研究課題/領域番号 |
22KJ0457
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補助金の研究課題番号 |
21J01322 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分22040:水工学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塩尻 大也 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 特別研究員(PD) (80974097)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 陸面同化 / 土壌水分 / 局所アンサンブル変換カルマンフィルタ / データ同化 / 陸面過程モデル / Perturbed forcing / スパースセンサ位置最適化 / 雨量計 |
研究開始時の研究の概要 |
水文分野において観測は重要な役割を果たす一方、観測可能な範囲は限られるため、例えば地中の水分動態などの観測で広域に渡るものは存在しない。広域の土壌水分動態は河川流量に影響を及ぼ しうるものであり、防災・水資源確保等の観点からそのプロセスの解明は重要である。そこで本研究ではこのような課題に対し、陸面過程モデルとデータ同化を組み合わせ、観測の不足する水文量のより高精度な状態推定を行うことで対応する。そのためにも陸面データ同化手法におけるアンサンブルデータ同化手法の基礎的な研究も進める。
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研究実績の概要 |
本年度は、これまで開発してきたHunt et al. (2007) による局所アンサンブル変換カルマンフィルタ (local ensemble transform Kalman filter; LETKF) に基づく陸面データ同化システムを、Nitta et al. (2020) によるintegrated land simulator (ILS) に結合した。データ同化はあくまで一つの数理手法であるため、モデルによって表現される物理的性質を考慮せずに動作する手法である。そのため、様々な陸モデルに対して結合することが可能であり、本研究においてもポータビリティを意識した開発を行ってきた。昨年度までは、陸面過程モデルSiBUC (Tanaka, 2004) を基礎とした陸面同化システム (SiBUC-LETKF) を開発・運用していたが、開発したシステムのポータビリティを確認する目的で、ILSへと移植を行った (ILS-LETKF)。ILSはさまざまな陸モデルを結合するための結合プログラム(カプラ)であり、現在ILSに組み込まれている陸面過程モデル MATSIRO と河川モデル CaMa-Flood 以外のモデルが将来的に結合されることも期待される。 ILS-LETKFの動作検証は、観測システムシミュレーション実験 (observing system simulation experiment; OSSE) を通して完了している。本実験では土壌水分、もしくは地温の観測値を仮想的に作成し、その同化を行なった。仮想的な観測を同化するステップは完了し、現在はより難易度が高いと考えられる、実際の観測データを同化する実験を行っている。またその実験を通した同化手法の改良も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ILS-LETKFの開発が完了し、陸面同化システムが適切に動作することを、観測システムシミュレーション実験 (observing system simulation experiment; OSSE) を通して確認が完了した。OSSEでは、同化するための観測値と、同化による精度向上を評価するための真値を、ILSによるシミュレーションを通して人工的に作成する実験手法である。そして観測値・真値を作成するために使用したものとは異なる気象外力を入力して ILS-LETKF による土壌水分量・地温の同化実験を行い、適切に同化できることを確認した。 システムの開発がすでに完了しており、さらにOSSEによる仮想的な観測値の同化実験だけでなく、実データの同化実験とそれを通したシステムの改良を進められている現状であるため、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
OSSEによる仮想的な観測値の同化実験は完了し、次のステップとして実際の観測データを同化する実験を行なっている。本研究では衛星による観測データの同化を想定しているため、まずはAMSR2による表層土壌水分量の同化を行なっている。この同化による精度向上をより詳細に把握可能とするため、本実験は FLUXNET2015 のフラックス観測データを使用した、1地点のみを対象として行っている。フラックス観測では、大気からの気象外力と、それに伴う熱収支・水収支を詳細に把握可能とするように、多岐にわたる観測が実施されている。したがって衛星観測の同化の効果を詳細に把握するために有効だと考える。本実験では、ILSの気象強制力としてERA5による再解析データを使用するため、気象強制力と同化する土壌水分の観測値はともに、対象フラックスサイトの場をピンポイントで反映するデータではないものの、フラックスサイトがある程度の空間代表性を持つのであれば、同化により精度向上が期待できる。そして本実験を通して、データ同化手法の改良も適宜行なってゆく。
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