma K, Yuan Z, Mori H, Aonuma K, Tajiri K, Ieda M.
    • 雑誌名

      Front Cardiovasc Med

      巻: 9 ページ: 1075358-1075358

    • DOI

      10.3389/fcvm.2022.1075358

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Immune Checkpoint Inhibitor-Related Myositis Overlapping With Myocarditis: An Institutional Case Series and a Systematic Review of Literature2022

    • 著者名/発表者名
      Nakagomi Yuki、Tajiri Kazuko、Shimada Saori、Li Siqi、Inoue Keiko、Murakata Yoshiko、Murata Momoko、Sakai Shunsuke、Sato Kimi、Ieda Masaki
    • 雑誌名

      Frontiers in Pharmacology

      巻: 13 ページ: 884776-884776

    • DOI

      10.3389/fphar.2022.884776

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Critical role of 4E-BP3 in α-myosin-specific T-cell-mediated myocarditis in mice.2024

    • 著者名/発表者名
      Siqi Li, Zixun Yuan, Yoshiko Murakata, Zhonghu Song, Dongzhu Xu, Nobuyuki Murakoshi, Kazuko Tajiri
    • 学会等名
      The 2024 Global Cardio-oncology Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Microtubule Organizing Centers in Cardiomyocyte Proliferation and Maturation2024

    • 著者名/発表者名
      Siqi Li, Enrique Avila, Katelyn Albrecht, Anna Berthiaume, Lu Han
    • 学会等名
      Basic Cardiovascular Sciences Scientific Sessions 2024
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 4E-BP3 Deficiency Ameliorates the Development of Autoimmune Myocarditis in Mice.2023

    • 著者名/発表者名
      Siqi Li, Dongzhu Xu, Kazuko Tajiri, Nobuyuki Murakoshi
    • 学会等名
      The 42nd International Society for Heart Research-North American Section (ISHR-NAS)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2024-12-25  

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